進化するホウユウの「清書*あてなサービス」
今回は、印刷と印刷機に関するちょっとマニアックな記事になります。
取り上げるのは、つーる・ど・堺の親会社である町の印刷屋さん「ホウユウ株式会社」の提供する印刷サービス「清書*あてなサービス」と、そのために導入された新しい印刷機について。
語り手は、ホウユウの田中幸恵社長です。
■口コミで広がった「清書*あてなサービス」
ホウユウ株式会社の印刷室にアイランドキッチンを思わせる大きさの印刷機が鎮座しています。その名はVersant3100。メーカーは富士ゼロックス(この4月1日に富士フイルムビジネスイノベーションへと社名変更)。一口に印刷機といっても色々ありますが、Versant3100は大部数を刷る旧来の印刷機……オフセット印刷機ではありません。少部数に対応できるオンデマンド印刷機で、業務用のプリンターの親玉のような存在です。
――このVersant3100を導入した理由は?
田中「もともと印刷業界は近年縮小傾向にあり、昨年のコロナ禍がさらに追い打ちをかけています。そんな中、小ロットの宛名印刷がうちの稼ぎ頭になっているんです」
――小ロットの宛名印刷というと、どういった需要があるのですか?
田中「良くあるのが、異動や代表取締役の交代など、改まった挨拶状を出す時ですね。そういう時は、縦組みで直接封筒に印刷することになり、文字の組み方や印刷の美しさも問われることになります。もちろん歪んで宛名が印刷されるなんてもっての他です」
――一般の会社のプリンターだと、タックシールに印字するのが一般的ですよね。封筒に縦組みで綺麗に印刷しようとすると、ソフトや印刷に関する知識と技術が必要になってくるから、誰もが出来るわけではない。
田中「かといって印刷所に頼もうとしても、小ロットで引き受けてくれる所はなかなか無いんです。挨拶状の仕事というのは、急ぎの仕事が多くて、かつ質も問われますから、小ロットとなると印刷所としては引き受けたくない。うちは一昨年にオンデマンド印刷機を導入したこともあって、小ロットに強いからお引き受けできる。最初は件数もそれほどなかったのですが、ホウユウならやってくれるという口コミが広がっていったんですね」
――なるほど。挨拶状の印刷だってできますよね。
田中「もちろんです。うちは、データ入力から全部お引き受けできますよ」
■Versant3100の実力
――それで新機種の導入となったわけですか?
田中「ええ。実は最新機種というわけではないんです。メーカーの富士ゼロックスさんが、社名変更になることもあって、少しだけ前のものになるのですが、どうですかと来られたのです。それが、これまでの悩みの種を解決してくれることになったのです」
――新機種になって、解決したことというのは?
田中「宛名印刷で一番需要があるのは、このダイヤ封筒です。ところが、このダイヤ封筒は紙を折ってのり付けして作るので、一番重なる所だと5枚の紙が重なる分厚さになってしまいます。これだけ分厚いと、前の機種では紙が通らなかったんです。仕方なしに一々封を開いて印刷していました」
――ダイヤ封筒って、封を閉じた形で納品されますよね?
田中「ええ、だから印刷前に全部手作業で封を開く作業が必要でした。さらに、カセットに入れることもできないから、全部手差し印刷でやらないといけないから、人がつきっきりになります」
――それは時間も人手もかかってしまいますね。それが新機種では解決した?
田中「そうなんです。Versant3100は厚い紙にも対応していて、ダイヤ封筒がそのまま通る上に、大容量カセットで一度に300はいれることができる。お引き受けする宛名印刷は、大体300~1000ぐらいなので非常に楽になりました。しかも、印刷速度も段違いに速いし、印刷も綺麗です」
――良いことずくめじゃないですか!
田中「そうなんですが、印刷が綺麗すぎて困ることもありました。細い線がそのまま綺麗にでちゃうんですよ(笑)。前の機種だと少し太くなってしまうので、データに補正をかけて対応していました。ところが、Versant3100だと細いまま綺麗に出てしまうので、リピーターのお客様から『前と違う』と指摘されたこともあったんです。お預かりしているデータをまた修正しないといけなくなったりもしました」
――性能が良すぎるというのも、贅沢な悩みですね(笑)
■日本でもホウユウだけ!?
田中「今、ダイレクトメールの世界では、データに対応して一部ずつ異なる内容を印刷するバリアブル印刷が人気です。たとえば行政関係の通知は、市民一人一人に対応した印刷物が必要になってきますが、それだけの仕事をこなせる所は無くて、国にお願いしてしまうそうですが、これまでもうちはお引き受けしていました。日本でも出来る所は、なかなか無いと思いますよ。Verstant3100ではバリアブル印刷の速度もあがりました」
――どのぐらいあがったんですか?
田中「速度があがったのは、主にデータ処理です。バリアブル印刷は、数千件ともなるとデータの処理にものすごく時間がかかってしまう。時にはデータ処理だけで一晩中かかることもありました。その時間が半分ぐらいで済むようになりましたね」
――得意のバリアブル印刷もグレードアップしたってことですよね。
田中「別な所で速度があがったことといえば、印刷を通した後の紙が反らなくなって、元に戻るまで待つ時間を短縮できるようになりました。以前は、場合によっては3日間も紙を寝かしておかないといけなかったのですが、その時間を短縮できるようになったのも大きいですね」
――それは大きいですね。意外な所で作業工程が短縮できたんですね。
田中「もう1つ、厚い紙から薄い紙まで素材を選ばずに1部から美しく印刷できるため、たとえばデザイナーさんによるこだわりの印刷にも対応できるようになりました。そういう印刷物を作りたいという希望があっても、引き受けてくれる印刷所はJAMレトロ印刷さんぐらいで、どこに頼んで良いのかわからないという悩みを持つお客様も少なくなかったんです」
――味のある印刷物を作りたい、手に入れたいという需要があるんですね。たとえば、どんな印刷物がありますか?
田中「最近はZINE(ジン:個人による趣味で作る雑誌)なんかがありますよね。紙や印刷にも凝ったZINEを作りたいというデザイナーさんから相談を受けたりしています。Versant3100の導入で、さらに幅広い要望に応えることが出来るようになりました」
――以前から「印刷屋さんの出来ることは幅広いから、こんなことは出来ないかと相談してほしい」とおっしゃっていましたけれど、ますます対応能力があがったみたいですね。宛名印刷だけでなく、バリアブル印刷でお客様にDMを届けたいという企業の方や、こだわりの印刷をしたいという方は、ぜひ一度ホウユウにお声がけくださいね!
ホウユウ株式会社
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