ファイアー&アイス 堺ブレイザーズ2019-20(3) 2019-20シーズン記者会見
V.LEAGUE2019-20シーズン直前に堺ブレイザーズの記者会見が開催されました。ベテラン選手から捲土重来を狙う選手にインタビューした中篇に続き、後篇では日本を担うであろう注目選手や、チームを締める副将へのインタビューをお届けします。
●出耒田敬選手
出耒田選手は、日本代表にも選出される長身大型ミドルブロッカー。代表チームなどではオポジットを務めたこともあり、迫力満点のスパイクも持ち味の攻撃的な選手。一方で、記者会見などのコメントは、明晰でどこかエスプリを感じさせる知性派です。
――昨シーズンからは実力のある若い選手がチームに加わって、チームが出来上がってきたと感じているのではないでしょうか?
出耒田「ゴーダン監督も言っていましたが、うちのチームにはもともといい選手が揃っていて、必ず上位に食い込めるだけの力をもっていると思います。ただ、ここ最近勝ててないという現実もありまして、良い軌道に乗るには時間がかかりましたけれど、結局昨シーズンも3レグ、樋口が入ってきて、それがいい起爆剤になって自分たちのもてる力というものを出せました。なので、かなりいい傾向にあると思います。今、3選手(髙野直哉、山本智大、関田誠大)がワールドカップバレーボールで戦ったりしていますが、チームとしてうまく融合できれば、今シーズンは必ずいい結果を残せるとは思っています」
――昨シーズンは上位チームと戦って、何か差は感じましたか、それとも感じませんでしたか?
出耒田「いや、そんなに大きな差というのは感じることはないですね。ただ、昨シーズンで言えばサントリーサンバーズさんには一回も勝てなかったりしました。なので、(勝てない相手には)自然と次やっても負けるんじゃないかという気持ちや相性的なものがあったのかもしれません。しかし、実力的には大きな差があるとは思っていません」
――では、ゴーダン監督のもとで戦術が浸透すれば強いチームになると?
出耒田「今やっていることも、まだそんなに練習試合も重ねていたりはしないですけれど、自分たちの練習試合では自分たちのいいプレーも出せていますし、そういった練習で出来ていることが、きっちりと試合で出せれば、すごくいいバレーボールが出来ると思います。まぁ、なんでしょうね。今、自分たちも、やっていて楽しいといったらおかしいかもしれませんが、はまっているというか。だから見ていても楽しい、熱くなれる試合を展開できると思います」
――今年は期待できるということですね。
出耒田「記者会見でも、ゴーダン監督が何度も言ってましたが、ザ・男子バレーというようなパワーバレーボールを……もちろん、まだ求めている所までは達していないのですが、それは試合を通して成長していって、すげぇと言われるようなバレーボールを展開できるよう頑張りたいと思いますね」
――出耒田選手、ご自身のことで言えば来年には東京オリンピックもありますよね。もちろん、自分もという気持ちは?
出耒田「はい、もちろん。このリーグで結果を出して、残すとことでしかチャンスはないので。でも、まずはチームでいい結果を残すことが出来れば、おのずとそっちの方にもつながってくるので、まずはチームで結果を残すために自分ができることを中心に考えてやっていきたいなと思っています」
――楽しみな感じですね。
出耒田「そうですね。自分たちも結構楽しみですね」
●樋口裕希選手
内定選手だった昨シーズン、第3レグになってチームに帯同し、コート上に姿を現すやいなや大活躍をしたのがアウトサイドヒッターの樋口選手です。サーブにスパイクにブロックにと八面六臂、獅子奮迅のプレーで、どん底だったチーム状況は目に見えて改善し、ファイナル6進出への原動力となりました。昨シーズンの活躍を本人はどう感じていたのでしょうか、まずはそんなところから話を伺いました。
――昨シーズンの活躍は、まさに救世主といえるようなものでしたが、樋口選手自身はどのように感じられていたのでしょうか。
樋口「3レグで帯同させていただいたのですが、それまでの1レグ2レグは(ネット放送の)DAZNで観ていて、もし自分がいって出るとしたら、あそこのポジションだろうなというのは、自分でイメージしていて、何が足りないのかな、出る時に何をしたらいいのかなというのもイメージしていました。その部分では、自分のイメージ通りじゃないですけれど、想定内で自分の考えていたことが出来たので結果につながったのかなと思います。そこはイメージしておいて良かったですね」
――それはどこで、と思っていたのですか?
樋口「やっぱりパスの部分で、髙野さんとトモさん(山本智大選手)にかなり負担がかかっていた部分があって、やっぱりそこを狙われてポイントを取られていた部分がありました。だから、まずはサーブレシーブの所でポイントを取られないことを第一の目標として、これが出来たら試合には出られるだろうなと思っていたんです。スパイクの部分では、点数をとるポジションなので、点数を取ることが出来ていたのは良かったと思うのですが、それと同じぐらいミスやブロックされることが多かったので、そこのところでミスやブロックさせないように、この二つを意識してやっていました」
――想定していた通りにうまくはまったんですね。でも、今シーズンは相手チームも樋口選手を研究してきますよね。そのあたり新たなイメージとかはあるのですか?
樋口「3レグで出来たプレイが出来るとは絶対に思っていないんです。データも研究してくるでしょうし。それ以上に自分が成長しないといけない。今年は日本代表のメンバーにいれてもらえませんでしたし、ワールドカップのメンバーにも入れませんでしたし、足りない部分をすごく実感しています。そういう部分ですべてのプレーでレベルアップしないといけないと強く思っています。サーブやブロックだけでなく、スパイクやレセプション、すべてのプレーで成長できるように、強く意識してやっていきたい。そこをリーグがはじまってどううまく発揮していけるか。自分の中で成長した部分をしっかり出して、またリーグの中でも成長できればと思います」
――今、日本代表の話がでましたが、丁度今(記者会見当時)ワールドカップバレーが開催中で、テレビでは連日のように堺ブレイザーズから選出された3選手が活躍している姿が映し出されています。それを見て樋口選手はどんな思いでいるのですか?
樋口「まず選ばれなかったことにはすごい悔しい思いが今でもずっとありますし、なんで選ばれなかったと自分に問いかける毎日です。練習でも。テレビで3選手が活躍しているのを見ていますと、自分もあの舞台に立ちたいなという気持ちがすごくあります」
●佐川翔選手
佐川選手は、堺出身、ジュニアブレイザーズ育ちと注目を集めた運動能力の高いセッターです。堺ブレイザーズのセッターというポジションは、昨シーズンの関田誠大選手の加入により激戦区となりました。シーズン中盤になると、関田選手に一歩リードされる状況となりましたが、今シーズンはチームの副将ともなり、かける思いは並々ならぬもののはずです。
――まずは昨シーズンを振り返ってみるとどうでしたか?
佐川「まず関田が来てセッターが3人になって、いい意味でかなり刺激になりました。3選手となって出場機会が減ったことは事実ですけれど、関田から学ぶことも多くて。山口と佐川の2枚がベンチにいるところに関田がきて、1人は外に出なければいけないという危機感が競争をするきっかけになりました。シーズンの振り返りとしては、自分自身はコンディションとかは別に落として無くて、プレーとしてもやれていた感覚はあったので、あとは勝利につなげられるようにしないといけないというのはありました」
――佐川選手も中堅からベテランになりつつある中、昨シーズンは将来核になるような新加入選手も入ってきました。佐川選手からみてチームの状況はどうでしょうか?
佐川「昨シーズンは3レグから樋口が出てきた所から勝つようになったので、彼自身としてはこのシーズンがある意味勝負で、もう一度力を発揮して、あのポジションは俺の場所だという気概を見せてほしいなと思います。そして、髙野。今シーズンは主将にもなって、日本代表にも選ばれて、堺ブレイザーズに帰ってきてくれる。髙野はもう若手ではなく、チームの中心になって堺ブレイザーズを引っ張ってくれると思うので、そういう部分で頑張ってくれると思います」
――髙野選手って、見ていると、あまり感情を表に出さないタイプのように見えますね。
佐川「その評価で間違っていないと思います(笑)」
――やっぱり、そうなんですか(笑)。
佐川「でも、キャプテンの姿というのは、人それぞれだと思いますし、松本選手がキャプテンをやってこうやってするというのも違うと思います。髙野はプレーする姿とか、プロ意識とかそういう所で引っ張っていってくれると思います。コミュニケーションとかそういう部分は、僕とかが補っていきます」
――では、寡黙だけどしっかりプレーでひっぱってくれる主将というのが、新しい堺ブレイザーズの姿になってきそうということですね。今は、ワールドカップバレーで、髙野選手も含め堺ブレイザーズの3選手が連日テレビに映り、ファンとしては嬉しい限りですが、佐川選手もやはりそこに自分も入りたいという気持ちはありますか?
佐川「はい。その気持ちが無くなったらプレイヤーとして終わりだと思うので、チャンスがあればオールドルーキーとして出たいと思っています。でも、とにもかくにも、このリーグで結果を出せば評価される選手になると思います」
――昨シーズンは3レグになってあがってきても、上位のたとえばパナソニックパンサーズやサントリーサンバーズとの試合ではなかなか勝てませんでしたが、チームとして差があるように感じましたか、それともいやいやそんなことはない?
佐川「いや、そんなことはないです。力を発揮できるか、できないかという所なので、精神論でいうのは、あまり好きじゃないのですが、ムセルスキーとかクビアクとか、そういう(ワールドクラスの外国籍)選手に対して負けないようなメンタルが僕らに必要だと思います。日本人選手でいえば、うちの選手は絶対に見劣りしないので、そういう所に自信をもって、相手がどんな大砲を持っていても、日本人選手が束になれば絶対に勝てるんだぞという闘志を見せたいなと思いますね」
――他のチームでは外国籍選手が2人いる中、堺ブレイザーズは日本人選手のクオリティは負けていないと。
佐川「意地でも、見せたいですね」
――監督が加わって、まだ1ヶ月とのことですが、チームの変化はどうでしょうか? まだこれから? それとも何かありますか?
佐川「あります。技術というのは時間をかければ上達していくのですけれど、それ以外にもゴーダン監督から強く影響を受けたと思うのは自分たちが堺ブレイザーズで、所属している選手で、堺ブレイザーズという看板を背負って戦っているんだぞという意識です。先ほどもカルチャーという言葉を言っていましたが、そういう文化を新しく創っていこうという意識が選手1人1人に根付いてきて、それが行動に表れてきたり、プレーに表れてきたり、少しずつ出てきています。あのプレーが良かったな、あの日はあかんかったなじゃなくて、堺ブレイザーズのバレーボールとはこういうものだというのを毎回見せられるようにしたいなと思います」
――お話を聞いていると、熱い堺ブレイザーズが蘇ってきた、監督の言葉も強烈で、浸透してきたのですね。
佐川「後は俺らがどれだけ応えられるかですね」
佐川副将の力強い言葉にますます期待が高まります。今シーズンは、近年の堺ブレイザーズのチーム編成の中でも、ベテラン、中堅、新人のバランスもよく充実した布陣ではないでしょうか。ゴーダン監督の方針も堺ブレイザーズらしさが強化されそうです。もちろん蓋をあけてみないとわかりませんが、期待がもてるシーズンになりそうです。