大鳥大社の花摘祭(2)
大鳥大社は堺市西区鳳にある、長い歴史を誇る名神大社で、和泉國一之宮という格式のある神社です。4月には平安時代から続く疫病避けの神事『花摘祭』が、毎年開催されています。2019年の今年も晴天に恵まれた中、鳳南町開館から約1.5kmの道のりを御神輿や花摘女、稚児たちの行列が練り歩き、摘んだ花を神様に奉納する神事を終えました。例年なら、その後、御神輿や花摘女は各地域を回って花摘祭は終わり……だったのですが、今年はちょっと様子が違います。(前篇)
境内には、多くの屋台が出ており、パフォーマンスショーのスペースもあります。境内の様子も覗いてみましょう。
■ワークショップと屋台
大鳥大社の西側の大鳥居から入ると、千種の森が見下ろす参道の両脇にはさっそく出店が並んでいました。出店といっても、テントは簡易なもので中にはテントを張ってないスペースもあります。どちらかというとフリーマーケット的な雰囲気で、ハンドメイドの作品を売ったりワークショップをしているようです。
参道をL字に折れ曲がると、こちらは本格的な屋台やキッチンカーが並んでいます。金魚すくいや、たこ焼き、ホルモン焼きといった縁日定番の屋台に加えて、本格インド料理やトルコケバブなど多国籍な屋台も。
最近流行のキッチンカーの方も、本格的なラーメンやうどん、デザートのラインナップ。ちょっとお話を聞いてみると、昔ながらのテキ屋さんの屋台が減少傾向にあり、キッチンカーに声がかかることも多くなっているのだとか。
懐かしい屋台にキッチンカー、エスニック料理もそろう。それが古代から続く神社の境内に集うのが、現代のお祭りの形のようです。
■エンターテイメント
境内を歩いていると、手に手に花をもっている人の姿が目につきます。どこかで販売しているのでしょうか。花摘祭というお祭りらしく、華やいだ雰囲気が生まれています。人の流れを追っていくと、賑やかな声が聞こえてきました。絵馬殿のあたりに人だかりができています。
近づいてみると、緋毛氈が敷いてあり、艶やかな衣装をまとった女性が、お猿さんの手綱を握っています。猿回しのパフォーマンスがまさに行われている所でした。
演じるのは「神戸モンキーズ劇場」のコンビ「やまとなでしこ」の2人(1人1猿?)です。お猿さんのハルちゃんは、ジャンプが得意ということで、可愛らしいジャンプ芸を次々と決めていきます。パフォーマーの話芸も楽しく、観客は楽しい時間を過ごしました。
続いては、堺観光ボランティア協会による華美芝居。音響(ラジカセ)のSEも利用した派手な紙芝居で、堺にまつわるオリジナル作品を上演されます。今回は西区の大鳥大社が会場ということもあって、祭神のヤマトタケルに、西区ゆかりの行基の華美芝居が上演されました。
絵馬殿前のスペースでは、猿回しと華美芝居が交互に随時行われていたようです。
拝殿前の広いスペースに行くと、ライブアートの最中でした。午前中はまだ真っ白だった畳何畳分ものキャンバスに、鮮やかな色彩で菖蒲が描かれています。描くのは、NPO法人アジア文化芸術連盟の李鴻儒先生。お名前に鴻(おおとり)の一字が入っているのが、偶然とはいえ、大鳥大社にぴったりの芸術家ですね。
この完成した作品の前に、今度は和太鼓が勢揃いしました。和太鼓チーム『堺御陵太鼓』の登場です。この日は女性7人の編成で、力強い演奏でまず二曲を披露。この二曲目は初心者向けの一曲ということで、見守っていた観客に「一緒に太鼓を叩いてみましょう」と呼びかけ、臨時の和太鼓教室が始まりました。子どもたちを中心に集まった和太鼓初心者たちは、楽しく太鼓初体験が出来たようです。
最後にもう一曲、今度は複雑な構成の曲で腕前を披露して、終演となりました。
■花摘市
イベント担当者に話を伺うと、実は去年までは神事としての花摘祭しか行っていなかったのだとか。それが、今年はじめてこうした出店やショーを取り入れたイベント『花摘市』を開催したのだといいます。昨年は、7月31日の大鳥大社から宿院頓宮への御渡の前日に宵宮としてイベントを開催していたそうですが、その流れがあって、今年は『花摘祭』に合わせる形で『花摘市』が開催されたのでした。
いずれも、ただ一日だけのイベントではあるけれど、地域の人が利用する解放された空間、公共空間として宗教施設・敷地が再定義されたという意味は決して小さくないように思えます。
伝統を保ちながらも、多様化する現代の状況を取り入れ、神社のお祭りも新しい形へと変化していくのでしょう。
大鳥大社
住所:堺市西区鳳北町1丁
TEL:072-262-0040
web:http://www.ootoritaisha.jp/