砲弾のごときスパイクやボールに食らいつくプレーに魅せられるバレーボール。
堺市に拠点を置く強豪チーム『堺ブレイザーズ』は、2012/13年シーズンに2年ぶりの優勝を成し遂げました。
一方、『堺ブレイザーズ』が5人の選手を送り込んだ全日本チームは、11月に行われた世界4大バレー大会のひとつ、「グラチャンバレー(バレーボール・ワールドグランドチャンピオンズカップ)」で全敗という結果。
12月に2013-2014年シーズンの開幕を控えた『堺ブレイザーズ』がまとうのは王者の余裕なのか、期待なのか、それとも挑戦心や不安なのでしょうか。
■Vプレミアリーグ初の連覇を目指す
。『堺ブレイザーズ』のモチベーションは、「うちだけが連覇にチャレンジできる」ことです。
2年前の優勝は、東日本大震災の影響を受けてリーグは終了し、その時点での成績で決定したもの。
「コートの上で優勝の喜びを味わいたい」
という気持ちが結実した今年。その次なる目標が連覇です。
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▲『堺ブレイザーズ』となってから三度目の優勝。 |
▲堺区のシーサイド。築港八幡町にある新日鐵住金堺体育館。 |
「堺ブレイザーズ」には前身である新日本製鐵のバレー部からの長い歴史があります。不況下で運動部の整理が進む中、2000年12月に完全子会社化し、日本のバレーチームの中で唯一のプロクラブチームとなりました。
「個性の強い選手のそろったチームです。チームでも個人でも『尊重』という言葉がよく出てきて、個性を大切にするチームなんです」
強豪故の悩みもあります。全日本に5人の選手、それに大学年代のユニバーシアード代表に2人の選手を送り込み、残された選手の数が9人や7人の時もありました。
コート上に6人の選手が立つバレーですから紅白戦もできません。
ですが、それも織り込み済みといった様子。
「残った選手のベースアップをはかり、代表組は国際経験を積んできてくれるはずです。4月に連覇するよう準備をすすめているんです」
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▲今シーズンのチーム。『堺ブレイザーズ』の歴史に栄光の1ページを刻めるか。 |
こうしたプロの練習も、実は一般の方もフリーで見学できます。
「堺ブレイザーズは比較的ファンに近いチームだと思います」
毎年10月に行われる堺まつりのパレードには登場しますし、ファンフェスティバルといったイベントも積極的です。
「選手自らがコントや漫才、歌を歌ったりして盛り上げるんです」
リーグ開幕を前にした出陣式にも一般のファンが自由に参加できます。
「堺の方から愛されたい。地域色を出していきたいというのは永遠のテーマですね」
そのため、スポーツチームとして地域貢献にも積極的に取り組んでいます。
■キッズからトップまで
「バレーボールを通じて堺の子供たちの健全な育成に寄与する」
堺市の約150名の小学生が、ボール遊びを中心としたバレーボールスクールに参加。うち30名ほどの子供たちが試合も行い、より本格的にバレーに取り組む「ブレイザーズキッズ」に所属しています。
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▲『堺ジュニアブレイザーズ』のトロフィーもトップチームとともに飾られていました。 |
また、中学生年代の「堺ジュニアブレイザーズ」は貴重な存在です。
「堺の公立校43校のうち、男子バレーボール部は4校しかありません」
女子のバレーボール部が30校以上あるのと比較すると大きな問題です。中学生にあがるとバレーボールをプレイできない子供たちのために、2001年4月に「堺ジュニアブレイザーズ」がスタートしたのです。
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▲広報の西野祐司さんは『堺ジュニアブレイザーズ』の監督でもあります。「選手たちの才能、蒔いた種が突然花開く時に喜びを感じます」 |
高校生の年代になると、バレーボールに力を入れている高校を選択して進学することもできるのですが、クラブから離れてしまいます。
「ジュニアで育てた選手が、トップのチームへと戻ってきてほしい」
そんな願いが今年ついにかないました。奇しくもトップの酒井監督がジュニアのコーチとして教えていた選手が、トップチームに新加入したのです。
セッターの佐川翔選手。地元堺出身のホープです。
「企業の運動部が次々と廃部になって門戸が狭くなる中で入ってきた、貴重な存在です」
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▲佐川翔選手はジュニアの頃には北島選手に指導してもらったこともあるそうです。 |
そんな佐川選手も加わった新生ブレイザーズが、お披露目される日がやってきました。11月26日の出陣式です。
■堺のファンに後押しされる出陣式
出陣式に先立って記者会見が開かれました。
全敗したグラチャンバレー後の、まずは戦いを終えてチームに帰ってきた代表選手のみの会見です。
やはり厳しい結果を受けて選手の表情は硬い印象です。特にこれまで日本を背負ってきた1人、石島選手は「大会で得たものは?」との記者からの質問に、
「まったく収穫は無かった。根本から変えないといけない」
と何か期する所が感じられる返答でした。
日本男子バレーの復活なるか。注目したい所です。
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▲全日本代表についで『堺ブレイザーズ』としての記者会見。 |
▲記者会見が終わると囲み取材に。 |
出陣式は立食パーティー形式で、竹山修身堺市長や市議会議員、スポンサー、バレーボール関係者などの来賓から、キッズバレーの子供たちやファンの皆さんといった幅広い人々が集まりました。
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▲選手入場! |
黄色いジャージに身を包んだ選手たちが拍手で迎えられ登場。頭が一つも二つも大きい選手たちがずらりと並ぶと壮観です。
酒井監督の挨拶では、まず昨シーズンに触れ、
「色んな変化があって優勝できた。しかし、ライバルたちも外国人監督を迎えたり、五輪の金メダリストを加入させたり変化をもって対抗してきている。私たちはチーム力、チームワークを高めて臨んでいきたい」
と、新シーズンに向けての決意を披露しました。
来賓の挨拶の後は選手たちが各テーブルにわかれての歓談がはじまります。選手がファンのグラスにビールをついだりして、まさに身近に選手とふれあえるイベントです。
写真撮影に応じたり、サイン攻めにあったりと選手も大忙しです。
記者会見の時にはきつく見えた選手の表情もすっかりくつろぎ、笑顔がこぼれてきたようです。
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▲ウィングスパイカーの伊藤選手はおどけた表情を。 |
▲しれっと英語で自己紹介をはじめた佐川選手。 |
さて、堺出身で注目の新加入選手・佐川翔選手の意気込みやいかに?
「自分が子供の頃に見ていたチームに、自分がいるのがいまでも不思議な感じがします」
出陣式の最後に行われた背番号順での選手からの一言では、佐川選手はブレイザーズの選手らしく個性の強い所をみせてくれました。
丁度、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のペピチ・ミラン選手が通訳を介して挨拶した次の番だったということで、マイクを受け取った佐川選手は、
「マイ ネーム イズ ショウ・サガワ」
と英語で挨拶し、涼しい表情でマイクを通訳の方に渡します。
「私の名前は佐川翔です」
笑いを取った後は、先輩セッターがいる前で堂々と「試合に出てチームに貢献する」と、頼もしい発言。鼻っ柱の強い所も伺わせました。
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▲応援団長のなおきさん。『堺ブレイザーズ』の応援はバリエーションも多く楽しいものです。 |
▲ハイタッチで選手に気持ちを伝えます。 |
応援団長のなおきさんのリードでエールを送り、ハイタッチでお見送り。
華やかな出陣式も終わり、いよいよリーグ開幕です。
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▲ファンからのメッセージ。 |
『つーる・ど・堺』では今シーズンの「堺ブレイザーズ」の活躍に注目し、取材を重ねていく予定です。ご期待ください。
堺市堺区築港八幡町1番地
(新日鐵住金堺体育館内)
『つーる・ど・堺』読者の皆さんにプレゼントのお知らせです。読者の中から抽選で、代表選手五名(松本選手・石島選手・千々木選手・横田選手・今村選手)と堺出身の佐川選手のサイン色紙及び堺ブレイザーズステッカーを差し上げます。