尾崎製作所(鉄骨製作・組み立て)
【七道特集・ものづくり編】
ガガガ・・・カーン・・・シャー・・・どこからともなく鉄を加工する音が聞こえてきます。
月州中学校の西側。中・小規模の工場が並ぶその中に尾崎製作所があります。
■尾崎製作所
業務内容の中に“プラネタリュウム鉄骨製作”と。
ええっ?!プラネタリウムを作っているの?ここで?!
さて、尾崎製作所とプラネタリウムとの関係はいかに。
■尾崎正弘社長
尾崎製作所2代目社長の尾崎正弘さんは昭和34年生まれ。てっきり堺っ子と思いきや、意外にも、大阪は堀江生まれの堀江育ち。会社へはご自宅から通っていらっしゃいます。「先代が堀江で金物屋を興しましたが、大阪市内では工場ができへんからといって堺に移ってきました。45年くらいになると思います。」
社長は大学の工学部を卒業された後、他の会社でサラリーマンを経験します。採石プラントの仕事で、黒部に3年間赴任。現場はトロッコ列車しか通ってないような山奥。「設計・管理・運転まで全部やっていました。」しかも社員なのに「飯場みたいな所に6人押し込められて。」それはそれは過酷な仕事だったそうです。
その後港湾の仕事でインド(ムンバイ)へ行き、1年後に帰国。その後尾崎製作所に入社、現在に至ります。
尾崎製作所を支える仕事の3本柱は、『各種鉄骨製作』、『濁水処理プラント製作』、『プラネタリュウム鉄骨製作』。それらを現場で組み立てる仕事もしています。(写真は、ダム用濁水処理プラントの水槽を製作しているところ)
2階にある事務所の窓から工場の様子を見渡すことができます。取材中も製作現場ではバチバチと火花が散り、鉄を加工する大きな音が響きます。その音に負けじと次第に質問する声も大きくなり・・・。
「うちでやったのは100くらいちゃうかなぁ。」尾崎製作所が手がけたプラネタリウムの数です。
関西圏であれば、地元のソフィア・堺をはじめとして、大阪市立科学館、ドリーム21(東大阪市)、文化パルク城陽、伊丹市立こども文化科学館、姫路科学館・・・。北は釧路市こども遊学館、南は鹿児島市立博物館まで。海外は上海にも。
で、今一番”旬”の物件はというと、「国内最大級となる名古屋市科学館新館のプラネタリウム」(2011年3月19日オープン)。
■プラネタリウム骨組の設置作業(1)
■プラネタリウム骨組の設置作業(2)
名古屋市科学館のプラネタリウムの場合、設置されるプラネタリウムは直径35メートル。尾崎製作所は、完全球体の上部半円に骨組をセッティングし、そこにパネルを取り付けるという仕事を請負いました。
同時に同社では7分の1スケール(直径5メートル)というミニサイズのプラネタリウムも製作しています。これは過去最小径のお仕事だったそう。見たい!ここにありますか?「いやいや、試写用として現地の別室に設置してあります。」一般の人は見ることのできない幻のミニプラネなんですね。
日本にあるプラネタリウムメーカーは現在3社(五藤光学、コニカミノルタプラネタリウム、MEGASTAR)。尾崎製作所はコニカミノルタプラネタリウム(本社:大阪市西区)と取引をしています。同社から尾崎製作所への発注はほぼ100%といいますから、信頼度は抜群。
そもそもコニカミノルタプラネタリウムと尾崎製作所の接点はどこにあったのでしょうか。
「当時、ミノルタカメラの技術センター※が堺(堺区大仙西町)にありまして。」
(※1960年代からプラネタリウムの研究をしていたらしい)
ある時、先代のところに関係者から、プラネタリウムの仕事をやってみないかという話が。先代がベースから築き上げた仕事を2代目社長が継承。プラネタリウムの骨組工事は30年の歴史をもつまでとなりました。
仕事の打ち合わせには社長自ら出席します。新しく挑戦することも多々。「先方の担当者とああでもないこうでもないと話し合いながら進めています。」移動式の小さいプラネタリウムも作りました。作ったら終わりではありません。設置したけどうまくいかないから来てくれと言われれば飛んで行く・・・。
真摯にお仕事をされていますとそれなりにご苦労もあると思いますが?「苦労と思ったことはないねえ。でもドームの中はむっちゃくちゃ暑くて。名古屋の現場のときは、中に空気が入るようにファンが付いている服を職人に用意しました。そんなことを竹中工務店に評価してもらい、表彰もされました。」
夢は?「会社を大きくしたいとは思わへんけど、ちゃんと仕事をした分だけのお金が入ってくるようにはしたいね。お金を払ってくださる方に喜んでもらえるもんを作るということは心に決めています。指名で仕事がくるような会社になれたら一番ええんとちゃうかな。」
ものづくりの信念は?「請負ったからには、ケツを割らずに最後まで仕事をやり遂げること。たとえ予算が苦しくても。いや、あとで、どないかしてやとは言いますけど(笑)。追加変更ばかりでも、だいたいはしゃあないなあと言いながらやってます(笑)。」
■名古屋市科学館(北側より撮影)
そうそう、プラネタリウムが完成した後、上映を観に行くことはあるのでしょうか?「子どもの頃は四ツ橋にあった大阪市立電気科学館によく行ってましたけど、今は仕事以外では行けませんね。」お忙しいですからね。「でも名古屋市科学館はええらしいから行ってみたい。一般の試写会に、俺も入れてくれ~!って頼んだんやけどアカン!て(笑)。試運転はなんぼでも見れるんですけどね(笑)」
なんでも名古屋のプラネはとっても贅沢な作りになっていて、座席はゆったり、左右に30度回転するとか。社長は座っていた事務椅子をくるっくる回して説明してくれました。ほんと、わくわくしますよね!
今後は『コニカミノルタ”満天” in Sunshine Cityの大改修工事』、つづいてこれまた話題の『コニカミノルタ”天空”in 東京スカイツリータウン』などのお仕事が決まっているそうです。いやはや、社長はことなげに列挙されますが、最先端スポットの連発にこちらの方が興奮してきました。スカイツリーの物件に関しては骨組をこちらの工場で製作し、8月に現地に持って行き、組み立てをするそうですよ!!
こんなに身近な所にプラネタリウムを作っている会社があるなんて素敵。プラネタリウムの見方が確実に変わりました。夢のあるお仕事がこれからもずっと続いていきますように。
取材日:2011年3月1日
■株式会社尾崎製作所
堺市堺区神南辺町1丁10-2
TEL.072-233-0736