日本製鉄堺ブレイザーズ2024―25シーズン観戦記(2) vs東レアローズ静岡
バレーボールの国内最高峰リーグのSVリーグが盛り上がっています。パリオリンピックでの奮闘が追い風になったのか、毎週末の熱戦と会場の大入りがニュースをにぎわしています。
堺市に拠点を置く日本製鉄堺ブレイザーズは、序盤のスタートダッシュに失敗したものの、年が明けて復調気味となり、じわじわと勝ち星をあげ3月9日現在、チャンピオンシップ出場の条件である6位に滑り込んでいます。今日の相手は、前日の3月8日にストレートで3セットをとって勝利した東レアローズ静岡。下位相手に負けられない一戦がはじまります。では、さっそく試合を振り返ってみましょう。
■好調維持がいつのまにやら空回り?

▲この人の調子がチームの浮沈を左右するほどの存在、シャロン・バーノンエバンズ選手。(写真提供:SV.LEAGUE)
この日の会場、日本製鉄堺体育館は満員。小さな体育館ではありますが、その分熱気がこもり応援が選手にダイレクトにぶつかる会場といえます。
第一セットは、今シーズン新加入のルロことルチアーノ・パロンスキー選手(7)のサーブから。初得点こそ東レアローズ静岡のものとなりますが、日本製鉄堺ブレイザーズはブレイクでお返し。高さの無いセッター山口頌平選手(14)のブロックポイントやエースのシャロン・バーノンエバンズ選手(13)のアタックも決まり順調に得点を伸ばしていきます。 7-3とリードしたところで、東レアローズ静岡がタイムアウトをとります。どうやら、昨日の好調を継続しているようだ。つい楽観してしまうような展開でしたが、東レアローズ静岡もそんな甘い相手ではありませんでした。
東レアローズ静岡は、最初のタイムアウトでいきなり選手交代。重藤トビアス赳選手(10)に代わり小澤宙輝選手(17)が入ると、アラン・ソウザ選手(11)の得点も決まりだしブレイクで肉薄します。そこからは一進一退の攻防が続くのですが、20点台に突入したところで東レアローズ静岡にブレイクが続き、22―25と逆転でセットは東レアローズ静岡に奪われます。

▲(右端)台湾出身のミドルブロッカー蔡沛彰選手(9)は2m5cmの高身長。攻守に貢献する頼もしい存在だ。(写真提供:SV.LEAGUE)
第二セットも互角の攻防。日本製鉄堺ブレイザーズは先行するもなかなか突き放せません。なんとか19-15とリードを広げたのですが、ここで東レアローズ静岡のブレイクが続きます。この時のサーバーはやはりエースのアラン選手。アラン選手にはサーブで崩され、バックアタックまで決められると、またも中盤で同点に追いつかれます。さらに20点台で逆転逃げ切りを許すという展開で23-25で第二セットも東レアローズ静岡に奪われます。
第三セットになって、日本製鉄堺ブレイザーズの北島武監督も手を打ってきました。第二セットの最後の最後にサーブミスで相手に25点目を献上してしまったルロ選手に代わって安井恒介選手(3)と、渡邉晃瑠選手(10)に代って竹元裕太郎選手(21)が投入されます。北島采配はずばり的中。チームのピンチに二人は躍動し、均衡していた序盤からじわりじわりとリードする展開に。特に安井選手は、負傷し鼻血をとめる詰め物をしながらもサービスエースも含め7得点の活躍。ピンチサーバーで入った上村琉乃介選手(17)は2連続サービスエース。さらには山口選手もダメ押しのサービスエースをとり24点目。この時のプレーで山口選手の様子がどうもおかしく、怪我の確認でやきもきしましたが、そのままコートに復帰し25-19でようやく日本製鉄堺ブレイザーズは1セットをものにします。

▲上村琉乃介選手(17)は強烈なサーブが持ち味。期待の若手の一人だ。(写真提供:SV.LEAGUE)
さて第四セット。安井選手と山口選手の怪我(?)は果たしてどの程度影響するのか? 第三セットの勢いを継続させることは出来るのか? 抱えていた懸念は、セットが始まってほどなく明らかになりました。サイドアウトを取り合う互角の闘いから10-7と3点差をつけて抜け出そうとした日本製鉄堺ブレイザーズ。しかし、そこで流れが東レアローズ静岡に移ります。4連続得点で追いつき追い越し10-11と逆転。逃げる日本製鉄堺ブレイザーズの襟首を東レアローズ静岡はひっつかんで叩き伏せた。そんな印象です。この日の日本製鉄堺ブレイザーズには、ここから巻き返す力はありませんでした。ひたすら東レアローズ静岡にブレイクを許す展開が続き、いつの間にか14-19と点差が開き、最終的には17-25と一方的な試合展開でセットを奪われ、セットカウント1-3で試合を落としてしまったのでした。

▲この日の入場者数は1643人の満員。両チームの声援が館内に響き渡った。日本製鉄堺ブレイザーズのなおき応援団長は客席に入り込んで応援をリードするスタイルで盛り上げていた。
この日は両チームとも大きな声援が試合を盛り上げていました。試合後、選手インタビューまでの間に、熱心なファンの方からコメントをいただくことができました。
「(今日の試合は)もったいなかったと思う。サーブが入らないというのは、すごい惜しいと思う。特に20点の時にサーブミスをするのは、すごいもったいない。勝てたのにって思う。(残り試合は?)もう思い切っていくしかない。頑張ってほしい。特にショー(バーノン選手)に頑張って欲しい」(なっちゃん/堺市)
では、選手インタビューです。今回は、記者会見形式ではなく立ちインタビューで個別にお話しを伺いました。
■選手インタビュー

▲頼れるベテラン、髙野直哉選手(4)。普段はクールな印象だが、コート上では熱い感情のほとばしりを見せてくれる。(写真提供:SV.LEAGUE)
トップバッターは髙野直哉選手(4)です。
――今日の試合を振り返っていただけますか?
髙野「今日は機能と違って、東レアローズ静岡さんのサーブだったり、オフェンスだったりの部分で攻められたのに耐えきれなくて、僕たちが受け身に回ってしまったことが大きな敗因だと思っています。昨日はそこの部分でなんとか攻め返すことが出来たのですが、今日は取るべき一点が取れなかったり、パスの部分でも崩されてあまり耐えることが出来ていなかったりしたので、そこが敗因かなと思っています」
――昨日、髙野選手はヒーローインタビューで、レセプションが良かったという話をされていましたが、今日はれレセプションだけでなく攻撃面でも活躍があったと思うのですが、ご自身のプレーに関してはいかがですか?
髙野「ここ数試合、スタメンで出させてもらっていて、スパイクの部分でも数字を残していますし、ある程度チームに貢献できていると思っています。けれどトラジションアタックであったり、ハイボールシチュエーションの時に点数が取れていない部分があるので、そこは自分の改善点であと思っています。その他の部分では、サーブ、ブロック、スパイクの部分でも自分のいいパフォーマンスが出来ているんじゃないですか」
――なるほど、今までのキャリアを振り返ってみても、今シーズンはちょっといい感じだとお思いですか?
髙野「そうですね。コンディションは入る前からずっと良くて、怪我もしていないですし、良い調子を維持できていると思います」
――今年はSVリーグになって、変った所が色々あると思うのですが、キャリアのあるプレイヤーとして、どのような感想をもたれていますか?
髙野「本当に注目度がかなり上がって、どの会場でもファンの方が沢山入ってくれているので、一本一本のプレーがファンの人たちの歓声だったり、時には悲鳴だったり、盛り上がりがすごいなと思います。自分たちのモチベーションが高く保てているので、ファンの方の応援が力になっています」
――外国籍選手が増えたことによる変化とかはどうでしょうか?
髙野「もちろん、昨シーズンより外国籍選手が増えたので、レベルも上がっていますし、本当に見習う部分も多々あるので、自分自分も吸収できるところはしています。また、同じポジションに外国籍選手が入るので、いい競争心というのがチームの中で出ています」
――日本製鉄堺ブレイザーズとしては、チーム状況はどうでしょうか?
髙野「開幕はいいスタートダッシュが切れてなくて連敗が続いていたんですけれど、試合が続くごとに少しずつ良くなっていって、チームとして戦っていく中で、一人一人のパフォーマンスも上がっているので、いいように働いていると思います」
――残り10試合ですが、どのように戦っていこうと思われていますか?
髙野「まずはファイナル6(チャンピオンシップ)に残るために、本当に一戦一戦負けられない戦いが続く中で、今日みたいな勝つべきところで勝てないというのはダメだと思うので、目の前の一戦一戦を勝ちにいかないと、ファイナル6に出られたとしても、その中で勝つことが多分出来ないと思うので、本当にもっともっと選手一人一人がモチベーションを上げて、パフォーマンスやチーム力を上げていかないと厳しいことになると思います」
――では、最後にファンの皆さんにメッセージをいただけますか?
髙野「SVリーグになって、長いシーズンですけれど、本当に毎試合応援が僕たちのすごい力になっています。これからまだまだ試合が続くんですけれど、少しでも皆さんに自分たちが勝つ姿をお見せできるように頑張っていきますので、応援の方をよろしくお願いします」

▲身長189cmはバレーボール選手として決して大柄とまではいえない安井恒介選手(3)ですが、ニックネームの「ビッグボディ」に相応しいパワフルなプレーで観客を魅了しています。(写真提供:SV.LEAGUE)
次は、途中出場で気を吐いた安井選手に来ていただきました。
――今日は途中出場になりましたが、代わって入る時のお気持ちはどのようなものでしたか?
安井「1、2セット目ではリードした状態が逆転されて、チームとしても雰囲気というか空気感がちょっと良くなかったので、僕が入ることでしっかり空気を変えたりとか、攻撃面に関しては自信があるので、しっかり攻撃でアピールして3セット目を取れたんですけれど。4セット目の途中でローテが回らずに少し詰まってしまって、タイムを取ったりとか、時間が来てもなかなか相手のサーブでリードされてしまったという部分があるので、そこはしっかりと、これからのシーズンは残り10試合ぐらいですけれど、落とせない試合での課題かなと思いました」
――SVリーグにかわって、ライバルの選手も増えたりしましたが、これまでの試合をご自身で振り返ってみてどう感じておられますか?
安井「正直はじめてだらけが多かったっていう印象で、アウトサイドヒッターに転向して一年目だったので、スタメンで出るのも初めてですし、アウトサイドとして試合に出るっていうのも初めてだったので、なかなか自分の力を出せずに終わってしまったり、途中で代わってしまったりとか、自分のせいで勝ちゲームを落としてしまうみたいな試合が前半は多かったんですけれど、その悪かった状況の中でしっかり練習に向き合って克服して、東京グレートベアーズにストレートで勝ったという試合からは、自分の殻が破れたというか、自信をもって打つこともできますし、上位チーム相手でもしっかり自分の力を出せて点を取ることができたので、そこはしっかり自信をもってできています。けれど、やはり開幕からその力を出せれば、勝利を掴めていたと思いますし、踏ん張って上位チームに序盤から食い込むことができたと思っていたので、そこは悔いといったら悔いですけれど、まだシーズンは終わっていないので、しっかり切り替えて目の前の一試合一試合をこだわってやっていければいいなと思います」
――チーム内の雰囲気はいかがでしょうか?
安井「悪くはないと思いますね。勝負事なので、勝ち負けはどちらかしかつかないですけれど、自分の中では雰囲気がいい時は勝てますし、悪い時こそどうやって耐えるか、我慢できるかっていうのが、この日本製鉄堺ブレイザーズの去年からの課題だと思っているので、そこを乗り越えていけばファイナル6でも勝っていけるチームになれると思っているので、普段の練習から試合を意識して練習することで、そういう意識をチーム全体で共有できればいいと思います」
――では、最後にファンの皆さんへのメッセージをいただけますか?
安井「いい時はもちろんすごい歓声が沸いてますし、負ける試合だと自分たちもどよんとした空気感を感じるのですけれど、本当にファンの皆さんの声援だったり、自分にも声をかけてくれるそういう一つ一つの声に助けられています。ダメだったなと言ったりしても、やっぱり安井君がいるからな、みたいなことを言ってくれるので、メンタル面とかでも本当に助かっています。チームとしても本当にファンの皆さんのために、勝ちを届けるという意識でやっているので、これからも飽きさせない、本当に感動させる試合をいくつも見せて、より日本製鉄堺ブレイザーズを好きになって、これからも何年でも日本製鉄堺ブレイザーズを好きだなと思ってもらえるようなチームを全員で作り上げていくので、これからもよろしくお願いしますということを伝えたいです」

▲ルチアーノ・パロンスキー選手(7)の加入で選手層は確実に厚くなった。しかしアルゼンチン代表の実力はまだまだこんなものではないはず。一層の輝きを放ってほしい。(写真提供:SV.LEAGUE)
最後は3セット目で途中交代をしてしまいまったルロ選手です。
――今日の試合について振り返っていただけますか?
ルロ「簡単に言えばうちのチームが良いプレーが出来ず、相手のチームが良いプレイが出来たから負けた試合です」
――ご自身のプレーについてはどのように評価されていますか?
ルロ「1セット目は個人的にはよくプレーできたと思うんですけれど、2セット目はサーブのミスが増えたりしてプレー出来てなったので、なぜこのインタビューに自分が選ばれたのか良くわかりません」
――堺市の地域情報サイトとして堺市民に新加入の選手を紹介したかったんです。日本に来ることになってどんな風な思いを抱かれたとか、リーグへの印象を教えていただけますか?
ルロ「まず、日本に来た時はお客様皆さんが、歓迎してくださったのが良かったです。それによって自分もいいプレーが出来るようになっていきました。リーグについていえば、SVリーグになって去年よりレベルが上がって、各チームに外国籍選手が増えて簡単に勝てなくなって、難しい試合が続いていくのは大変ですけれどやっていてやりがいがあります」
――日本製鉄堺ブレイザーズと堺という町に対する印象はいかがでしょうか?
ルロ「まず、堺についてなんですけれど、すごく住み心地がいいです。大阪市内から離れていて、落ち着いていて人が多いわけではないので住み心地がいいです。オフの時には、友達と都会にすぐに出られるところもいいですね。日本製鉄堺ブレイザーズに関しては、選手たちが優しくて、自分が思ったよりもフィットできているかなと思います。チームに来た時に、みんながすごくウェルカムで歓迎してくれたおかげで、チームの雰囲気がとってもいいと感じています」

▲試合では途中交代となりましたが、試合後のファンサービスでは満面の笑顔を見せてくれた渡邉晃瑠選手(10)。
――一番仲がいい選手は誰ですか?
ルロ「一番仲がいい選手はやはり外国籍選手になってしまうんですけれど、(渡邉)晃瑠だったりショー(バーノン)は英語で話せるので、すごく関係はいいと思います。日本とヨーロッパの違いなんですけれど、日本はコート内で関係が終わってしまうことが多いんですけれど、ヨーロッパだったら一緒に飲みに行ったり、もっとやっていたりしたので、そこは違う所です。なので、まだあまり日本人選手と距離を縮められていない所はありますね」
――なるほど。
ルロ「安井や(森)愛樹とは、コート内では良く話をするのですが、コート外では遊びにいったりはしていません。そこまで日本人選手とは深い関係にはなっていません」
――これから距離が縮まるといいですね。これまでのキャリアのことも少しおききしたいのですが、たしか昨シーズンがウクライナでしたよね。大変だったのでは?
ルロ「いえ、ポーランドです。ウクライナのチームでポーランドでリーグをしていたのです」
――そういうことですか。勘違いしていました。すいません。
ルロ「大丈夫(日本語で)。戦争のためウクライナのチームで、ポーランドで試合をしていました。日本のリーグに来た時と違う点で、フィジカル面でポーランドリーグは強かった。その点で最初は苦戦しました。ポーランドの小さい町で、人口が1万5000人ぐらい。結構田舎で気温も寒い場所だったので適応するのが難しかった。彼女も家族もいない状態で、一人で寂しかったんですけれど、一人フランス人で仲良い人が出来たので、その人とは楽しくご飯にはいってました」
――最後にファンに向けてのメッセージをお願いします、
ルロ「OK。今日はこういう風に負けてしまいましたが、まだまだ応援してもらいたいですし、シーズンも続くので、これからも応援よろしくお願いします。皆さんのご支援に感謝します」
――ありがとうございました。
3選手とも負けた試合の後のインタビューに答えてくださって本当にありがとうございます。チームはまだチャンピオンシップに参加できる6位。7位のJTサンダース広島とはポイントでは並んでいる状態。残り10試合でなんとか順位をキープしてチャンピオンシップには進んでほしいところです。
そのためにも、安井選手、森選手、ルロ選手をご飯に誘ってくださいね!
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