インタビュー

イチマルハジメ個展「サカイズム」インタビュー

 

堺市の七区を擬人化したイラスト展「サカイズム」が10月13日まで紙カフェで開催されています。
古今東西、森羅万象、自然物から名産品まで、ありとあらゆるものが擬人化される昨今ですが、ついに堺市の七区を擬人化してしまったイラストレーターの名はイチマルハジメさん。
堺オタクで堺が好きすぎるあまり、堺愛に満ち溢れた作品を発表し、ついに紙カフェでの個展開催に至ったのだとか。つーる・ど・堺としては、取材しないわけにはいきません。
開催初日にイチマルハジメさんからお話しを伺うことができました。

 

■サカイズムのはじまりは10年前

 

▲顔出しNGとのことで、イチマルハジメさん代理の広島「三原」ダルマ、直筆のお顔は「美原」区擬人化さん。これも貴重な作品ですね。

 

――プロフィール的なお話しというか、サカイズムのはじまりは?
イチマル「10年ぐらい前に大阪の市町村の擬人化っていうのをさせていただいて、堺市の七区は、その派生作品だったんです。サカイズムというタイトルにさせていただいているんですけれど、私があまりにも堺の町に惹かれすぎて、派生作品をめちゃくちゃ作り始めるようになってしまう。それが10年続いて今に至るというところです。
――イラストについては、専門の学校とかで勉強されたんですか?
イチマル「独学なんですけれど、何年か前にデザインの学校に通わせていただいたので、そこで絵の勉強もしたというところがあります。学校に入る前と後でやはりちょっと自分の絵のレベルが変わってきました」
――学校に行かれて、何が一番変わったと感じておられますか?
イチマル「構図の取り方が変わりました。それと、人に見ていただくためには、どういう見せ方をしたらいいか? みたいなことをちゃんと考えるようになったかな」
――なるほど。
イチマル「デザインって人のためにするっていう側面が強いんです。絵は自分が楽しく描けたらいいみたいなことは言われるんですけど、私はどっちかというと、人になにかを伝えられたらいいなって気持ちで描いていますね」

 

▲スナップ写真風の各区の名所と擬人化された堺七区のコラボ作品。

 

――堺のことが好きすぎてっていうのがありましたけど、堺とはどんな縁があるんですか?
イチマル「実は生まれも育ちも、大阪の北部で堺ではないんです。歴史や文化、そういうジャンルが好きで、昔の話を聞くのも好きだし、遺跡巡りや城巡りもめちゃくちゃ好きで、その中で堺の歴史に触れたんですけど、堺の歴史を知って行ったら、堺って中世の頃は、めちゃめちゃ大きな都市で世界に開けてて、早くから香辛料が入ってきていて、それが産業につながって、日本で初めて線香が作られたとか。古墳時代に鉄が入ってきて、製鉄技術が発展して来て、すごく合理的に量産型の鉄炮が作れるようになって、それが鉄炮がイラン時代になって自転車産業に発展した。そういう現代につながる歴史の流れがすごく面白くて堺の町が好きになったんです」
――すごいですね。ものすごく立体的に堺の歴史を捉えられている。古墳や利休さん、与謝野晶子さんなど、ピンポイントでここが好きという方は多くいらっしゃいますけど、全体像が好きという方は、よりマニアックというか、珍しいように思います。
イチマル「私も最初はピンポイントだったんですよ。小学生のころに古墳の航空写真がありますよね。あれを図鑑で見た途端にここをいつか見てみたいと思いまして。それが念願かなって約10年前に堺に降り立って見て、なんか歴史も面白そうやからって、そういうご縁だったんです」
――なるほど。そういえばネットで拝見したんですが、ニサンザイ古墳がお好きだそうですね。
イチマル「やっぱり古墳とのあの形がわかりやすい古墳ですもんね」
――景観としても良いですよね。イチマルさんは、本当にどれだけ堺をみていらっしゃることか。
イチマル「10年の歳月で色々と聞かせていただきました」
――では、古墳はもう色んなところを巡られたんですか?
イチマル「それでもまだまだ行き足りていないなって思います。やっぱり周りの古墳好きさんたちに比べたら、私はまだまだライトだなって」
――ワンポイントだとしても、ワンポイントの深さがすごい人たちがいっぱいいらっしゃいますからね。

 

 

■解説サカイズム&今後の展開は?

▲左から南区さん、東区さん、堺区さん。堺好きならば、なんの特産品とのコラボかわかりますよね?

 

そろそろ堺七区の擬人化についても聞いてみることにしましょう。インタビューでは、七区全てを詳しく解説していただいたのですが、それを全部書いてしまうと個展にいった時の楽しみがないので、ここではほんの少し触りとして堺区のお話しをお届けしましょう。

――擬人化するにあたっての、ポイントはどういうところなのでしょうか?
イチマル「まず絵を見て、どんな名物があるのかなっていうのが、最高で3つ、少なくとも1つは伝わるようにしましたね」
――では、堺区の解説をお願いします。
イチマル「堺区はやっぱり堺の中でも顔的な存在の区なので、一番目立つような雰囲気にしたんですね。他の子たちに比べると、ちょっとオーラが変わってくるっていう」
――確かに、他の区は普段着的な衣装ですけど、堺区は違いますね。
イチマル「そうなんです。堺区さんだけ和装で、古い歴史がある……って言うたら、まあ全部そうなんですけど、中世の隆盛を極めた時代から、江戸、明治とかの歴史をすごい大切にしている子だなっていうイメージがあったので、伝統的な和装にさせていただいて、でも古墳はちょっとつけるっていう。古墳を一番目立たせているかんじですね。また、早くから世界に開けていた町なので、ちょっと日本人離れした顔立ちで、だいぶ色の濃ゆい区で、描いてても目立つ存在にはなりましたね」
――キャラが目立ってますね。確かに。

こんな様子で、他の六区についても解説いただいたのですが、特徴把握が的確で、それはクリエイターならではの観察眼と、堺生まれではない第三者による客観的な視点があってこそだと思わされました。
ぜひ、みなさんも作品をじっくり見て、どんな特産品が隠されアートとして昇華されているか、イチマルさんが絵にこめた堺愛を受け取ってほしいですね。

 

▲堺銘菓の擬人化イラスト。あなたの好物はあるかな?

 

――すごいですね。各区の特産品がすごいきっちり織り込まれて、キャラも立たせているというところがすごくわかりますね。結構ここまでの作りこみというのは、何度かリニューアルがあったりもしたのですか?
イチマル「キャラを作って、その後堺の各区に遊びに行ったりして、自分の見てきたものがなんか解釈がちょっと違うなって思い始めたりして、そのたびにちょっとずつマイナーチェンジしてきて今の形になったって感じですね」

――では次に、今回の展覧会に至った経緯や意図についてもお聞かせいただけますか?
イチマル「そうですね。経緯としては(紙カフェ元店長)松永友美さんと、以前から親しくしていただいていて、古墳祭にもちょっと参加させていただいたりとかしていたんですけれど、途中で私の描いた作品を松永さんに見せたら、めっちゃいいやん、と褒めていただいたので、もう調子に乗っちゃって。いつか個展をやりたいなと思ったんです。個々の雰囲気もすごい好きで、したいなと思って、今年、市町村擬人化創作が10周年になるので、今年のうちにやっちまうかなって」
――なるほど。
イチマル「個展の目的としては、一つがこれまで見ていただいたフォロワーさんとかにありがとうと、日ごろの感謝の気持ちを込めて、今回展示させていただくというのがあります。普段から堺、堺って言っているので、私の好きな堺をぜひご覧いただきたい気持ちもあります。堺のこと、実は良く知らないんですっていう方に向けて、実はこんなに面白い町なんですよっていうのをね、伝えられたら万々歳っていう気持ちでさせていただきました」
――普段はイチマルさんの作品はネット上、SNS上で拝見できるって感じなんですか?
イチマル「そうですね。主にTwitter(現X)の方でやってたんですが、クロスフォリオっていうポートフォリオサイトに移動しようか今考えている所です」
――ファンの方との交流があるということですが、皆さんの反応はいかがですか?
イチマル「じっくりご覧いただいて、実はこのキャラ好きなんです、とか。この作品好きなんですとか言っていただいて、結構いい感触だなと思います。初めて見てくださった方も、堺にまつわるご自身の話とかされて、結構面白いですね」

 

▲紙カフェのオリジナルドリンク「鉄炮タピオカ」とのコラボイラスト。

 

――今後の展開については、どんな風に考えられていますか? イチマルさんの作品を手に入れたいなっていう方や、もっと作品を見たいなっていう方はどうすれば? 今後の創作活動の展開とかはどうなのでしょうか?
イチマル「一応漫画も拙いながら描かせていただいているので、今それをゴールを決めて走っている最中なので、とりあえずゴールまで進んでいきたいなという思いがあります。その漫画が落ち着いたら、堺に関する擬人化にとらわれない、堺を舞台にした創作にもちょっと手を出せたらいいなとは思っています。擬人化という表現にも、ちょっと限度っていうか、限界はあるので。この表現やったら擬人化じゃなくてもいいなとか」
――それはすごく楽しみですね。ゴールとおっしゃってましたが、時期的にはいつ頃でしょうか?
イチマル「私はちょっと筆が遅いので、もしかしたら来年、再来年とかになるかも」
――少し先になりそうですね。その間にファンの方が、グッズ欲しいなとか、紙ベースのものが欲しいな? という時にはどうすればよいのでしょうか?
イチマル「通販もあるんですけど、現地としては創作系の同人誌即売会っていうのがあって、東京の方ではコミティア、大阪の方では関西コミティアというのがあって、それに出てたりとかするので、参加するとなったら何かしらSNSで発信するので」
――それをちゃんと注意深く見ておこうということですね。今日はどうもありがとうございました。

 

イチマルハジメ個展「サカイズム」

 

 

紙と堺と古墳のお店 紙カフェ

堺市堺区綾之町東1丁1−8

 

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