ようこそ! 連歌の世界へ!(1)
日本文化の伝統的な詩について、みなさんは親しんでいるでしょうか? 学校で習ったり作ったり、テレビ番組で取り上げられたりで、俳句、短歌、川柳に触れたことのある人はいるでしょう。また、カルタブームもあって小倉百人一首で遊んだことがある、という人も決して少なくないでしょう。
では「連歌」はどうでしょうか? ずーっと昔の貴族の遊びで、どうも何人かで一緒に歌を作るらしい……ということぐらいで、多くの人にとっては実際にどういうものなのか、見当がつかないのではないでしょうか?
恥ずかしながら筆者もその1人なのですが、縁があって連歌会に招待されることとなりました。さて、連歌とは一体どんなものなのか、レポートいたします。
■戦国武将もたしなんだ教養バトル
時は2022年3月3日。連歌会を主催されるのは南宗禅寺連歌会で、もちろん会場は会の名にもある堺市でも名刹中の名刹南宗寺です。
南宗寺といえば、ピンと来る方もいるでしょう。このお寺を建立したのは、戦国大名三好長慶。最近は、織田信長に先駆けて、最初の戦国天下人となり堺幕府を開いたと、評価が高まっている武将です。
つーる・ど・堺でも、かつて三好長慶の銅像建立や、三好長慶公像を織った西陣美術織の奉納の取材で南宗寺にお邪魔させていただいています。
そういえば文武両道で知られる三好長慶は、連歌もたしなんでいたはず。どうやら、そのあたりにこの連歌会の秘密がありそうですが、まずは連歌会の様子を覗いてみましょう。
この日、南宗寺方丈に集まられた連歌会のメンバーは十数名。その中には、南宗寺の御住職田島碩應さんの姿もあれば、堺で三好長慶といえばこの人という堺・ちくちく会の竹内魁成さんの姿もあります。
会のスタートは、田島老師のお言葉から。
「コロナが堺市で多いのが気になっています。また、プーチンも余計な事をはじめました。どちらも早く収まってほしい。今日は力の入りすぎ肩の力を抜いて、整った句を連発してほしい」
と、老師は社会情勢にも触れた一言。
そして、この会のキーマン。連歌を指導してくださる宗匠鶴崎裕雄さんからは、こんなアドバイスがありました。
「季節を大切にしてください。それは季語が大事ということですが、それがどういうことなのかは徐々にわかってくるでしょう。前に出てきた句はこういうことを詠んでいる。そこに別の景色をつけていくといいんです」
ふむふむ。季節・季語が大切というのはわかりますが、景色をつけるとはどういうことなのでしょうか? 謎が深まる連歌。いよいよスタートです。
■四十四句で完成させる歌の曼荼羅
連歌は、575の上の句、77の下の句を別の人が交互に詠んで繋いでいきます。この時、好き勝手に詠んで繋げていいわけではなく、様々なルールがあり、そのルールに則って詠んでいかねばなりません。そして、正式には四十四句を詠んでひとつの作品として完成となるようです。
この時、全体の口火を切る一番最初の句を発句といい、次の句を脇といいます。発句からはじめて冒頭の8句を初折表、次の14句を初折裏、その次の14句を名残表、最後の8句を名残裏といいます。3月3日の取材日の連歌会は、昨年11月の発句から初めて3回目の会で、最後の8句である名残裏を詠んでいこうという所でした。
ちなみに発句は、「秋風や さそはれ集ひ 文を詠む」(魁成)という竹内魁成さんの作品。文とは連歌のことで、秋の連歌会を詠んだ句です。それに続けた2句目の脇は、「雲なき空に 紅き柿の実」(碩應)と老師の詠んだ句。こちらは風景描写で、真っ青な秋の空に、紅の柿の実というコントラストを描いています。さらに次の3句目は、「道の辺の 高き梢に もず鳴きて」(規子)とあります。
なるほど、これは前の句を受けながら別の景色をつけていく連想ゲーム。映画のカメラワークを思わせますね。そこからずーっと続いて、前回の連歌会で最後に詠んだ名残表の14句目が「さやかなる音を 添えよ虫どち」(規子)です。さて、この句の次にどんな句を誰がつけるのでしょうか?
→第二回へ続く。
南宗禅寺連歌会
南宗寺
堺市堺区南旅篭町東3丁1-2