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「語感あそび」 西村佳子作品展 レビュー

 

2020年5月5日の子どもの日は、例年とは少し様子が違っていました。5月6日までとされていた新型コロナウイルスの感染拡大予防のための緊急事態宣言が続いており、しかもそれは5月末まで延長となったのです。

堺市内の住宅地を歩いていると、いつもと変らず公園で遊ぶ子どもたちの姿がちらほら見える一方、シャッターを下ろした店舗に「しばらく休業」の貼り紙が目立ちます。開いているお店でも、入店制限をしたり、店頭でテイクアウト販売をしたりと、工夫をされている様子もうかがえます。

「うちの商店街は、緊急事態宣言の前から、ソーシャルディスタンを取ってますから」

と笑うのは、山之口商店街にあるギャラリーいろはにのオーナーの北野庸子さん。確かに、山之口商店街は、以前からのんびりとした商店街です。逆境の中、状況をポジティブに捉え直すことが出来るのは、普段から逆境にいるからかもしれません。

 

▲風通し良い、ギャラリーいろはに。画面左手に展示されているのは、大作”いろはうた三態”。”奥の細道”の序文も書かれている。

 

さて、この日は、書家西村佳子さんの作品展「語感あそび」の会期中でした。
「こういう時期だから開催するかどうか迷いましたが、こういう時期だからこそ文化も必要だろうと思って開催することにしたのです。ここなら風通しもいいでしょう」

と、こちらは西村さん。これまで何度もつーる・ど・堺には登場していただいています。

「(作品の)額装が間に合わなかったんだけど、この方が返って良かったでしょう」

緊急事態宣言、自粛要請で閉塞感がある中ですから、解放感のある作品展示は心地よく感じます。そんなギャラリーで、西村さんからお話を伺いました。

 

 

■20年あたためてきた語感あそび

 

▲書家 西村佳子さん。

 

西村佳子(以下、西村)「語感遊びを前からやりたかったんです。もう20年もあたためてきたかな」

――20年間やらなかったというのは、何か理由があったのか気になります。

西村「作品になりきらなかったというのもありますが、商業ベースでは(このテーマは)あかんという思い込みがあったかもしれません。書くのは俳句や短歌じゃないといけないと。それに、怖かったのかもしれませんね。この年でやれるかなとか」

――それがどうして、今作品展をすることに?

西村「やはり本当にやりたかったんです。年を取って技術的な自信もついてきたし……年をとって面の皮が厚くなったのもあるかな。年を取るといいこともあるよ(笑)。色んな事が気にならなくなってきた。しゃあないことはしゃあないと思えるようになった。これは無責任とは違うよ。今までも、そうは言っても作品を出すことには気を使ってきたしね」

 

▲”まりりん もんろう”出来上がった作品から、筆はこびを想像してみるのも鑑賞の楽しみです。

 

――最近は、色んなコラボレーションもされてきましたよね。

西村「(バルセロナの現代アーティスト)フランチェスカ・ロピスとのコラボレーションもやったし、音楽ともやった。色んな事をやってきたのは経験になってますし、自信がついてきました。言葉じゃなくて、線だけでも面白いと言ってもらえるのも驚きでした」

――俳句や短歌じゃなくてはいけないという思い込みから解放されたのですね。

西村「私はひらがなを書きたいんです。漢字だと意味があるでしょう。意味を書きたいとは思わない。私は言葉には、イメージと音の2つあると思うんです。今までずっとイメージをやらないといけないと思っていました。俳句や短歌のもっているイメージ、景色や情景を書かないといけない、そうじゃないと喜んでもらえないのではないかと思っていました。(でも今は)そうではなくて、自分で音から感じたイメージを書きたいと思ったんです」

 

 

■自分はどんな音を作るだろう

 

▲”るなぱあく”。ルナパークとは月世界旅行をテーマにした遊園地につけられた名称。かつて世界中でブームになった。

 

正面の壁には、いろはうたを万葉の時代、平安時代、現代の三つの時代のイメージで描く大作”いろはうた三態”が掲げられています。

西村「言葉の意味もそうだけれど、日本語そのものが音だと思っています。たとえば、“まりりん もんろー”と書いたけれど、“まりりん”は明るく、“もんろー”はくぐもる。彼女の生き様と重なって、名前と音がぴったりだと思う。“るなぱあく”というのは、すごく好きな言葉。ルナというのが月のことで、夜の遊園地というイメージがあるのだけれど、この言葉を知ったのは小学生だったので、ルナが月なんて多分知らなかったけれど、この言葉が好きだった。“あばんぎゃるど”も、アバンチュールとギャングが合わさったみたいで面白かった。“あばんぎゃるど”で自分はどんな音を作るのだろう」

――五十音を5文字ずつ書いた“はずむもの かきくけこ”、“高貴なもの たちつてと”、というのも面白かったです。これは西村さんの音の感じを書かれたんですよね。

西村「そう。筆の運びも大切やね。高貴なもの“たちつてと”なら、筆を遊ばないで書く。それぞれ音のイメージがあって、それは言語を越えてあるように思います。S音はほそくてかすかな感じ、サイレントとか。らりるれろは転がる感じ、ローリングとか」

――違う言語や文化であっても、どこか音から来るイメージが共通していて、同じようなものに近しい音で名前がつけられている事はあるかもしれませんね。

 

▲時には作品が風にはためきすぎる時も……。

 

この日は、春から夏へ移ろう中、少し日差しは強く、吹く風が心地よく感じられました。開け放たれた扉からギャラリーに吹き込む風が、西村さんの作品を揺らします。この時期、この季節の中で、語感あそびで書かれた作品を、あなたはどう感じるでしょう。

 

書家西村佳子さんが20年あたためてきたという作品展「語感あそび」。人間が感じることの不思議さ、表現することの面白さに出会える作品展です。ぜひ、お越しください。

 

 

 

○語感あそび

会期:2020年5月1日(金)~5月13日(水)11:00~18:00 木曜休/最終日17:00
会場:ギャラリーいろはに
住所:堺市堺区甲斐町東1丁2-29
入場無料

※ソーシャルディスタンは十分に取ることができます。マスク着用の上、お越しください。
※5月9日(土)に予定されておりました公開講座とジャズと墨のセッションは中止となりました。予めご了承ください。

 

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