三宝水再生センターで、平成元年にはじまった「あじさいの一般公開」。昨年2016年(平成28年)からは、「三宝あじさいまつり」と名前を変えて開催されています。職員の方々が育てたあじさいを愛でるだけでなく、施設の見学ツアーがあり、さらに今年からはちょっと珍しい企画もはじまりました。
それがデザインマンホールの展示。会場の片隅には、色とりどりのマンホールの蓋が並べられています。マンホールの蓋は40キロもするので、集めるだけで大変だったことでしょう。
興味深そうにマンホールを眺める市民の方に解説されている職員の方に声をかけてみました。
■人気沸騰マンホールカード
「これまでのも堺市のデザインマンホールは展示していて、鉄蓋マニアの方が来てくれていたんですが、今回は13市の鉄蓋が展示されています」
と語るのは、この展示を企画された郷田秀章さん。自身もかなりの鉄蓋=マンホールの蓋マニアのようです。
「これまでも旅行に行くと、各地の蓋を撮ってネットにアップして『どこそこNOW』ってやっていました」
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▲デザインマンホールの展示を企画した郷田さん。郷田さん以外の職員の方もいきいきと解説されていたので、皆さんマンホールラブな気がします。 |
マニアックな鉄蓋の世界に変化が起きたのは、2016年4月のことでした。
「マンホールカードが大阪府では堺市、大阪市、東大阪市の3市で発行されたんです。これが人気になったことで、うちでも作りたいと大阪の13市でマンホールカードが作られるブームになったんです」
このブームに郷田さんの血も騒いだのでしょう。6月に開催される「あじさいまつり」に、各市のマンホールが一堂に会する展覧会を開催しようと考えたのだそうです。
「各市に問い合わせたところ、どの市も協力的でした。なにしろ各市のPRにもなりますからね」
まずデザインマンホールそのものが、各地のご当地ネタを取り入れたものです。
たとえば堺市ならお馴染みの旧堺燈台がデザインされたマンホールです。お隣の市を見ていくと、高石市は「天女の羽衣」伝説の天女と名所の海岸をデザインしたもの。和泉市なら「和泉」の清流に住むカワセミのデザイン。多彩なご当地デザインで、楽しく鑑賞できます。
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▲和泉市のデザインマンホール。清流とカワセミがデザインされています。 |
デザインマンホールは見るだけでも楽しいのですが、マンホールカードには、このマンホールの魅力がコンパクトに詰まっています。
マンホール写真だけでなく様々なデータとして、デザインに取り入れられたモチーフの解説や写真に収められた位置情報も記載されているのです。
「この写真は実際に使われている場所でマンホールを撮影したもので、背景は画像処理しています。マンホールは住所がないので、どこにあるのか実際に見に行くことが難しかったんです。でもマンホールカードには緯度経度のデータが載っています。これをネットのgoogleマップなどに入力すれば、道案内してもらえます」
ネット時代ならではのアイディアですね。
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▲大阪狭山市のマンホールカード。日本で一番古いダム湖である狭山池がデザイン。 |
ちなみに郷田さん一押しの推し蓋はどれでしょうか?
「そうですね。今一番熱いのは、2019年のラグビーワールドカップを控えた東大阪市でしょうか。市のPRに一番力が入っていますね」
東大阪市にはラグビーの聖地花園があります。東大阪市のデザインマンホールには、ラガーマンがラグビーしている様子が描かれています。色使いもカラフルです。デザインマンホールにも、カラフルなものとそうでないものがありますが、これはなぜなのでしょうか?
「色付きは高いんですよ。東大阪市のマンホールは黒に見えるところも、おそらく色を使っていると思うんですが、一色につき熱転写の工程が必要になってきます。通常のマンホールの3倍ぐらいの値段になるんじゃないでしょうか。水道局だけでは製造は難しいので、東大阪市の市の観光PRとして取り組んでいるのでしょう」
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▲ラグビーワールドカップを控えた東大阪市のデザインマンホール。 |
■知ってほしいのはマンホールの下の世界
この展示場には、デザインマンホールを飾るだけでなく、マンホールの下の仕組みの展示もされていました。
「結構興味をもって見ていただいています。マンホールの蓋は入り口で、私たちはその下の世界を知ってほしいと思っています。でもいきなりマンホールの下に興味をもってもらうことは難しいので、マンホールカードをきっかけに下の世界にも興味をもってほしいんです」
郷田さんが訴えたいのは、やはり無造作に油やごみを捨てないでほしいということでした。
「結局誰かが掃除をすることになるんです。それはみんなのお金です。特に油を捨てると、丁度血管が細くなってつまっていくのと同じようになります。油にトイレットペーパーがまとわりついて、下水道が詰まる。そんなことが年間に何百件もあるんです」
この危惧は、これからの人口減少時代を迎えてますます重要になってくるといいます。
「新生児の出生数は、一番多かった頃に比べると、最新のデータでは6割にもなっています。つまり今と同じインフラ設備を将来は6割以下の人口で支えていかなければならないのです。分母が小さくなっていくなか、インフラを維持するのは大変です。ならばなるべく管理費を少なくするために、努力していく必要があるでしょう」
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▲マンホールの蓋の下の世界はどうなっているの? |
今回の「あじさいまつり」もその企画である見学ツアーもデザインマンホール展も、そのためのPRの一環でした。
「他にも、泉陽高校とコラボレーションで、ライブキッチンというイベントなどをしています。下水道に負担の少ない炊事のやり方のレクチャーなどをしています。泉陽高校としても生徒のキャリア形成に役立つと喜んでいただいています。水再生センターには、これまで女性がいない職場でしたが、現在は女性の分析官もいます」
女性で理系へ進みたい生徒の目には、三宝水再生センターは魅力的な職場に映ったでしょうか。
マンホールの展示の背景には、思いもよらぬ深い理由が潜んでいました。マンホールをきっかけにして、その下の世界についてももっと注意を向けていきたいですね。
堺市上下水道局 三宝水再生センター
堺市堺区松屋大和川通4丁147番地1
電話 072-232-4958
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