6月。梅雨入りを前にして、心惹かれるお祭りが開催されました。
「三宝あじさいまつり」とは、見慣れないお祭りです。どうやら三宝にある三宝水再生センターで開催されるイベントのようです。5月のツツジは浄水場、6月は水再生センターであじさいと、水関係の施設で華やかなお祭りが続きます。その様子をレポートしてみましょう。
■密かな人気イベントだった「あじさいまつり」
三宝水再生センターは、大和川の河口近くにあります。このあたりは江戸中期の大和川のつけかえ以降、川で運ばれた土砂によって新地・新田として開発されてきたエリアです。交通の不便なエリアでもあるのですが、平日にもかかわらずなかなかの人出がありました。
「雨の日は減りますが、1日500人から2000人も来られる時があります」
とは、職員の方のお話。
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▲処理場見学もあるお祭りに。 |
目当てのあじさいは、センターの建物や道路に沿ってある花壇に満開で咲いていました。
これまでこれほど多くのあじさいを見たことも、またあじさいをまじまじとみた経験もなかったのですが、品種によって多彩な姿をとる花だったんですね。これは新鮮な驚きでした。
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▲花壇にもさまざまなあじさい。 |
順路に沿って進むと、鉢植えの展示があり、その先には驚きの光景がまっていました。
敷地の斜面一面にあじさいが花開いていたのです。これはあじさいの回廊、あじさいの小径です。
あじさいを見るのにおあつらえ向けというか、それ以外に使いようのない道が斜面の下に続いています。スロープになっており、車いすの方や園児たちも快適にあじさいを鑑賞しています。このあじさいまつりのために造られた道のように思われます。
子どもたちが描いたあじさいのイラストや市民が撮ったあじさいの写真の展示コーナー、それにあじさい相談所まで設置されています。あじさいを触媒にして、市民とセンターが繋がろうとしている様子が見て取れます。
しかし、一体いつからこのイベントは開催されていたのでしょうか。職員の方にお話を伺ってみました。
■自分たちの職場を美しく
お話は、この三宝水再生センターの所長宮本博一さんから伺うことができました。
「きっかけは小学4年生の社会見学なんです」
小学校のカリキュラムではこの時期に4年生の社会見学があります。
「やってくる子どもたちは正直でしょう。移転する前の古い施設でも悪臭はしなかったんですが、どうしても匂いの籠る廊下とかはあったんです。するとやっぱり子どもたちは臭い、汚いって言ってくるんです」
センターで働く職員の人たちにとって、それは悔しいことでした。どうにか自分たちの職場のイメージアップを図りたいと、職員たちは相談しました。
「この時期に咲く花を植えたらどうかという案が出ました。するとそれはあじさいしかなかったんです。それで1人の職員が自宅で育てていたあじさいを持ってきたのがはじまりです」
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▲社会見学の子どもたちのためにあじさいは植えられた。 |
最初はひとつの鉢植えからあじさいはどんどん増えていきました。市民から寄贈されることありました。
「あじさいが増えてくると、これは小学生だけでなく市民の方にも見てもらおうということになって、一般公開として『あじさいの一般公開』がはじまりました。それが平成元年のことです。入場者数の記録がここにあるのですが、初年度は入場者数のカウントもしていなかったんです。一応入場者数800人としてますが、仮のものですね」
最初は推定で800人程度だった入場者も、年を追うごとに増えてていき平成20年には2万2千人の最大入場者数を記録します。
■センターの移転と「あじさいまつり」の再スタート
周辺の市民を中心に親しまれてきた「あじさいの一般公開」ですが終わりの時を迎えます。それは、阪神高速大和川線の工事にともなって、センターが道路を一つ挟んだ現在の場所に移転することになったからでした。
「平成22年から24年は工事のために、あじさいを今の場所に移したためにイベントを中止しました。あじさいが育つのにはどうしても3年ぐらいかかるので、もう少し待ちたかったのですが、要望が大きかったので平成25年には周辺の方に限ってのプレオープンを行いました」
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▲小さな子どもたちや車いすの方も斜面のあじさいを楽しんでいました。 |
新しいあじさいの園となった斜面は、あじさいのためには日当たりが良すぎるという問題があるのだそうですが、それでも現在は100種類以上にもなるあじさいが育っています。
施設自体も生まれ変わり、あじさいも復活したことで、職員の方々の手ごたえも増したのでしょう。昨年2016年(平成27年)には、イベント名も「あじさいの一般公開」から「三宝あじさいまつり」へと変更。
「処理施設の見学ツアーも若手が自主的に行っているんです」
自分たちの職場を綺麗に見てほしいという思いからはじまったイベントは、あじさいの見学だけでなく、施設の役割をより理解してもらうことも目指す多角的なイベントへと成長したのです。
そして、今回からはもう一つ話題となった、なかなかマニアックな企画も開催されていました。それはマンホールの展示会です。
堺市上下水道局 三宝水再生センター
堺市堺区松屋大和川通4丁147番地1
電話 072-232-4958
ファックス 072-232-4957