ミュージアム

いつかホタルを夜空に

hotaru00_face01.jpg
「星かホタルか」
かつては日本のそこかしこの川岸で見られた乱舞するホタルがいる夜空。
そんな光景を蘇らせ、環境大臣表彰を受けたこともある岡本欣也さんのことは、以前つーる・ど・堺でも紹介いたしました(「ホタル研究家 岡本欣也」http://toursakai.jp/sasso/2014/09/09_1583.html)。
幼いころの川遊びを出発点に、自己流でエアポンプすら使わずにホタルを育てる岡本さん。これまでも、多くの施設や地方の村などから、ホタルを飛ばすための指導を頼まれてきました。
昨年、環境大臣表彰を受けたことで、ますます注目が集まっており、講演を引き受ける機会も増えたようです。この日は、「堺市セカンドステージ応援団」の「SS塾」での講演が行われました。

 

hotaru01_okamoto01.jpg
▲捨てられた古い流し台を改造して水槽代わりにしたり、岡本さんはお金をかけずに様々な生物の飼育を成功させています。

 

講演会場となった会議室には、岡本さんお手製のパネルの数々と、二つの水槽が持ち込まれていました。片方の水槽には大きなウナギの姿。そしてもう片方には少し濁った水の向こうに様々な魚が泳いでいるのが見えます。
「足が悪いので座ったままで失礼します」
と断って椅子に座り講演をはじめた岡本さんですが、ポイントポイントではスライドやパネルの前に出てしゃべり、穏やかな語り口ながら熱が入っています。
hotaru01_okamoto02.jpg
▲パネルを手に熱弁!

 

岡本さんのお話は、ホタルを育てるきっかけから始まり、ホタルの生態について細かな話にまで及びました。
7月ごろに卵から孵ったゲンジボタルの幼虫は1.5mmぐらいで、木綿の糸のよう。それがカワニナという貝を食べて10か月で3cmほどに成長します。
「ホタルの幼虫は4月の桜の花が散るぐらいの時期の雨の日に川からあがります。そして土繭をつくって蛹になり、5月25日ごろから羽化して飛び始めるんです」
ホタルの数が減少したのは、幼虫が陸にあがるための土の土手が無くなったのが大きな原因の一つです。
「カワニナはコンクリートの川でも育ちます。しかし、コンクリートで三面張りをした川ではホタルの幼虫は陸にあがっても、土が固められており土にもぐることができず蛹になることができないんです」
岡本さんが自宅でホタルを育てた時も、幼虫が陸にあがれるように湿り気を帯びた土が保てるように様々な工夫をしたそうです。
hotaru01_unagi01.jpg
▲ホタルだけでなく様々な生物について詳しい岡本さん。こちらのウナギは促成で大きくなる養殖もの

 

岡本さんの講演が終わると、聴衆から次々と質問が寄せられました。岡本さんはそれに丁寧に答えます。質問の中からいくつかピックアップしてみましょう。
Q ホタルで光るのはオスですかメスですか?
A オスもメスも光りますし、卵も幼虫も光ります。ホタルは一生光ります。
Q (お近くにお住まいの方から)ニサンザイ古墳などでもホタルを飛ばすことは出来るでしょうか?
A 池では無理でしょう。池の水を流している農業用の水路などではでき出来るでしょう。しかし、ホタルは遠くまで飛ぶのでゲージがないとどこかに飛んで行ってしまう。ホタルの幼虫も小さいので、流れのある所だと流れていってしまうし、網で囲っても網の目をすり抜けてしまいます。
Q カワニナを川に戻す方法は?
A 泉北ではカワニナが育っているようです。カワニナは雑木林の落ち葉を食べる川の掃除屋なので、落ち葉がたまる淀みが必要です。それと、外国産のカワニナを食べてもホタルは光らないようです。
Q 観賞用のホタルを少しでも長生きさせる方法は?
A すぎ草やよもぎ、水草などをいれて、朝晩に霧吹きをしてやってください。ホタルの成虫は草から出る水分をとって生きています。
Q 岡本さんの自宅でホタルを見ることはできますか?
A できます。ただ沢山来られるとご近所に迷惑なので事前に連絡をください。
Q ホタルを育てる環境は?
A 水槽に水草と貝があれば幼虫は育ちます。さなぎになるために土作りが難しい。土はなんでもいけるのですが、湿り気をもたせる必要があります。
Q 水道水をそのまま使っても大丈夫なんですか?
A 昔は塩素が強かったのですが、最近はそうでもないので大丈夫です。ただできれば一日置いて同じぐらいの水温にしてからがいいでしょう。
hotaru01_unagi02.jpg
▲こちらの水槽ではフナやカワニナ、ドジョウと、大和川で獲った小さなウナギを三年かけて育てていました。

 

岡本さんは、自然についての哲学についても語られました。
「生き物は、私達が生まれる前に地球に送ってもらったもので、あとから来た私達がそれをいただいているんです」
ですが、私達も虫に接する機会がめっきりと減りました。
「子供も虫が嫌い、親も虫が嫌い、先生まで虫が嫌い……そんな状況だけど、『虫が嫌い』といっていた子供が、草むらに連れていったら『虫が好きになった』というんですね」
と、岡本さんは言います。
hotaru01_okamoto03.jpg
▲「後継者はいますか?」の問いに、「昔訪ねてきた高校生が、今は立派な研究者になって世界中を飛び回っています」と誇らしげに岡本さんは語りました。
岡本さんが自然に親しむ中で身に着けていった様々な知恵。その貴重な知恵を多くの人に、そして次世代のこども達につなげていくことはとても大切なことだと感じさせられた講演でした。

灯台守かえる

関連記事

Remodal

Remodalテスト

Write something.


PAGETOP

remodal