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まちあるき No.099

SPinniNG MiLL(スピニングミル)

世界とつながる下町のスポット

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紀州街道を通って大阪市から大和川を渡ると、堺市内に入ってすぐにレトロな雰囲気の建物があります。「この建物はなんだろう」と通る者の目を惹きつけずにはいられない不思議な魅力を持つ建物です。昔紡績工場だったその建物を買い取って改装し、アトリエ兼イベントホールに生まれ変わらせたのは写真家の小野晃蔵さん。(インタビュー記事 前篇後篇
建物に「SPinniNG MiLL(スピニングミル)」と名付けた小野さんは、ご近所へ挨拶に行くと驚かされました。
「ありがとう。あの建物がどうなるか心配していたんです」
引っ越して感謝されることなんてあるだろうか......。小野さんは確信します。
「この建物を自分だけのものにしてはいけないと思ったんです」

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▲フォトグラファー小野晃蔵さん。スピニングミルは自宅兼用です。


■スピニングミルの再生
スピニングミルの一階は小野さんのアトリエとなっていますが、階段をあがるとそこは100人以上は入れそうな広いホールです。
「購入した時は、ここは和室の小部屋に区切られていたんです」

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▲2階のホール。

しかし、天井と壁の接する部分が直角ではなく、漆喰で緩い曲面に仕上げられていることに小野さんは気づきます。
「これは! と思って仕切りをとっぱらってみたらあれがでてきたんです」
ビンゴでした。天井には漆喰で丁寧に作った凝った飾りが眠っていたのです。
「今、漆喰でこんな飾りを作ったりしませんよ」
おそらく洋風の大部屋として作られたものが、何かの必要があっていくつもの小部屋に改装されたのでしょう。小野さんは、当時の姿を可能な限り甦らせることにしました。
「壁の照明もいくつか無くなっていたのでレプリカを作りました。ガラスは特別な製法で作られている方にお願いして『高くつくよ』と言われたら、本当に高くついちゃいました(笑)」

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▲小部屋に区切られていた内壁を壊すと天井の飾りが姿を現した。 ▲照明も全ては揃っていませんでした。

こうして再生された存在感のあるホールで、小野さんは様々なイベントを開催するようになりました。
「三重県で無農薬の野菜を作っていた方の野菜を売ろうというところから、フリーマーケットを始めたんです」
「スピニングマーケット」と名付けられたフリーマーケットは、回数を重ねるごとに出店者もお客様も増え、ついには近所の他の店と共同開催するまでになりました。
「スピニングマーケットが街に広がっていけばいいなと思っていました」
開発に取り残され、時が止まったようになっていた町に人の流れが生まれ始めました。


■町に人の流れを呼ぶ建物
大阪市内の下町で育った小野さんには、スピニングミルのある並松町のあたりは居心地よく感じられるのだそうです。
「丁度こんな感じの工場があって、古びた下町で懐かしい感じです。とりあえず挨拶はしようと思って家の前を通る小学生とかにもみんな挨拶しているんです。向こうはなんだろうと思っているでしょうね」
小野さんはその調子でどんどん町の中へ、人の中へと入っていきます。
「すぐそこに昔はダイセル化学があったでしょ。ダイセル化学のもとの大日本セルロイド時代に写真事業部門から富士フイルムが生まれたんですが、ここは富士フイルム発祥の地じゃないですか。すると近くに『富士フォト現像所』という看板を掲げている所があったんです!」
お店に飛び込んだ小野さんは、「いつやめてもいいんだけど」というご主人に、
「絶対やめないでください。お客さんは連れてきますから!」
と告げたとか。フィルム現像所が減って困っているアナログカメラ愛好家やプロとのつながりを作るのも小野さんなら簡単でしょう。

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▲後輩の実家が近所にあり、後輩のお父さんが持っていた暗室の機材も譲り受けたという小野さん。「暗室のワークショップもしたいですね」

「世の中人、間違いなく人が人を呼ぶ。絶対に人しかないんです」
と、小野さんは断言します。アメリカで写真家と運命の出会いをし、ロンドンでも揉まれた小野さんだからこその実感のこもった言葉です。
実際に小野さんのこれまでの縁で、海外のアーティストも「スピニングミル」でコンサートを開きました。
「どういうわけかミュージシャンにはウケがいいんですよ。先日もうちでやったコンサートの様子をネットの動画で見たって、ノルウェーのミュージシャンから問い合わせがありましたよ。『ぜひやらせてほしい』って」
「スピニングミル」のコンサートやイベントに行くと、必ずご近所の方の姿も見えます。国内外からやってくるアーティストのコンサートや写真展を町内で楽しめるなんて贅沢ですね。

小野さんが「スピニングミル」の門戸を開いたことで、街に人の流れが生まれました。街にとって人の流れは、人間の体内に流れる血液のようなもの。人の流れがあってはじめて街は生きる。そんなことを証明しつつあるのが、小野さんの「スピニングミル」なのではないでしょうか。

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▲2年連続で音楽家の千野秀一(ダウンタウン・ブギウギバンド他で活躍)さんのコンサートが開催されました。毎年恒例になりそう!?


小野晃蔵
大阪府堺市堺区並松町45
TEL&FAX 072-242-6894
スピニングミルweb:http://www.spinningmill.info/

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