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「子ども食堂」から広がる波紋(4)

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2017年12月現在、さかい子ども食堂ネットワークに登録されている25団体の中でも、ネットワーク設立以前から活動をしている西区の「ともちゃんの子ども食堂」。芝辻友一さんは、1人の子どもの存在を知ったことから、この子ども食堂を開きました。子ども食堂を開いたことで、芝辻さんと息子の亮輔さんも、社会への見方が変わったり、偏見から解放されるような個人的変化が起きました。この変化はどうやら2人だけに収まらず、まちの人々にも及んでいたようです。(前篇
中篇では、子ども食堂開設によって起きた変化について、芝辻さんに語っていただきます。
■1枚の看板からはじまった
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▲表の看板をみて、まちの人達が手伝いを志願するようになった。

2016年の6月に「ともちゃんの子ども食堂」を芝辻さんはオープンしました。倉庫用にと思って購入した古い建物は、もともとは地域の自治会館として使用されていたものでした。鳳駅からもほど近く、通学路でもある道路に面しているのですが、芝辻さんは「ともちゃんの子ども食堂」という看板を大きく掲げることにしました。すると、さっそく反応がありました。
「表の看板を見て、まちの人が訪ねてくるようになったのです。最初は里親志望の御夫婦だったかな。お体が弱くて里親になることが叶わなかったのですが、看板を見てボランティアをしたいといって来てくださいました。1人で見るよりも、2組が見るようになると、負担は楽になります」
その夫婦だけでなく、看板を見て「ともちゃんの子ども食堂」の扉をくぐるボランティア志願者は増えてきました。こうなってくると、子どもたちが学校を出るまでは子ども食堂を続けようと芝辻さんも腹をくくります。
「思ったより理解を示してくれて協力してくれる人が多かった。色んな特技のあるすごい人たちが来てくれるようになったりして、地域とのつながりがいい形で出来るようになりました」
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▲「友ちゃんの子ども食堂」の代表者芝辻友一さん。尋ねてきたご近所の方と相談中。

地域とのつながりが生まれたことは、子どもたちのためだけでなく多くの人に良いことだと芝辻さんは言います。
「子ども食堂も色々あって、場所によっては自治会や地域ぐるみだったり、団体を作ったりトップダウン的に始まった所もあるかと思います。それはそれでいいのですが、ここではボトムアップ的にやろうと思っています。元々の思いは、近所のおっちゃん、おばちゃんが、お父ちゃん、お母ちゃんが帰ってくるまでうちでご飯食べ、というところから来ています。かもてくれる場が近所にあれば、かもてくれる大人が近所にいれば。年配の方が多くなっていますが、子ども食堂はそういう年配の方にとっての生きがいにもなってくるのです。また、いずれやってくる大震災のような災害や何かあった時にも、地域のつながりがあることは大切です。地域の人と顔見知りになっていたら、緊急時に見当たらない人の様子を見にいったり、助け合うことが出来るかもしれない。期待しすぎてはいけないでしょうけど、いろんな効果が出てくればと思っています」
芝辻さんが掲げた1枚の看板が思った以上の波紋を広げていることを、芝辻さんは実感しています。
「前を通る通勤中の人がかなり興味を持ってくれているようですし、一歩勇気のある人が覗いてくれる。まちの変化がかなり起こっているように感じます。これからは子ども食堂のことを知りたいと思う気持ちに応えて、どう理解度を深めていったら良いのかが課題です。行政も頑張ってくれているし、認知度も上がってきていますしね」
子ども食堂の認知度も高めた行政のサポートとしては、やはり「ともちゃんの子ども食堂」も最初から参加していた「さかい子ども食堂ネットワーク」があげられます。社会福祉協議会側から見た「さかい子ども食堂ネットワーク」については、こちら(【1】【2】)の記事でレポートしました。では、子ども食堂側から見た「さかい子ども食堂ネットワーク」はどのようなものなのでしょうか。


■子ども食堂ネットワークからの支援
「さかい子ども食堂ネットワーク」が立ち上がる前の年度、2016年度は子ども食堂の実態調査が行われていました。2016年6月にスタートした「ともちゃんの子ども食堂」にも、調査の協力依頼がありました。
「竹山修身市長のタウンミーティングでも、ランニングコストについてなどお話しました。何しろそれまで何もない所から子ども食堂を始めた事例がなかったので現実的に開設にどれぐらい費用がいるかもわからなかった。堺市から新たに開設する子ども食堂への支援金額も、うちでどれぐらいかかったかを参考にして決められたようですよ」
そしていざさかい子ども食堂ネットワークが立ち上がってみると、芝辻さんにとっても学ぶことが多くありました。
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▲「ともちゃんの子ども食堂」など先行事例も参考に「さかい子ども食堂ネットワーク」が作られた。

「ネットワークが始まってみると目から鱗でしたね。正直、自分で子ども食堂をやりながらも、月一回子ども食堂をすることが何の役に立つのかとも思っていたのです。でも朝ごはんを月一回出している子ども食堂があって、そこで朝ごはんを食べるという習慣が出来る。歯磨きをするという習慣が出来る。それで集中力がつく。そういう効果が期待できる。そういうことが大事なのだとお聞きして、なるほどと思いましたね」
芝辻さんも、他の子ども食堂の活動と触れることで改めて子ども食堂の価値に気づいたのです。それだけでなく、ネットワークのお陰で形のある支援も受けることができました。
「さかい子ども食堂ネットワークを通じて、オリックス宮内財団の助成を受けることで、今まで不足していた調理器具を揃えることが出来たのです。今日の調理でも使っていますよ」

■連携しながら子ども食堂に徹した活動を
さかい子ども食堂ネットワークが出来たことにより、堺市には2017年度だけで新しく18もの子ども食堂がオープンしました。「ともちゃんの子ども食堂」と同じ道沿いのごく近所に新しい子ども食堂が出来ました。それは、あの芝辻さんが子ども食堂をオープンするきっかけになった犬の散歩友達の石丸英樹さんの「さくらの庭子ども食堂」です。
「さくらの庭では学習支援もしているのです。今丁度、さくらの庭で勉強している所で、準備が終わった頃に子どもたちがやってきますよ。子どもたちの中には、勉強しても仕方がない。高校なんていけないと思っている子どもたちがいます。その諦めが怖いのです。そこをなんとかしてあげたい。学習支援も少しずつ広がっていけばと思っています」
「ともちゃんの子ども食堂」が毎月第4金曜日、「さくらの庭子ども食堂」が毎月第2金曜日。ひとつの子ども食堂が月一回のオープンでも、オープンの時期をずらしたりして互いに補っていけばきめ細かなフォローが出来ていく。そんな体制も出来てきました。
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▲ネットワークを通じてオリックス宮内財団からの助成を受け、調理器具なども充実。

「こうして少しずつやれることをやっていこうと思っていますが、この場所は子ども食堂に徹しています。あくまで不動産屋の応接スペースを月一回開放して、子ども食堂をやっているという形は崩さないようにと考えています。その中で、社会福祉協議会や自治会、民生委員、色んな所と連絡をとりながら、できるだけ情報発信をしていこうと思っています。たかが子ども食堂ですが、されど子ども食堂です。中学校にもろくろく行っていない子どもが、笑いながらご飯を食べていることもある。やっていて楽しいですよ。効果がどれだけあるかわからない。どれだけ役に立っているかわからない。自己満足でやっているだけかもしれませんが、ここに来ている2時間だけはワイワイと食事をしてくれたらいいなと思っているのです」
芝辻さんのお話を伺っているうちに、陽が落ちて外の様子もすっかり暗くなってきました。ちらほらと子どもたちも姿をあらわし、キッチンの様子もいよいよ仕上げにかかっている模様。さてさて、2017年最後の「ともちゃんの子ども食堂」がオープンします。
後篇では、賑やかな「ともちゃんの子ども食堂」の様子をお届けします。
ともちゃんの子ども食堂
堺市西区鳳中町5丁168番地5 有限会社トモ内(鳳小学校区)
毎月第4金曜日18:00~20:30
072-268-2225(有)トモ内 090-4274-6681 
子ども食堂代表芝辻友一
子ども100円 大人300円
さくらの庭子ども食堂
堺市西区鳳中町2-36-2 山埜宅(鳳小学校区)
毎月第2金曜日18:00~20:30
080-4247-6616(事前に申し込みをお願いします)
子ども100円 大人300円

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