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雑記帖 No.266

ミュージカルを作ろう!?  Spica篇(2)

劇団Little★Starの『銀河鉄道の夜』 ドレスリハーサル

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劇団Little★Starは、堺市立西文化会館ウェスティで活動するジュニアミュージカル劇団です。劇団には2つのチームがあり、2018年12月に素晴らしい舞台『Gift』を見せてくれた「teamEarth」に続いて、今度は「teamSpica」が2019年3月23日に『銀河鉄道の夜』の公演を予定しています。
大人顔負けのミュージカルが出来上がって行く過程を知りたいと、つーる・ど・堺では練習から取材させてもらうことにしました。舞台稽古の様子をレポートした前篇に引き続き、後篇はその半月後のドレスリハーサルを見学させてもらうことになりました。


■舞台衣装を身につけてリハーサル
2月22日の舞台稽古から2週間たった3月8日。今度は舞台衣装を着用したドレスリハーサルが行われました。本番までもあと2週間。あれからどれだけ完成度をあげたのか、そして本番に向けてどんな課題があるのかが見えてくるのではないでしょうか。

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▲脚本・演出の遠坂百合子先生がteamSpicaを率います。まずは発声練習。


リハーサル会場は、堺市立西文化会館のギャラリー。文字通りのギャラリーとして使われていない時は、広々とした使い勝手の良さもあって、ジュニアミュージカルの練習室として活用されることも多い部屋だそうです。
すでに室内には、着替えを済ませた子どもたちが集まっていました。脚本・演出の遠坂百合子先生、ダンス指導のSHINOBU先生、プロデューサーの古賀和恵さんに、制作スタッフもそろっています。

まず、遠坂先生からは、発声についての注意がありました。
「声を遠くまで届けるように意識して。私は色々言うと思いますが、今日はリハーサルを止まらずに続けます。本番のつもりでやってください」
さあ、遠坂先生の指示に応えることは出来るでしょうか? 発声練習をしながら体を動かして体を温めると、リハーサル開始です。


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▲オリジナルパート、オリジナルキャラクターにどんな意味があるのかを考えるのも面白い。


前回の舞台稽古は、シーンを抜き出しての練習でしたが、今回はランスルー(通し稽古)になるので、劇団Little★Star「teamSpica」版『銀河鉄道の夜』がどういう作品なのか全体像が見えてきました。

宮沢賢治原作の『銀河鉄道の夜』は、アニメや漫画、数多の舞台にもなりファンの多い作品です。暗喩に満ちた幻想的な作品なだけに、文字作品から3次元の舞台作品に移し替える際にはそのままというわけにはいきません。そして、どんな風に手を加えるのかにセンスが問われる怖い作品だともいえます。

遠坂先生は、原作の根幹部分はそのままに、大胆にキャラクターやシーンを追加していました。全体像が見えてくると、この追加パートが何故作られたのかは、理由がはっきりとあって、遠坂先生はロジカルな創作手法をとっているように思えました。
たとえば、内省的な主人公の心の機微を伝えるのに、小説ではない舞台でどうすればいいのか。戦前の作家の作品を、現代の子どもたちに自分の事として演じさせるためにはどうすればいいのか。そうした課題に応える工夫のおかげで、現代に生きる子どもや大人にも、身近な物語として受け止められるようになっていると思われました。

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▲舞台稽古でもやったダンスシーン。この2週間でどれだけレベルアップしたでしょうか!?


もちろん、そんな思惑など関係なしに、オリジナルパートも含めてエンターテイメントとして気持ちよく楽しめる作品にもなっています。10代の子どもたちが理解するには容易ではないであろう、"死"や"自己犠牲"というテーマに果敢に取り組み、演技やダンスにパフォーマンスでも精一杯の表現を試みていました。公演を観劇予定の方は、ぜひ作品世界に浸り、瑞々しいパフォーマンスを楽しんで欲しいと思います。

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▲演技パートでは、ダンスパートとは違った顔が見えます。しかし、演技もダンスもすごい密度で入っている作品です。両方こなす子どもたちの努力と才能に脱帽です。


約2時間のドレスリハーサルが終わりました。
遠坂先生が最初に言った発声はまだまだだですが、終盤になるに従って作品が一体となるうねりのようなものが出てきたように思えます。遠坂先生の評価はどうでしょうか?
「良い作品になりそうな予感はします。しかし、まだ甘く見ている人が半分ぐらいいます。千本ノックしなきゃいけないのに、10本ぐらいしかしていない。それではホームランが打てるわけがない。あと、上演時間を今より15分は短くしたい。早き替えをもっとがんばって。(台本も)これから考えてセリフを削ろうと思います」
セリフを削られてショックを受ける人もいたとしても、作品を高めるために必要なブラッシュアップならば行う。そんな芸術に対する厳しい態度で挑んでいるから、ジュニアミュージカルと銘打っていてもジュニアとは思えない作品が生まれるのでしょう。また、そこで妥協しないことも、この劇団を子どもたちの成長を促す場にしているのだと思えました。


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▲講師や仲間たちと意見をぶつけながら作品は完成度を高めていく。厳しさの中にこそある創作活動の本当の楽しさが見えたドレスリハーサルでした。



■本番へ向けて
リハーサルを終えて、制作スタッフからも話がありました。それは衣装に関することでした。
......○○ちゃんは靴下がちがう。××ちゃんは肌が見えるので長い靴下にした方がいいと思う。
といった細かな指摘です。このスタッフの方はリハーサル中ずっと全員の衣装を細かくチェックしていたのでした。後で話を伺うと、お芝居に出るメンバーのお母さんで制作スタッフもされているとのことでした。
「子どもにはママ、目が怖いって言われるんですけれど、チェックするのに必死です。我が子の出番もちゃんと見てないんですよ(笑)」
こうした裏方の制作スタッフの目に見えない支えも、劇団Little★Starのミュージカルを高いクオリティにしている一因ではないでしょうか。

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▲カムパネルラを演じる山下健吾さん。「哲学的で心理学的、抽象的で具体的」というアンビバレントな「銀河鉄道の夜」に挑みます。


さて、今回の舞台の主役の2人に、インタビューしてみましょう。ジョバンニを演じる高橋惟さんとカムパネルラを演じる山下健吾さんのお二人に話しをうかがいました。

――お名前とお芝居との出会いを教えてください。
高橋惟「高橋惟です。中学2年生です。小学6年生の時に、堺こどもミュージカルのチラシを見て応募し、遠坂先生の作品(『マーメイド』)に出演しました。その後、堺少女歌劇団にも参加しましたが、中学1年生の時に劇団Little★Starの『七人のアリス』で恋のアリスを演じました」
山下健吾「山下健吾、中学2年生です。僕はダンスが好きで、小学3年生の時に母が子ども向けの劇団を見つけてくれて2年間通いました。もともとはミュージカルや芝居に興味はなかったのですが、そこで英語のミュージカルをやって、辞めてからもずっと(通える劇団を)探していました。中学1年生の時にここのオーディションを受けて、『七人のアリス』の野良猫の兄役をやりました」
――今回お二人は主役でしたが、自分が主役を演じると知った時はどう感じましたか?
高橋「台本を渡された時に主役だったので、喜びと驚きと、ちょっとの不安がありました」
山下「僕も驚きました。自分に務まるのかとも思いました。でも苦手だった発声の強化練習もしているので、やってみようと」

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▲ジョバンニを演じる高橋惟さん。表に出せない苦しみを抱えたジョバンニは、多くの現代日本人にとっても、もう1人の自分でしょう。観客を引き込んで、見事銀河鉄道の旅へ連れて行けるでしょうか?


――『銀河鉄道の夜』という作品を知ったのは今回の舞台が初めてですか?
高橋「今回で知って、原作を読みました。本当につらい話だと思いました」
山下「図書館で借りて原作を読みました。結構難しくて、全部理解できているとはいえません。哲学的、心理学的だし、具体的で抽象的でもある」
――ご自身のシーンで一番演じがいのあるシーンはどこでしょうか?
高橋「最後のシーンです。お父さんが帰ってくるという喜びと大切な人を失ったという所を演じなければいけないので」
山下「カムパネルラは親友で死人。でも死んでいる風にやったら心情も難しいです。一番は、『お母さんは僕を許してくださるだろうか』のところです。自分はいいことをしたつもりでも、だけどこれは良かったのだろうか。親不孝じゃないのだろうかと」

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▲共に将来は俳優を目指すお二人です。


――良い作品になりそうだと遠坂先生もおっしゃっていましたが、手応えはどうですか?
高橋「自分はもっと頑張れると思います。面白い所はめっちゃ面白くして、お客さんの心を掴んでお客さんの心を動かせるようにしたいです」
山下「結構難しい作品だけど、ポスターに載っている通り、本当のしあわせとは何かを、個々の人によって思っているしあわせは違う。自分にとってのしあわせは何かを気づいて欲しいですね」
――最後にお互いのことを役者としてどう思っていますか?
山下「難しいなぁ(笑) 僕よりも経験があって、演技力は及ばない。素晴らしい役者だと思います」
高橋「セリフ覚えが早くて、家で頑張ってるなって思います(笑)」
――ありがとうございました。


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▲「子どもたちそれぞれの個性を大事にしたい」と遠坂先生。


主演の2人は高い意気込みで公演に挑もうとしています。リハーサル後に厳しいこともおっしゃっていた遠坂先生にもコメントをもらいました。
遠坂「人によって理解力が違うので難しいですね。芸能界ではないし(厳しく言う一方ではいけない)。怒られたから頑張るじゃなくて、いいものを表現したいですね」

あと2週間で、遠坂先生は妥協無く作品を仕上げていくでしょう。この日のランスルーから2週間で子どもたちがどんな成長を見せ、どんな舞台を見せてくれるのか楽しみです。


【問い合わせ】
FSアカデミー内Little★Star
電話:072-201-0552

【撮影場所】
堺市立西文化会館(ウェスティ)
住所:堺市西区鳳東町6−600
電話:072-275-0120
web:http://www.westy-ogbc.jp/


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