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雑記帖 No.259

"トリオいろはに"のまちなかコンサート(2)

子どもたちに良い音楽を聞かせたい

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3月9日に東文化会館フラットホールで「オトノハコンサート」の公演を控えているチェロ奏者藤原士郎さん率いる"トリオいろはに"は、プレコンサートとして堺市博物館で「まちなかコンサート」を開催しました。その公演の直前、リハーサルを終えたチェロの藤原士郎さん、ピアノの井阪あゆみさん、クラリネットの中本吉啓さんの3人にインタビューさせていただいたところ、トリオ結成秘話をはじめ、3人の仲の良さがはしばしから溢れるお話を伺うことが出来ました。(前篇
今回の中篇でも、ちょっとシリアスな、でもはじけるように軽快で絶妙な3人のアンサンブルトークを引き続きお楽しみください。


■子ども禁止コンサートを禁止に
――井阪さんもピアノの英才教育を授けたご両親から、音楽への道に進むことを反対されたとお話されましたが、音楽のどういうところが難しいのでしょうか?
藤原「僕はいくら練習しても本番というものが、うまくいくかどうかわからないのが怖いね。なにか勝負しているみたいで。相撲とかでもいくら練習しても負ける時は負ける。それと生活上の苦しさ」
井阪「それがやっぱり一番ですね。水物なところ」
――世界の音楽界を知る皆さんですが、日本の状況は違いますか?
中本「だいぶ裾野が広がったというか、ママさんコーラスなどで、みんな耳は出来てきているので、こういうコンサートの機会を与えていただけるとありがたいですね。あとはSNS、Facebookを利用して宣伝するなど、今までと違う手段が発達してきているので、それで成功している方はいっぱいいますよ」

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▲クラリネット奏者の中本吉啓さん。3人をまとめているのは実は中本さん!?


藤原「あと、子どもたちにね。やっぱり良い音楽を聴かせたいな。ずっとそう思っている。すごく思っています」
中本「子ども禁止のコンサートは止めた方がいい」
井阪「うんうんうんうん」
中本「2才ぐらいで聴かさないとダメです」
藤原「私もやったことがあるのですけれど、子どもたちっていうのはね、聴かすとわかるんですよ。そんなしょっちゅうじゃなくていいから」
井阪「本当に良い音楽を聴いたら、子どもさんってね、おとなしいんですよ。変な音楽を聴くからうるさくなる。私の飼っている犬も、下手な音楽を聴かせたら機嫌が悪くなるけれど、良い音楽を聴かせるとすやすや寝るんですよね。子どもさんも直感で音楽を聴ける時から良い音楽を聴かせてあげるべきです」
藤原「こちら側の姿勢にもよると思う。向き合ってちゃんと良いものを聴かせたいと思うもの、聴かせてあげたいと思うものを聴かしたら、やっぱりちゃんと分かってくれると思うんです」
井阪「ウィーンとかに行ったら、オペラとかでも、ちっちゃい子どもさんが普通にいるんですよ。学校から帰ってきて、平日の夕方から、今日はオペラいこか、みたいな感じで行っているんですけれど、日本だとそこ(オペラ)は別世界みたい。すごく敷居が高いじゃないですか。そうすると子どもを避けるし、子どもがいないのが心地いい、みたいな錯覚があるけれど、それはね、絶対違うと思う」
藤原「僕は音楽を遅くにはじめたので、コンプレックスがあってね。今でも音楽会にいくと敷居が高い。雰囲気が威圧的で、早く帰りたいなって(笑) なんかもうちょっとオープンな空間でやれればいいな」
中本「ここもそうですけれど、今では博物館でも積極的にコンサートをやられています。10年前とはえらい違いですけれど、もう少しこういう機会が欲しいですね」

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▲堺市博物館のスタインウェイピアノ。このピアノにももっと活躍の場を与えたいですね。


――未就学児ご遠慮くださいというコンサートは多いけれど、みなさんの立場からすると?
井阪「分かるんですけれどね、ゆいはることもね。すごいストイックにやってきたことを、目の前で動かれたりしたら、うって思うこともあります。けれど、そこで閉ざしてしまうのはどうなんやろうって。逆にそうすることで行く人も、すごい特別な感じで行ってしまう。そのあたりが難しいけれど」
――(企画した)財団(堺市文化振興財団)としては、どうですか? (職員の)土井さん?
土井「財団でも今、未就学児に音楽をっていう、アーティストを保育園などに派遣することを一所懸命にやっています。どうしても園側からは、ポップな音楽、園児が好きなお子様向けの歌を期待されがちなのですが、そこで一曲本格的なものをやる方が、子どもたちがはっとしてびっくりします。ファーストインプレッションがすごく大事だと思います。そういう所から文化を変えていかないといけないと思います」
――今日のまちなかコンサートも子どもは大丈夫でしたね。少しずつそういうコンサートを増えていけばいいですね。


■堺クラシックでスタンプラリーを

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▲インタビュー中のトークも息ぴったりの"トリオいろはに"の3人。


――では、音楽を演奏する場所としての堺市はどんな印象ですか?
中本「アマチュアオーケストラの世界でも、昔は昔は大和川を越えるとぺんぺん草も生えないと言われたものですが、40何年前ですが亡くなられた稲本(耕一)さんが作られたウインドオーケストラが堺フィルに発展しましたし、その後に和泉オケが出来て、河内長野にも去年できました。かなりそういう下地は出来ているので、やり方によってはどんどん伸びていくのではないかと思っております」
土井「まだまだ発展途上」
中本「発展途上やけど、もうすぐフェニーチェ堺もできますしね」
藤原「現にこうしてお仕事をいただいているからありがたい。もうちょっと、駅前とかどこでも東京みたいに切符制で、どこでも演奏できるとか、したらいいのに。ストリートでね。大阪ダメですよね?」
井阪「大阪クラシックでは、御堂筋沿いで色んなお店とかで演奏してますよね、あんなんを堺で、たとえばチンチン電車のある(通りの)古民家とか、ああいうところで堺クラシックなんて試みも、楽しいんじゃないかなと思います」
藤原「室内楽とかでいいと思うし」
土井「ホールを拠点に(堺市立町家歴史館)山口家住宅とかを使うのもいいですね」
井阪「そうですね。スタンプラリーでまちのコンサート会場を巡ると楽しそう」

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▲堺区にある堺市立町家歴史館山口家住宅は、コンサート会場として利用されることも。江戸時代に建造された山口家住宅の建材は乾燥しきっており、他にない音響効果があるとか。


――堺は市民主催のイベントが多いので、商店街のお祭りなんかで本格的な音楽家の音楽が聴けると市民もびっくりするでしょうね。
中本「(稲本耕一さんの次男)稲本(渡)さんなんかが、よく頑張っておられますよね」
――そうですね。色んなイベントにすごく腰軽く出かけておられますよね。
藤原「中百舌鳥の(駅前)空間なんかいいよね。中百舌鳥の駅前の地下鉄と南海の間とかね」
中本「屋根がありますからね。反響もありますし」
――堺市には、まだまだ沢山開拓の余地がありそうですね。


■自然体で聴きに来て
――さてそれでもクラシックコンサートは敷居が高いんじゃないかというイメージがあります。そんな人はどこをポイントに聴きにきたらいいのでしょうか?
井阪「それはね。ポイントって、それは私たちが追求するべきことであって、お客様はそれをどう感じるか、お客様にどう感じていただけるかやと思うんですよね。だから、あえて逆にお客様は気楽に」
藤原「何も考えずにね」
井阪「そう何も考えずに、たとえばそこに座って何色の景色が見えるか、それがそれぞれに違った景色でいいと思うんです。あたしたちプレイヤーは違いますよ。あたしがいつもポリシーにしているのは作曲家が何を考えて、何を書いたかってことを、再現することやと私はえらそうに思っていて、それを一所懸命再現するんですけれど、それを聴いてお客様がどうとらえるかは、そうじゃないといけないってことは絶対ないと思うんです。だからあえて、何も予備知識を入れずに来ていただいて、感じたことを形なり、色なりなんでもいいんですけど感じる。それが素直でいいんじゃないかと思うんです」
藤原「こっちからこういうもんだよっていうのは、違うんじゃないかなと思うね。どんなにファンタジーになってくれてもいいから、その人の感性で受け取ってもらって、その人の人生なんだから」
中本「(オトノハでは)演奏者がソプラノとチェロとピアノとクラリネットと四種類の音色がありますね。それを聞き比べるだけでも面白いかなと。それに、私の方がうまいっていう人もおるはずですから」
藤原「(笑)そらおるかもしれない」
井阪「山ほどおるかも(笑)」
藤原「ちゃんとやれって(笑)」
井阪「大変やなって思って帰ってくれてもいいし(笑)」

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▲堺市文化振興財団の土井さんと一緒に記念撮影。


――なんにせよ、真っ白な気持ちできくのがいいということですね。
井阪「その方が意外と、さっきのお子さんの話じゃないんですけれど、届くんですよね」
藤原「こっちも楽しいしね。限定しない方が」
井阪「だからまぁ、プログラムも、入り口でどんな曲をするんやろうとか、どんな人が弾くんやろうとかを知るために必要かもしれないですけれど、入った時に一所懸命プログラムを読むというよりは、天井見ててもらっていてもいいわけだし、真っ白っていうか何も考えずに」
藤原「楽しんでもらえたらいい」
井阪「心構えなく来ていただける方がいいと私は思います。演奏者はそんなことしたらいけませんけど」


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▲本番前に念入りのリハーサルを行う井阪さん。


――一方で、今日のプログラムにも演奏者の意図はあるわけですよね。
井阪「3人で組ませてもらってはじめてやった曲が『街の歌』で、何かあるときに『街の歌』をひょこっとやってきました。私たちには持ち曲が何曲かあるんですけれど、その中で、ここって時、さあやろかって出てくるのが『街の歌』なんです」
藤原「彼(中本さん)と知り合ったのが、30年程前で、その頃からやっている。とにかくはじめの結びつきを作ってくれた曲なんです」
中本「そうですね。若いときの演奏と今の演奏とはまた違うので」
藤原「毎回やっぱり違うね」
中本「面白いですよ。違いを聴いていただければ」
井阪「いつもそばにある曲なんです」
中本「毎回毎回違いますしね」
――そうか。皆さんもやっぱり音楽家として成長する。
井阪「そうです!」
――音も変わっていくんですね。
藤原「そうじゃないと面白くないしね」
中本「面白くないですね」
井阪「ライブの良さはそれにある」
中本「マイクを使わず生の音を体で感じる」
藤原「こんなもんだからこうだって音を出すんじゃつまらないので、今度やるときはこうと見直すんじゃないですか。ちょっとでもいいものが出来たらと」
――では、今日も、今日でしかない『街の歌』が聴けるんですね。楽しみにしています。お話ありがとうございました。


3人3様の個性が溢れたインタビュー、いかがだったでしょうか。次回、後篇では、本業の音楽家としても息ぴったりの所、いよいよ「まちなかコンサート」のライブレポートをお届けします。


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音の葉、音の羽。自然と人と、人と音楽と。

第8回堺市新人演奏会の出演を経て、様々な音楽活動を展開しながら関西にて長く後進の指導に携わり、大阪府より教育功労賞を授与された経歴を持つ藤原士郎。チェロの音色で紡ぐ、自然と人をつなぐ音楽をお届けします。

また、ゲストに第47回堺市新人演奏会優秀賞を受賞した板橋亜胡さん(ソプラノ)をお迎えします。堺市新人演奏会に出演した音楽家同士、先輩・後輩の交流もお楽しみください。

日時:2019年3月9日(土) 17時開演 16:30開場
会場 :堺市東文化会館フラットホール
入場料:
一般 1,500円(当日 2,000円)
高校生以下 700円(当日 1,200円)
※全席自由席
※就学前のお子様の入場はご遠慮ください。





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