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雑記帖 No.255

教育普及展「むかしの暮らし」と博物館の役割(2)

むかし遊びと画家が遺したむかしの堺

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堺市博物館で開催中(2019年3月3日まで)の『むかしの暮らし-ふしぎな道具の世界-』は、堺市の昭和以前の生活を取り上げ、今では見ることの出来なくなった古い道具の展示を行っています。この展覧会は、教育普及展ということもあり、説明文も大きな字でわかりやすく書くなどの配慮がなされています。1月27日には学芸員の矢内一磨さんによる展示品解説も行われ、記事の前篇ではその様子をレポートしました。

今回の後篇では、展示のもうひとつの目玉ともいえる画家岸谷勢蔵さんの絵の展示と、同日に開催された体験学習会「むかしの遊びを体験してみよう」をレポートします。


■岸谷勢蔵さんの絵で蘇る昔の堺

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▲展覧会には多くの岸谷勢蔵の絵が展示されている。


岸谷勢蔵は、今の堺区大町東1丁にあった木綿卸問屋の家に生まれた画家です。与謝野晶子よりは21才年下の1899年生まれ。
「岸谷勢蔵は風景画だけでなく、当時の生活を残しています。明治時代を知る先輩たちから、民俗学的なききとりもしています。彼は堺民俗学会のメンバーにもなっていたのです」
岸谷勢蔵の絵が、学術的にも非常に価値のある絵であることがわかります。前篇でも述べたように、堺の小さな家では、かまどは土間ではなく板間に置いていたという大発見も、岸谷勢蔵の絵からわかったことでした。

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▲岸谷勢蔵の絵のおかげで、堺の一般家庭では、竈が板の間に置かれていたことがわかった。


岸谷勢蔵は、堺市から依頼されて、戦争末期1944年に建物疎開を行う前の宿院の景観を記録として残しています。堺大空襲でまちが壊滅したのは翌1945年7月10日ですから、これは戦前の堺を知る貴重な記録になっています。
大町にあった岸谷勢蔵の生家も「大紅蓮にのまれて」焼失していますが、1949年にかつての生家とそこで行われていた暮らしを代表作『生家』で描いています。
「これを見ると堺の12ヶ月の風俗がわかります。たとえば1月にはお雑煮にお金を一枚入れる習慣があって、それにあたった人は縁起がいいとか」
3月のひな祭りに、5月の節句や、夏の大掃除、そして住吉大社の御渡では、南蛮行列の様子も克明に描いています。
「行列の中に(檻に入れられた)虎もいます。動物園から借りてきたみたいですね。鳥(クジャクか?)は大浜公園で飼われていたもののようです」
今でもお祭り大好きな堺市民ですが、かなり凝った南蛮衣装をまとい虎まで引っ張り出してくる戦前の堺市民の力の入れようを見ていると、まだまだだなぁと謙虚(?)な気持ちにもなってみたり......。

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▲岸谷勢蔵は、堺の12ヶ月の風俗も絵で遺した。


これら岸谷勢蔵の絵は、20世紀前半の堺を知る上で貴重な資料、歴史遺産といっていいものでしょう。今回の展覧会では、大きなスペースをとって岸谷勢蔵の絵が展示されています。当時の町の様子を撮った写真も合わせて展示されており、様々な情報から私たちは当時の堺について思いを馳せる事が出来る展示になっています。


■フォーラム型の博物館へ

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▲地階ホールにはテーブルが並べられ、ボランティアが昔遊びを指導していた。


この日は、博物館の地階ホールで、体験学習会「むかしの遊びを体験してみよう」というイベントも開催されていました。

矢内さんと一緒に地階ホールへ行くと、子どもと大人が詰めかけ、古いオルガンの演奏も賑やかで小さなお祭りのようです。
各テーブルやスペースには子どもたちと指導するボランティアさんがいて、おりがみ遊びや竹とんぼづくりなどむかしの遊びをしています。中にはわら縄作りのコーナーもあり、普通では体験できないワークショップになっています。

「観光ボランティアさんとは別に、博物館のボランティアさんが70名ほど在籍してくださっています。こんなイベントは到底私たちだけではできません。ボランティアさんがいてこそ出来るイベントです」
と矢内さんは言います。子どもたちに楽しそうに指導するボランティアさんの姿を見ていると、子どもたちだけでなく、ボランティアの大人にとってもやりがいのあるイベントになっているようです。

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▲様々な企画もボランティアがいてこそ運営が可能。


この体験学習会もそうですが、展示室での展示品も、実際に観覧者が手に触れ、触ったり動かしたりして楽しむことが出来るようになっていました。これはやはり意図してのことではないでしょうか。
「そうです。かつては、どこの博物館も国宝を所有している国立博物館のような博物館を目指そうとしていました。しかし、今はそういう方向性は国立博物館などに任せてしまって、フォーラム型(人が集まり未知なるものと出会い議論が始まる場)の博物館を目指そうとしている所が増えています。学芸員も論文を発表することばかりというのではなく、市民との活動を重視しています」
以前、新しく館長になられた須藤健一館長にもお話を伺いましたが、堺市博物館は、市民が文化学習する場として活用できるフォーラム型の博物館へと進化しようとしているのです。

今回紹介した、展示品解説(今度は主に一般向け)と体験学習会は、2019年2月24日にも行われるそうです。興味を持たれた方はぜひ堺市博物館を訪れてみてくださいね。



教育普及展「むかしの暮らし-ふしぎな道具の世界ー」
会期:平成31年1月8日(火曜)~平成31年3月3日(日曜)まで
休館日:月曜日(祝休日は開館)(1月21・28日、2月4・18・25日)

関連行事
展示品解説
日時:平成31年2月24日(日曜)(主に一般対象) 午後2時から30分程度
講師:堺市博物館学芸員
会場:堺市博物館1階展示場 企画展コーナー
参加費:観覧料が必要です。
申込方法:事前申込み不要、当日直接会場へお越しください。

体験学習会「むかしの遊びを体験してみよう」
日時:平成31年2月24日(日曜) 午後1時から4時まで
会場:堺市博物館地階ホールなど
定員:小学生以上 50人
参加費:無料(但し、展示場の観覧には観覧料が必要です。)
参加方法:事前申込み不要、当日来館の方を先着順で受け付けます。

堺市博物館
堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 大仙公園内
072-245-6201

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