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雑記帖 No.246

20年後西区を芸術のまちに~堺市立西文化会館ウェスティ(1)

芸術が地域の問題を解決していく

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※ミュージカル『GIFT CONCLUSION』より 画像提供:堺市立西文化会館


会館のロビーには、親子連れが目立ちました。きっと今日舞台にあがる子供たちの家族や友達家族ではないでしょうか。ここは、ウェスティの愛称で知られる、堺市西文化会館のウェスティホール。
「ジュニアミュージカル劇団Little★Star」は地元のFSアカデミーと共にウェスティ自ら2017年6月からオーディションを行い立ち上げた劇団で、この日は本公演が前売りソールドアウトになったことを受けて、公開ゲネプロ(本番通りの最終リハーサルを公開するもの)が急遽開催されたのでした。そのゲネプロにも沢山のお客様がいらしてます。出来たばかりの劇団が、こんなにも人気が出た理由はなんなのでしょうか?

堺市には七つの区があり、それぞれの区に公共の文化施設がありますが、施設の違いだけでなく、運営団体の違いもあって、それぞれの個性があるようです。ウェスティは、この「ジュニアミュージカル劇団Little★Star」など、市民の劇団や音楽グループ、イベントをプロデュースしており、ただ場所を貸すだけの会館とはひと味違う活動をされているようです。
そんなウェスティの秘密に迫るべく直撃インタビューを試みてみました。


■地域の文化振興を目的とした会館だから
JR阪和線「鳳」駅からなだらかな坂を下り大通りに突き当たって左折。信号一つ先に、西区役所と文化会館が一体になった建物があります。この1階にウェスティホールがあり、6階に会館事務所があります。
来館を告げ、事務所の応接間で待っていると、大きなファイルを抱えた男性が現れました。館長の益田利彦さんです。
益田館長に「ジュニアミュージカル劇団Little★Star」設立の経緯から尋ねてみました。

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▲堺市立西文化会館の館長、益田利彦さん。


――なぜジュニアのミュージカル劇団を設立されたのでしょうか。
益田「まずウェスティは地域の文化振興を目的とした文化会館ですので、地域住民の継続的な芸術・文化活動に繋がるような事業が必要だと考えており、有名なプログラムをパッケージとして持ってくるだけではダメだという考えがあったのです。そんな時、子どものためのカルチャースクールである『FSアカデミー鳳校』の代表、古賀和恵さんという方と知り合ってご協力いただくことができて、子どもたちをプロの芸術家が指導するジュニアミュージカル劇団を作って、ウェスティで公演しようということになったのです。その後、古賀さんがプロデューサーとして中心的に活動いただき、さらに様々な方のお力添えをいただき、設立できました。設立後の運営においては、たくさんの保護者のご協力もいただいています」
――所属しているのは地域の子どもたちだけなのですか?
益田「昨年(2017年)の6月から告知をはじめて、小学校1年生から18才までの子どもたちを募集したところ、小学校1年生から高校3年生まで85名の子どもたちが、8ヶ月のレッスンを経て2つの舞台に挑みました。堺市の子どもたちが中心ですが、中には滋賀や神戸からの応募もあったんですよ」
――そんな遠くから!!
益田「本作の脚本・演出をされる方の指導をぜひ受けたいからという子もいましたし、逆に演技やダンスがまったく未経験という子もいました」

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▲ミュージカル『GIFT CONCLUSION』より。※画像提供:堺市立西文化会館


「ジュニアミュージカル劇団Little★Star」は「team earth」と「team Spica」の2チームがあり、2018年の4月にそれぞれの1st公演「ONE STAR」と「7人のアリス」を上演しました。そして、2018年12月1日は、「team earth」の第2回公演「GIFT CONCLUSION」を上演。2回公演の前売り券はいち早く完売。急遽ゲネプロ(本番通りの最終リハーサルを公開するもの)を公開ゲネプロとし、公演チケットが販売されるほどの人気となったのでした。


■芸術で地域の問題を解決していく
こうして「ジュニアミュージカル劇団Little★Star」は順調な滑り出しをみせていますが、その背景には「地域の文化振興のため」というシンプルで揺るぎないコンセプトがあります。

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▲ウェスティホール。舞台上から客席を見る風景が一番好きだという益田館長。


益田「日本では文化芸術は一部の愛好家のためのものと思われがちですが、それは違うと思うのです。文化芸術には社会包摂的な側面があり、地域全部のことを解決するような力があると思うのです。阪神大震災の時に助かった人たちの中には、地域のコミュニティとのつながりがあったから、がれきの中から助けられた人たちが数多くいます。今後、南海トラフ地震などの震災に備える必要もありますし、コミュニティの再生を文化芸術を通じて行うことが出来るのではないかと思います」
――防災という観点からもコミュニティの再生が必要であるというのは、たとえば子ども食堂のような地域の活動をされている方からも少なからずききますね。
益田「4月のミュージカルに子どもが出演した親御さんの感想では、それまで引っ込み思案だった子どもが前に出るようになったり、積極的になったという声がありました。地域コミュニティの再生以外にも地域が抱える問題、例えば、不登校の子、なかなか学校に行けない子、そういう子どもたちにも文化芸術が及ぼす力があるはずです」


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▲ミュージカル『GIFT CONCLUSION』より。すべてのキャラクターに名前と個性がある所が素晴らしかった。※画像提供:堺市立西文化会館。


――益田さんご自身は、やはり小さい頃から文化芸術に親しむ子どもだったのですか?
益田「いえ、実はずっと体育会系だったのです。それが仕事で芸術に触れるようになって素晴らしいと感じるようになりました。もし、子どもの頃にこういう世界があると知っていたら、違った選択をした可能性がある。違わなかったかもしれないけれど、触れることで子どもの選択の幅が広がることが大切です。子どもたちが自分たちでどうすることもできない環境(居住するエリア、ご家庭の状況など)において、将来の選択肢の幅が変わるようなことは、できるだけ無くしていければと思っています。地域の子どもたちが何の気兼ねもすることなくウェスティで芸術に触れる機会が提供できればとても素晴らしいことだと思っています。そういう考えもあって特に子どもを対象にする事業は、安価な金額設定にしています。原資に限りがあるので、簡単には出来ないのですが、本当は子どもは全て無料で参加できるような施設にしたいと思っています。最近は、地域の企業にも協力してもらえないかと考えています」
――それはいいですね。地域の企業も一緒になって地域の子どもを支えるようになります。きっと協力してくれる企業も現れるのでは?
益田「そうですか? 私は思うのです。20年後、ウェスティで文化や芸術に触れた子が大きくなって、その子どもがウェスティで文化や芸術に触れたりして、文化芸術体験をした人たちの笑顔があふれるまちにしたい。もちろん、税金でやっていることですから、子どもたちだけでなく、いろんな年齢や性別の人、土日はダメだけど平日の勤め帰りなら参加できる人とか、色んな人に向けて気を配りながら、色んな種類の事業を開催して、鳳や西区に文化芸術が根付いていくことをしていきたいと考えています」

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▲公演中のロビーではキャスト紹介のボードがあり、注目を集めていた。


益田さんが言うとおり、ウェスティで開催しているプログラムの中には、ホールでやるコンサートやミュージカルだけでなく、ヨガ教室や歴史セミナーまで幅広くあります。
こうしたプログラムを組むことが出来るのには、どうやらまだまだ秘密がありそうです。実は堺市立西文化会館の管理運営を行っているのは、「大阪ガスビジネスクリエイト」という民間企業で、益田館長ももちろんその一員なのです。
後篇では会館運営の秘密にも迫ります。


堺市立西文化会館ウェスティ
住所:堺市西区鳳東町6丁600
電話:072-275-0120
















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