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雑記帖 No.238

堺セーフシティ・プログラム(1)

誰もが安全に暮らせるまちに

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白い等身大の人型ボード......「メッセンジャー」。
それは犯罪被害者と同じ背丈につくられたアート。「生命(いのち)のメッセージ」展で展示された「メッセンジャー」たちは、語らずして多くを私たちに伝えてくれるのでした。
このアートの作者は、造形作家の鈴木共子さん。2000年に飲酒・無免許・無保険・無車検の暴走車によって1人息子の鈴木零さんを失ったことをきっかけに、あまりにも生命が軽く扱われていることに驚き、署名活動と一緒にこの「生命のメッセージ」展の巡回展示を始めたのです。その後押しもあって翌年には「危険運転致死傷罪」が異例の速さで新設されることになりました。

しかし日本では、犯罪被害者や被害者家族が置き去りにされがちで、未だに多くの問題を残したままです。「生命(いのち)のメッセージ」展は、160命のメッセンジャーがいて、巡回展示は今も続いています。

2018年8月に堺市のイオンモール堺鉄砲町で開催されたのは、メッセンジャーの一部が展示されたミニ開催でした。
その会場で「生命(いのち)のメッセージ」展が生まれた経緯や意義などをうかがっているうちに、堺市では市役所ロビーや大阪府立大学などで頻繁に「生命(いのち)のメッセージ」展を開催していることを知りました。
なぜ、堺市で熱心な取り組みがなされているのか。会場でスタッフをしていた堺市役所の方に尋ねたところ、その背景には「堺セーフシティ・プログラム」という堺市の取り組みがあることがわかりました。
果たして「堺セーフシティ・プログラム」とはどのようなものなのか。後日堺市役所を訪ねました。


■先進国では2番目に参加

堺市役所では、市民協働課の本池茂課長と上村将治主査、男女共同参画推進課の植松あけみ課長と藤井謙治課長補佐の2課4名の方が待っていました。「堺セーフシティ・プログラム」はこの2つの課が中心に担当しているのだそうです。

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▲堺市役所前には、「人権擁護宣言都市 堺市」と掲げられている。


――堺セーフシティ・プログラムとは一体なんなのでしょう?
植松「UNWomen(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)による『セーフシティ―ズ・グローバル・イニシアティブ(SCGI女性や女児への暴力がないセーフシティ世界計画)』に、堺市の竹山修身市長は2013年12月に参加を表明しました。これは先進国ではアイルランドのダブリンに続いて2番目、日本国内で最初です」
――ようするにセーフシティというのは、女性や女児が安全に暮らせるまちということですね。
植松「そうです。ただ堺市では女児に限定せずに子どもとし、すべての女性と子どもに対する性暴力などを防止・減少させる取り組みを行っています」
――現在、世界で「セーフシティ・プログラム」に参加しているのは、何都市ぐらいあるのですか?
植松「平成30年(2018年)4月の段階で28都市になります」

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▲市民協働課の上村将治さん。


――「セーフシティ・プログラム」への参加を竹山市長が表明したとのことですが、これは竹山市政になってこうした問題が重視されるようになったということでしょうか?
植松「もともと堺市では竹山市政以前から、男女共同参画に対する長い取り組みの歴史があります。約70年の歴史がある堺市女性団体協議会が市民主体の運動を推進してきましたし、行政の男女共同参画社会への取り組みも30年以上の実績があります。全国初の『男女共同参画都市宣言』(1995年)、『堺市男女平等社会の形成の推進に関する条例』制定(2002年)や、その他にも様々な取り組みがなされてきました」
――なるほど。一朝一夕の話ではなく、長い取り組みの必然の結果として、堺市はセーフシティ・プログラムへの参加を表明したということなのですね。
植松「はい。ですので、それだけの実績がある堺市がセーフシティ・プログラムに参加することの意義や期待される役割は大きいと考えています」


■セーフシティへの取り組み

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▲男女共同参画推進課の藤井謙治さん。


植松「2013年に参加を表明したあと、2015年3月には様々な分野の専門家の協力を得てスコーピング・スタディを行って、現状の調査分析をし課題の絞り込みを行いました。そして2015年度に5年後に堺セーフシティを実現させるべく、プログラムデザインを策定し、各種取組を開始しました」
――具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
藤井「行政だけではなく、地域の方、コミュニティの方と一緒にやっていこうという方針で、たとえば見守り活動を行っています」
――見守り活動というと、どのようなものですか?
藤井「ひとつは生活環境の改善です。街頭防犯カメラや防犯灯等の整備をおこない設置台数を増やしています。またコンビニエンスストアと連携し、成人向け雑誌を青少年に見せない環境づくりの取り組みを行っています」
――見せない取り組みというと?
藤井「成人向け雑誌の中央部を色付きのフィルムで包装を行うなどですね」
――見たことがあります。そういう配慮がされているコンビニエンスストア。
上村「堺市では、コンビニエンスストアの成人向け雑誌について全国を対象としたインターネットアンケートを実施しました」

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▲青色防犯パトロールのパトロールカー。


藤井「次にパトロール活動があります。青色防犯パトロールはご存じですか?」
――青色灯をつけたパトロールカーのことですか? そういえば見かけますね。あれは市役所の方が乗っているのですか?
藤井「いえ。青色防犯パトロールは地域の方が運営しているのです」
――いつ頃からあるものなのですか?
上村「平成16年11月(2004年)から、青色灯をつけてパトロールが可能になりました。堺市では古くから自治会などで防犯・防災につとめ、地域の方が自分たちのまちを自分たちで守ろうとする取り組みがあります。そうした活動に対して堺市は青色灯のパトロールカーを譲渡するようにしたのです。行政としては区役所の自治推進課が中心になって実施しており、市民協働課は総合調整を行っています」
本池「青色パトロールだけでなく、NPO法人と協働で、電飾を施した専用自転車によるパトロール活動『さかい提灯部隊』もあります」
――自転車というのも堺らしいですが、行政だけでなく市民と協働して、というのもポイントなのですね。
本池「そうです。行政や警察だけでなく、多くの市民や各種団体が参画することが、堺セーフシティ・プログラムの基本ルールのひとつなのです」

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▲電飾を施した専用自転車による『さかい提灯部隊』。


こうして話を聞くと、自由自治都市から始まる長い住民自治の伝統に、行政が世界の潮流をうまく擦り合わせようとしている様子が見えてきました。行政と市民が協働で取り組むことによって、防犯の意識がこれまで以上に市民の生活の中にも浸透していくという効果もありそうです。
そして、意識改革という意味では、非常に重要な取り組みを「堺セーフシティ・プログラム」では行っているようです。後篇では、被害者支援という課題について取り上げます。



堺市役所 
住所:堺市堺区南瓦町3番1号 

市民協働課
堺市役所高層館3階
電話:072-228-7405

男女共同参画推進課
堺市役所高層館6階
電話:072-228-7408

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