| トップページ |
雑記帖 No.226

SKP50第三弾"怪の会"(1)

語り芸の”怪”

薩摩琵琶

■語りの恐怖

竹房さん
▲先陣を切るのはTVなどでお馴染み、ナレーターの竹房敦司(「本読みの時間」)さん。


聴衆はすっかりと、恐ろしい語り口に引き込まれていました。
間違って建ててしまった家に起きた怪異。ふすまを開けても開けても見知らぬ部屋が現れるばかり。迷うはずのない家で迷う恐怖を、登場人物と一緒になって聴衆は体感していたのでした。

人類が言葉を生み出した頃から、きっと「語り部」はいたことでしょう。
遠い昔。まだ電気なんてなかった頃、一日の労働を終え、たき火や囲炉裏を囲み、「語り部」の語る神話や伝承、そして【怪談】に聞き入ったことでしょう。


竹房さん

この日、堺能楽堂は『怪』に満ちた1日となりました。
まずは、「本読みの時間」の一員で、ナレーターとして活躍されている竹房敦司さんによる怪談の朗読。台本は、宮部みゆきさんの『三島屋変調百物語』シリーズから。
ファンの多い宮部さんの作品ですから、この観客の中にもすでに作品を読んだことのある方もいたかもしれません。しかし、朗読による怪談は一味違ったものだったのではないでしょうか。


■琵琶は語る

さて、2018年8月14日、堺能楽堂で行われていたのは、西日本集中豪雨災害の影響で振替公演となった「堺能楽会館開館50周年記念プロジェクトSKP50」の第3弾「怪の会」です。
このプロジェクトの第1弾、第2弾をこれまでレポートしてきました。
SKP50は、毎回違うテーマで、狂言を軸に朗読や民族音楽や舞踊などとのコラボで、他にはないプログラムを提供してきました。
今回のテーマは、日本の恐怖たっぷりの『怪』。題して「怪の会」です。

瀬戸さん
▲鶴田流薩摩琵琶の瀬戸一平さん。


冒頭の竹房さん朗読でたっぷり恐怖の家を彷徨った次の演目は薩摩琵琶です。時代も江戸時代から源平合戦の時代へさかのぼります。
鶴田流薩摩琵琶の瀬戸一平さんが演奏するのは平家物語のクライマックス『壇の浦』。

まず、最初に驚かされたのは、やはり薩摩琵琶の不思議な音色でしょう。
三味線でもギターでもない、金属的な音の響き。それだけではない、バチで強くたたく音、こすりあげる音。想像もしなかったような、多彩な音色が一つの楽器から生み出されます。琵琶というと、シルクロードを越えてやってきた古い楽器。まさかこんなにも一台で何役もこなすような、多機能な楽器だとは思ってもみませんでした。


瀬戸さん2

そしてもうひとつ気づいたのは、物語の語りと演奏が相互に響きあい、増幅しあって一体となったパフォーマンスになっていること。
「壇の浦」は平氏と源氏の長い戦いのクライマックス。激しい戦闘があり、敗北を悟った平氏の英雄たちが死を選び、幼い天皇が入水する。バトルアクションから悲劇まで、ストーリーに起伏のある一幕です。瀬戸さんが語るそのシーンに応じて、琵琶は違う音楽を奏でます。
1人何役もこなす琵琶という楽器があるからこそ、語り手の心を音と合わす、語りと音楽が一体となったこのパフォーマンスが成立するのでしょう。


泉さん
▲口上いいは、ベテラン俳優の泉祐介さん。演目と演目の間に登場します。


源平の悲劇を語り、琵琶の音の残響も消えぬまに、能舞台に1人の男性が現れました。口上いいの泉祐介さんです。
今回は各演目の冒頭に、口上いいとして俳優の泉さんが紋付き袴で登場するのです。
泉さんが語るのは、演目を話のタネにしたちょっとした小話。達者なおしゃべりで、観客を笑わせ、和ませまて、気分がちょっと変わった所で、次の「怪」が登場します。


■語り芸の恐怖

「本読みの時間」
▲「本読みの時間」竹房敦司さん、甲斐祐子さん、「カヨコの大発明」有元はるかさん、三人の朗読。


次に能舞台に姿を現したのは、「本読みの時間」の甲斐祐子さんと竹房敦司さんと、有元はるか(カヨコの大発明)さんの3人でした。
再び朗読による怪談の語りがはじまるのです。今度の台本も、宮部みゆきさんの『三島屋変調百物語』からの1篇。
恐ろしいタブーがある橋の話です。

甲斐さん
▲「本読みの時間」甲斐祐子さん。


この橋で転んだ時に決して差し出された手の助けを借りてはならないというタブー。緻密な心理描写を織り交ぜながら、タブーを破った時に人はどうするのか、リスクのある選択肢を突き付けられた時に人はどうするのか、お話の基本構造には「決断」や「選択」から人間性が見えてくるロールプレイングゲーム的な面白さもあります。
3人の語り手の語り口で、ドラマチックな物語を聴衆は堪能しました。

有元さん
▲「カヨコの大発明」の有元はるかさん。


次なる演目は語り芸の講談。
舞台に登場したのは、11月に旭堂南龍襲名真打昇進を控えた旭堂南青さんです。
枕で、「客席がシーンとする怪談は苦手なんですよ」と笑いをとってから、ぐっと恐怖の物語を語り始めます。

南青さん
▲講談師旭堂南青さん。

演目は『怨みの片袖』。
登場人物は守銭奴の店主と番頭。ある不気味な夜から語り始めた物語では、番頭の口を通して、店主の強欲さによって奪われた幸せ、そこから生まれた怨みが語られます。仏教説話のような因果応報の世界観に引き込まれている時に、ハプニングが起こりました。
客席から携帯電話が鳴り響いたのです。

南青さん

怪談なだけに、雰囲気を壊すまいと客席は無反応を貫こうとしますが、そこを南青さんは逃しません。ハプニングをいじり、客席に笑いが起きます。
南青さんは、この笑いをすぐに回収して、再び恐怖の世界へ。講談の面白さに、ライブハプニングの面白さも楽しませてもらった時間でした。


残る演目は、大和座狂言事務所による狂言『梟』。
後篇では『梟』のレポートと、演者さんたちのインタビューをお届けします。



堺能楽会館
住所 大阪府堺市堺区大浜北町3-4-7-100
最寄り駅 南海本線:堺駅
電話 0722-35-0305

大和座狂言事務所
住所 吹田市千里山東2丁目3-3
Tel:06-6384-5016,Fax:06-6384-0870,090-3990-1122(事務局)


20181103_kusabira01.jpg

20181103_kusabira02.jpg


検索

2018年10月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

お気に入りに追加

堺「意外史」探訪
| トップページ |