| トップページ |
雑記帖 No.210

SKP50 第二弾 "創作SKP道成寺"(1)

固定観念を打ち破る日本舞踊と三味線

20180505_skp5002_01_00_01.jpg

海からの風が運ぶ潮の香りが周辺には漂っています。
かつてこの海は、琉球や中国・明、フィリピン、遠くヨーロッパへと通じて、異国の珍しい文物や財を堺に運んでくれました。
堺能楽会館は、江戸時代に築かれた堺旧港のすぐ近くにあります。この日本でも珍しい個人所有の能楽堂を備えた堺能楽会館は、来年2019年に50周年の記念の年を迎えようとしていました。それを記念する「堺能楽会館開場50周年プロジェクト」、略してSKP50(S=堺能楽会館 K=開場50周年記念 P=プロジェクト)が大和座狂言事務所の狂言師安東元さんのプロデュースによって2か月に一度のペースで行われることになりました。第一弾"狂言 ✖「本読みの時間」"に続きまして、2018年5月5日に開催された第二弾"創作SKP道成寺"のレポートをお届けします。


■日本の舞踊 長唄

20180505_skp5002_01_01_01.jpg 
▲司会は前回から引き続き「本読みの時間」の甲斐祐子さん。 


毎回違うテーマが設定されるSKP50ですが、第二弾は「日本舞踊×民族音楽」とテーマが掲げられていました。
一つ目の演目は、悠樹流家元悠扇夢華さんによる長唄「鶴亀」、日本舞踊です。

日本舞踊はほぼ初見の筆者には、イメージとして、なんだかゆるゆるとしたものという印象がありました。悠扇さんの舞踏も、穏やかなものでしたが、ただそれだけではありませんでした。突然の足を踏み鳴らすような動き、袖を振るような動き。緩やかな中にも早さがある。それは、ゆったり流れる川にも時に瀬があり、時に滝があるようなものなのかもしれないと感じました。

いうまでもなく鶴と亀は長寿のシンボルで縁起の良いもの。この長唄「鶴亀」は祝賀曲とのことで、50才になろうという堺能楽会館の記念イベントのオープニングに選ばれたのでしょう。縁起の良い一曲で幕開けした舞台を続いて紹介しましょう。

20180505_skp5002_01_01_02.jpg
▲悠樹流家元悠扇夢華さん。


縁起のいい「鶴亀」に続いては、長唄「狸とたにしの伊勢参り」です。
お話としては、和歌山(紀州)の狸とたにしが連れだって伊勢参りに行く、童話のようなお話です。これにはSKP50ならではの実験的な試みがなされていました。
狸は日本舞踊家の眞田流家元眞田雅透さんが務めるのですが、「本読みの時間」からナレーターの竹房敦司さんが相方のたにしを、ナレーションを甲斐祐子さんが務めるのです。竹房さんは俳優としてたにしを演じるのではなく、あくまで声のみでたにしを演じます。
この実際の舞踊家と声のコラボレーションは、前回のレポートをご覧の方には思い当たるでしょう。狂言師と声のコラボレーション「本読み狂言」と同じ構図です。

20180505_skp5002_01_01_03.jpg
▲「狸とたにしの伊勢参り」を日本舞踊と朗読でコラボレーション。


狸とタニシの伊勢参りは、「つれもていこう」と和歌山弁でタニシが持ち掛ける所からスタートします。2人のユーモラスな道中は、途中から2人の先着争いの競争になります。どう考えても、貝に過ぎないタニシでは狸と勝負になるはずはないのですが、このタニシは知恵のあるタニシで、ある策略があってのことでしたが、それは一体......? 2人の勝負がどうなったかは、実際に舞台で確かめてくださいね。
この演目、竹房さんの和歌山弁のタニシの存在感もばっちりで、眞田さんの狸のコミカルなパフォーマンスにも目を奪われました。こっけいだけどその中にある美しい動きにうならされたのでした。
眞田さんによって、さらに日本舞踊のイメージは大きく変えられたように思えました。

20180505_skp5002_01_01_04.jpg
▲日本舞踊家の眞田流家元眞田雅透さんが狸を演じます。


■三味線ライブ よろづ屋音巡(ヨロヅヤオトメ)

20180505_skp5002_01_02_01.jpg
▲よろづ屋音巡(ヨロヅヤオトメ)。


日本舞踊の次は、三味線のライブです。
能舞台に登場したのは、女性2人、三味線の帰山かおるさんと津軽三味線の染行エリカさんのユニット、よろづ屋音巡(ヨロヅヤオトメ)です。なるほど、三味線に津軽三味線は日本の民族楽器、民族音楽ということになりますね。

ところが一曲目は「心星」というオリジナル曲。三味線二棹だけとは思えないドライブ感のあるサウンドに、これまた固定観念を崩される思いです。
夜空を駆け抜ける星のような、寂しさのある格好イイ曲だなという印象。弦楽器だけで、こんなにも広がりのある世界を表現できることにも驚きです。

その次もオリジナル曲「細棹・太棹のためのアラビア綺想曲」。その名の通り、細棹の三味線と太棹の津軽三味線の掛け合いで、アラビアを想起させるようなエキゾチックな曲です。細棹のはじくような高い音と、わずかにヴァイヴレーションを感じる太棹の絡みが耳に体に心地よい。

まるで関係ないように思えますが、三味線とアラビアには深い縁があります。弦楽器のルーツは、アラビアが有力候補なのです。紀元前1900年頃のバビロニア(イラク)には弦楽器の壁画が残されており、おそらくアジア、中東のどこかで生まれた弦楽器が様々な経緯を経て、中国へ、そして沖縄から日本のこの堺へたどり着いたのです。
室町時代の堺は、戦争の影響を受けて使えなくなった兵庫の港の代わりに、日明貿易の港として国際舞台に躍り出ました。実際には日明貿易は回数が制限されていたため、琉球を仲介しての貿易が主だったのです。
蛇皮の弦楽器・三線が、琉球貿易の縁があって堺に持ち込まれ、時間をかけて犬猫の皮の三味線へと変化します。
堺は様々な技術の集積地で、すぐ近くの塩穴村には皮の扱いになれた人々も数多くいたことも要因としてあったのかもしれません。また、堺は人口の集積地で、音楽を楽しむ需要があったことも大きいように思います。
アラビアから堺へ。この一曲は、はるか4000年の時間と、シルクロードの距離を感じるものでした。

20180505_skp5002_01_02_02.jpg
▲三味線の帰山かおるさん。


その次は一曲で地球を半周する旅に出ます。
誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲の登場です。それはビートルズの「ノルウェイの森」。それに三味線ならでは、よろづ屋音巡ならではのアレンジが加わります。
「勧進帳の滝のフレーズを挿入します。ノルウェイの森を歩くうちに遭遇する滝もお楽しみください」
との紹介で、演奏が始まりました。

脳裏に浮かぶのはスカンジナビアの針葉樹林。冷たい大気の中、木々の影の間を逍遥するうちに、どこからともなく低い響きが聞こえてきます。突如、目の前が開け現れたのは巨大な滝です。絢爛とした大瀑布が森の静けさを打ち破ります。その見事な場面転換に心を奪われました。

20180505_skp5002_01_02_03.jpg
▲津軽三味線の染行エリカさん。


よろづ屋音巡の舞台は、さらに2曲のオリジナル曲を挟み、最後は「津軽じょんがら節」で〆となりました。
ただ二本の弦楽器が、私たちを夜空へ、アラビアへ、北欧へ、津軽へと誘いました。それは豊かな音楽を堪能する贅沢な時間でした。

そして番組は3つの演目を終え、小休憩となりました。
休憩開けには、いよいよ創作『SKP道成寺Ver.49』の登場です。


堺能楽会館
住所 大阪府堺市堺区大浜北町3-4-7-100
最寄り駅 南海本線:堺駅
電話 0722-35-0305

大和座狂言事務所
住所 吹田市千里山東2丁目3-3
Tel:06-6384-5016,Fax:06-6384-0870,090-3990-1122(事務局)


堺能楽会館開場50周年記念プロジェクト第三弾については↓


18_08_14_kainokai01.jpg
18_07_07_kaidan02.jpg

検索

2018年8月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

お気に入りに追加

堺「意外史」探訪
| トップページ |