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雑記帖 No.181

「子ども食堂」から広がる波紋(3)

~ともちゃんの子ども食堂~前篇

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堺市では、2017年に産官学が参加する「さかい子ども食堂ネットワーク」が立ち上がり、それ以前から活動していた団体も加え25団体(2017年12月時点)が子ども食堂をオープンするようになりました(記事【1】【2】)。
ネットワークを運営し、子ども食堂をサポートする社会福祉協議会の山本香織さんによると、子ども食堂はそれぞれ個性的で多種多様なのだそうです。一体どんな子ども食堂があり、どのように子どもたちに向き合っているのかを実際に確かめに行ってみたくなりました。
今回のつーる・ど・堺では、ネットワーク以前からあった、堺の子ども食堂の草分け的存在である「ともちゃんの子ども食堂」を訪ねます。では、3回シリーズの前篇をどうぞ。


■鍵を持たない子どものために
普段は不動産屋さんの事務所の応接スペースが「ともちゃんの子ども食堂」になるのは毎月第四金曜日。この日はクリスマスを目前に控えた12月22日で、普段とちょっと様子が違いました。クリスマスの特別メニューにケーキも用意されていたのです。
扉をくぐると、丁度そのちょっとしたクリスマスパーティーの準備の真っ最中でした。調理スタッフの方がキッチンで忙しくされている中、隣接した応接スペースで「ともちゃん」こと芝辻友一さんにお話を伺いました。

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▲"ともちゃん"こと、芝辻友一さん。


芝辻さんが「ともちゃんの子ども食堂」をオープンしたのは、2016年の6月のことです。
「テレビで『子ども食堂』の名付け親である近藤博子さんの子ども食堂『だんだん』のことをやっているのを見て衝動的にやろうと思ったのです」
衝動的に、と芝辻さんは言いますが、その下地が芝辻さんにはありました。
「実は長男に知的障がいがあったこともあって、障がい者の共同作業所を立ち上げていましてね」
福祉施設を作った経験が芝辻さんにはすでにあったのです。そして、もうひとつ。
「この前の道は通学路になっているのですが、見ていてもそんな困っているような子どもがいるようには見えませんでした。ところが、近所に住んでいる犬の散歩友達が、鍵を持っていない子どもがいるという話をしてくれたのです。働いている親が帰ってくるまで家の外で待っていないといけない。びっくりして、その子が晩御飯が食べられるように考えようかということになったのです」

丁度、芝辻さんには、倉庫用にと思って購入した建物がありました。もともとは自治会館として使われていた古い建物です。これを利用することにしました。当時は「さかい子ども食堂ネットワーク」もありませんから、自分たちの力だけで2016年の6月に「ともちゃんの子ども食堂」をスタートさせたのでした。
「最初はその子と友達を含めた4人の子どもたちからスタートしました。来るものは拒まず、去る者は追わずの態度でやっていたら、そのうち10人、そして12、3人の子どもが来るようになりました。来ている子どもたちの年齢は、上は専門学校、下は小学校1年生と幅があります」
多くの子どもたちと出会うようになって芝辻さんは、気づいたことがあります。
「どの子どもも何らかの荷物を背負っているのだなというのが垣間見えるのです。実際、もっと来てほしい子どももいます。学校の先生が誘いをかけてくれてもいるのですが、学校にさえいけない子どももいるから難しいですね」
子どもたちを気にかける芝辻さんですが、前職は子ども相手のお仕事をしていたわけではありません。ただ、ちょっと似た所もあるお仕事だったそうです。


■現実の恐るべき社会
芝辻さんは、もともと大きな企業で店舗開発の仕事をしていて、ずっと人事畑を歩き社員教育に携わっていたこともあって、子どもの教育には関心がありました。また芝辻さん自身の子どものこともありました。
「うちの長男のように障がいのある子には、高校を卒業したら行き場所がないのです。そういうこともあって障がい者の共同作業所を私は立ち上げました。そのころは弟の亮輔は、知的障害のある兄のことを好ましく思っていなかったんじゃないかと思うんです。それが、今一緒に子ども食堂をするようになって亮輔も変わってきました。福祉に理解を示し、兄のことも大事にするようになったのです」

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▲息子の芝辻亮輔さんは、会社の方の代表取締役を務めています。


変化があったのは、芝辻さん本人もでした。子どもの問題には関心を寄せていた芝辻さんも、今の子どもたちを取り巻く環境の切実さをリアルには認識できてはいなかったのです。それが、子ども食堂を開いて、多くの問題に囲まれている現代の子どもたちと接するようになったことで芝辻さんの現実に対する物の見方は大きく変わりました。
「子ども食堂を開いて、だんだん現実が見えてきました。今、ひどいニュースがいっぱいあるでしょう。以前は信じられなかったのですが、家庭での虐待や殺人などTVでやっているようなことが、そこらにいっぱいあるやろうなと今では思うようになりました。実際この近所でもひどい事件が起こりました。子どもの貧困問題も、絶対的貧困の時代から、今は相対的貧困の時代。私はそっちの方が怖いと思います」
子ども相対的貧困は第三者からは見えづらく、第三者が気付かないうちに深刻化しがちです。そして、子どもの問題は、子ども自身が起こしている問題ではなく、子どもの周囲が起こしている問題です。
「『だんだん』の近藤さんも言うように、子ども食堂というのは、子どもだけの食堂ではありません。子どもが来ると、大人も年配の方も来やすいんです。今は昔みたいに、まちで気軽に知らない子どもに声をかけにくいでしょう。でも、子ども食堂を通じて、子どもを知っていたら、その子やその友達にも声をかけやすくなる。親からも構ってもらえず、大人からも構ってもらえないのは怖いことですよ。子ども食堂をきっかけに、構ってもらえる人ができるのは子どもにとっていいことですよ」

現代日本社会の問題として、芝辻さんは更なる指摘をします。
「今の日本の風土では、社会から支援されるのを恥ずかしがりますが、支援を受けるのは当たり前の権利です。支援が気楽に受けられる社会にならないといけないと思いますよ」
たとえば生活保護もそうです。ニュースでは、生活保護の問題というと、すぐに不正受給の問題が取り上げられますが、日本における不正受給は金額ベースにして0.4%程度、しかもその中には高校生のアルバイト料を申告する必要がないと思っていたなど不正受給に含めるのが疑問な事例もあって悪質なケースは一部に過ぎないのに対して、受給可能な人が受給している捕捉率は2割程度だとされています。子どもたちの現状を考えても、本来支援を受けるべき8割の家庭が支援を受けていないことの方が大きな問題でしょう。
こうした社会からの支援を恥ずかしがることも、責めることも、子どもの貧困問題の背景にはあるのです。

一方で、子ども食堂への援助は増えているのだそうです。
「寄付や助成、今日のお米も寄付していただいたものです。だんだん充実していってます」
もちろん物やお金だけで子ども食堂が運営できるわけではありません。「ともちゃんの子ども食堂」には、ボランティアの参加も増えています。
中篇では、ボランティアとの出会いについてお話していただきます。それは一枚の看板をかかげたことから始まったのだそうです。


ともちゃんの子ども食堂
堺市西区鳳中町5丁168番地5 有限会社トモ内(鳳小学校区)
毎月第4金曜日18:00~20:30
072-268-2225(有)トモ内 090-4274-6681 
子ども食堂代表芝辻友一
子ども100円 大人300円


さくらの庭子ども食堂
堺市西区鳳中町2-36-2 山埜宅(鳳小学校区)
毎月第2金曜日18:00~20:30
080-4247-6616(事前に申し込みをお願いします)
子ども100円 大人300円












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