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雑記帖 No.180

「子ども食堂」から広がる波紋(2)

さかい子ども食堂ネットワーク(後篇)

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子どもを取り巻く環境が切迫し、7人に1人が貧困状態にある中、堺市では今年度(29年度)『さかい子ども食堂ネットワーク』が立ち上がり、現在25団体が子ども食堂を運営しています。産官学の円卓会議で堺市内の子ども食堂の方向性は話し合われ、ネットワークを通じて企業や個人などから、様々な支援が子ども食堂に届けられるようになりました。
堺市も施策として子ども食堂支援に力を入れているのはわかるのですが、本来なら行政が行うべき貧困対策や福祉政策を、民間が肩代わりしているのが子ども食堂なのではないか? という疑問も出てきます。この疑問を堺市社会福祉協議会の山本香織さんにぶつけてみました。(→前篇


■食はツール
「堺市では貧困対策として子ども食堂をとらえているわけではないのです。今必要なのは子どもたちの居場所であって、食はみんなが集まりやすいツールという考えをもっています。つまり食を通じて子ども達が安心して集える居場所を子ども食堂と捉えています。しかし、子ども食堂というのは、通常、貧困対策のイメージ先行になっています」
子ども食堂には「貧困」というイメージが付きまといますが、大きく分けて交流の場としての共生食堂と、貧困対策としてのケア付食堂の2種類があります。
ただ、この2種類は明確な線引きがあるわけではなく、各子ども食堂によって、どちらの傾向が強いかという風にとらえています。そもそも「子ども食堂」の名を世に広めることになった「だんだん」の近藤博子さんも、「子ども食堂は子どもの食堂ではない」と言っています。子どもが安心して1人でも来ることが出来る、あなたを受け入れる場ですよと示すためのネーミングが「子ども食堂」なのだそうです。

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▲子どもたちも一緒になって食事の準備をすることも。(友ちゃんの子ども食堂)

今、日本における貧困は「見えにくい貧困」と言われています。
「昔のような絶対的貧困ではなく、相対的貧困で表からは見えにくくなっています。たとえば子育てをするお母さんたちが、最近は(インターネットの)ラインでつながっていることが多くなっています。実際、生で会っていたら、その様子から相手の子育てのしんどさが目に見えてわかったりもするけれど、ラインだけだとわからない。ラインでは、例えしんどかったとしても、わざわざしんどい写真を送らないことが多くて、自分たちの一番いい写真だけを送ったりするので、問題が見えてこないのです」
実際に子ども食堂にやってくる子どもたちにしても、その実態は容易にうかがえません。
「たどえば子ども食堂の活動を紹介したり、取材をお受けする時に、子どもたちの写真の取り扱いには気を使います。どのように掲載するかはセンシティブな問題です。子どもが写真を撮っていいよと言ったところで、保護者の同意が取れたわけではない。多くの子どもたちは学齢期なので、保護者と一緒に来ないパターンがほとんどです」


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▲堺市社会福祉協議会の担当・山本香織さん。

「こういう状況なので、誰でも来やすい間口の広い共生食堂の形をとることによって、みんなが来るからその中にしんどさを抱える子も一緒に来ることが出来る。そこに『一緒にご飯を食べたら美味しいやん』という、ところから始める共生型のよさがあるのです」
もちろん、その10人、20人の中にも、表には見えない問題を抱えた子どももいることでしょう。多様な問題がある社会で、多様な子どもたちにどう対応していけばいいのでしょうか。


■多様な子どもに、多様な居場所が必要
子ども食堂の必要性について、山本さんはこう言います。
「社会福祉士のような専門職は専門の視点を持っているので、その必要性はわかりやすいですよね。でも、近所のおっちゃん、おばちゃんの強みもあるのです。例えば、子どもたちは、簡単にいじめや虐待の事を言わないものなのです。親からの虐待を受けていても、親をかばう子が多い。そういう時に、普段の子どもたちとの違いに気づいて、子どもたちの心に踏み込んで心の扉を開けていくのは、近所のおっちゃんやおばちゃんたちだったりするのです」
また、他組織や団体との連携についても、公平性を優先して考えがちな行政対して、民間ならではの良さがあります。
「おっちゃんやおばちゃんはつながっていくスピードが速い。民間だから出来る部分、地域で共に暮らす人だから出来る部分。子ども食堂からは、出会いの化学反応を学ばせてもらうことが多いです。多様な子どもたちがいるのですから、多様な子ども食堂が必要なのです」


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▲同じく堺市社会福祉協議会の担当・石垣慧さん。

実際、ネットワークに先行した立ち上げられた堺市の子ども食堂も、それぞれ個性的だそうです。
「堺市西区の『ともちゃんの子ども食堂』などは、そもそもを伺うとケア付食堂の必要性に気づかれたことがきっかけだったようです。もともと困っている子どもとの出会いがあって、そこから子ども食堂をはじめようと思われたそうです。子ども食堂を始めたら労力も大変になるだろうと思っていたのですが、いざ子ども食堂を始めてみると、地域の人が手伝いたいと集まってきてかえって楽になったとおっしゃっています。子ども食堂は地域で子どもたちを見守るきっかけになったのです」
子どもの危機的な状況に対して、自分も何かをしたいと思う大人たちは少なからずいたのです。
「子どもというキーワードで、人々や組織が主体的につながっていくのです。子ども食堂のボランティアというと、配膳や見守りのイメージが強いのですが、それぞれの強みを生かしてもらうことができます。小児科のお医者さんが、走った後にお腹が痛くなるのはなぜ? とか、子どもたちでもわかるような人体の話をしてくれたり、お茶の『つぼ市製茶』さんも何かできることをと円卓会議にも来てくださいました。『つぼ市製茶プロジェクト』を立ち上げて、お茶に触れる授業をしてくれることになりました。所得の少ない家庭の子どもは、体験学習が圧倒的に不足しているという調査結果が出ているので、そういう子どもたちに対するアプローチとしても非常にありがたいことですね」

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▲にしのこ☺まんぷく食堂では、長期休暇中に宿題を見たり、様々な課外活動をすることもあります。


地域の人的資源と自主的につながっていくことによって子ども食堂が、それぞれ広がりを持つ地域共生の場として認識されはじめているようです。
「地域共生社会をつくろうという、時世になっています。これまでの社会福祉の考え方は、高齢者だけ、障害者だけ等、分野別の捉え方でしたが、地域で包括的にとらえていく視点が必要といわれています。超高齢社会ということもあって、高齢者が自分の健康のためにもボランティアをしていく、時にはサービスの受け手にもなるというような役割の循環をつくりだすしかけも重要ですよね」
"子ども食堂は子どもの貧困対策のためのもの"というイメージをはるかに超えて、子ども食堂は地域社会の中で機能しはじめているようです。
「子ども食堂の持つ可能性は高いと思います。これからの社会を作っていく時に、行政や社会福祉協議会だけが動くのは効果的ではないと思います。みんなが活動しやすい、協働しやすい環境を行政は作ることによって、それぞれの活動主体が繋がりながら活動していくのが効果的ではないでしょうか」

現在、堺市には25の団体が子ども食堂を運営しているということですが、どれぐらいの子ども食堂があるのが理想になるのでしょうか。
「小学生ですから、徒歩で行ける圏内がいいですよね。堺市には約100校区ほどあるのですが、小学校区に一つは子ども食堂があるのがいいのではないかと思います」
『さかい子ども食堂ネットワーク』の後押しもあって一年間で多くの子ども食堂が開設された堺市ですが、100食堂必要だとするとまだまだその数が足りないということになります。最初の第一歩を踏み出したばかりという所でしょうか。

行政や専門職だけでは対応できない部分に子ども食堂の良さがあることはわかりました。ネットワークなどで行政による環境整備も行われている。と同時に、子ども食堂によって貧困対策が十分になったりはしない現状が現前としてあります。一体、子ども食堂の現場が、実際にどんな状況になっているのか。次回からはその様子も伺ってみることにしましょう。



堺市社会福祉協議会
堺市堺区南瓦町2-1 堺市総合福祉会館内
TEL 072-232-5420



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