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雑記帖 No.179

「子ども食堂」から広がる波紋(1)

さかい子ども食堂ネットワーク (前篇)

20171222_kodomo01_00_face.jpg「ともちゃんの子ども食堂」


7人に1人の子どもが貧困状態にあるという2017年の日本。育児放棄、虐待、いじめ、餓死など子どもを巡るいたましいニュースも日常的に見聞きするようになりました。そんな状況に風穴をあけるのか? 子どもたちが1人で安心して行くことが出来る「子ども食堂」が日本各地で開設されるようにもなりました。
堺市でも子ども食堂は開設されはじめましたが、堺市では他ではない取り組みもされているようなのです。それは一体どんな取り組みなのか、堺市総合福祉会館にある堺市社会福祉協議会を訪ねました。


■産官学のネットワークが「子ども食堂」をバックアップ

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▲堺市社会福祉協議会の石垣慧さんと山本香織さん。


堺市社会福祉協議会でお話をしてくださったのは、地域福祉課の係長増岡智典さんと、担当のお2人、山本香織さん、石垣慧さんです。
まず、堺市には今(2017年12月)いくつの子ども食堂があるのでしょうか。
「現在25の子ども食堂の団体が、『さかい子ども食堂ネットワーク』に登録されています。この『さかい子ども食堂ネットワーク』は『広報さかい』(堺市が毎月発行する広報紙)で特集記事が出ると、非常に大きな反響がありました」
堺市に25もの子ども食堂の団体があったことも驚きですが、子ども食堂のネットワークが存在したことにも驚かされます。このネットワークが堺市の子ども食堂の特徴なのでしょうか
「はい。子ども食堂のネットワークを自治体が推進しているのは珍しく、堺市独自の方法が他の自治体の注目を集めています。堺市ではネットワークに先行して8団体ぐらいが、すでに子ども食堂を開設していました。堺市は、28年度に調査やモデル事業としてキッズカフェの実施、ガイドラインの作成に取り組み、今年度(29年度)にネットワークを立ち上げて加盟していただきました」

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▲円卓会議の様子。


こうしたネットワークづくりがなぜ堺市で始まったのでしょう。
「社会福祉協議会と堺市が協議したアイデアに対して、子育て支援に力を入れている堺市がしっかりと予算をつけ、平成29年度から「子ども食堂ネットワーク構築事業」が実現しました。個人的には堺市では行政と社会福祉協議会の連携体制がしっかりとれていることもうまくいっている理由の一つかなと思います」
協力関係がうまくいっているのは、行政と社会福祉協議会だけではありません。
「このネットワークが面白いのは、産官だけでなく産官学と大学も入っていること。大学からは、堺市の教育分野に深い関わりのあるソーシャルワークの専門家で大阪府立大学教授の山野則子先生が、円卓会議のアドバイザーとして参加しています。この会議は「沖縄子供県民会議地域円卓会議」を参考にしたもので、どんな解決策があるのか、誰でも出入り自由な会議を参考にしています。堺市では、企業、行政、実践者が一緒になって、どうやって子ども食堂の輪を広げていくか議論する、羅針盤のような役割をしているのです」
こうして多くの意見を取り入れながら形成されていったネットワークですが、ルール作りの上で皆に共通する一つの思いがあったのだそうです。


■堺市民に共通する思い
「私たちはどういうネットワークにするかを行政と話し合って作ってきました。子ども食堂の自主性を大切にしながら、ネットワークのあり方やルールを皆で試行錯誤しながら作ってきました」
そんなルール作りの中でも、一番注力したのが衛生に関することでした。
「堺市では、O157の事件があったこともあり、食品衛生上のリスクに対する意識は常にあります。食には間違いがあってはならないという思いです」
1996年(平成8年)に発生した「O157堺市学童集団下痢症」では、9000人以上の人がり患し、当時3人の児童が亡くなり、その後も後遺症によって亡くなった方、苦しんでいる方がいるという、堺市民にとって忘れることが出来ない事件です。行政だけでなく、この意識は堺市民にも広く、強く共有されているように思います。


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▲堺市市役所前にあるO157の被害を追悼する石碑。(※撮影時は、市役所の改装工事のためフェンスに囲まれた状態になっていました。)


「さかい子ども食堂ネットワーク入会団体には、食品衛生上の責任者を各子ども食堂においていただいています。食品衛生上の責任者は、食品衛生責任者養成講習会を修了していただいている等の一定の条件をクリアした方です。その方を中心に、それぞれの団体が食品衛生の意識向上に努めています。
 ある子ども食堂の実践者は、O-157の事件当時、学校に勤めていて、腹痛で苦しんでいる子どもたちの姿の支援をされた経験がある方ですが、それでも地域の子ども達のために、子ども食堂を開設すると強い思いをもって挑まれている。みなさんそれぞれに、過去の経験から、食品衛生には絶対大丈夫と言えることはないからこそ、気をつけなければいけないという想いをもって活動されていると感じています。
 ネットワークのあり方をめぐっては様々な意見はありますが、事務局としては、各団体の皆さんが食品衛生の意識向上に努めていただいけるよう、研修・啓発を毎年行っていくことで、ネットワーク内の子ども食堂の数が増えても安心・安全であるという居場所を子どもたちに提供することが重要だと考えています」
O157事件の悲しみや苦しみは決して消えることのないものですが、その事件を2度と繰り返してはならないという強い思いが関係者にはありました。『さかい子ども食堂ネットワーク』の中にその苦しみが血肉となって活かされ、力となっていることも忘れてはいけないことでしょう。


■ネットワークを通じた支援活動
堺市民の強い思いが込められた『さかい子ども食堂ネットワーク』はこうして立ち上がりました。ネットワークでは具体的にどんな活動を行っているのでしょうか。
「ネットワークによって、これから子ども食堂を立ち上げる方や、すでに立ち上がっている子ども食堂の支援を行っています。立ち上げの相談や、堺市子ども食堂開設支援補助金の申請のお手伝いなどしています。子ども食堂を支援したいという企業や団体からの助成も、ネットワークを通じてですとスムースです。たとえばオリックス宮内財団からの助成があるのですが、ネットワークがない他の市ですとどうしても一本釣りになるので年間数件程度なのですが、堺市ではネットワークを通じて今年度は18件の助成が行われました。これまで朝ごはんを提供していた所が、夕方もやることになったり、活動が強化されています。また『広報さかい』や今回の取材をお受けするなど情報発信を行うことで、実践者の方ばかりじゃなくて、応援したいという方とのつながりのお手伝いも行っているのです。ネットワークのホームページでは、堺市の子ども食堂を一覧で紹介しているのですが、関心のある方が見てくれていて、NPOから学習支援の協力の申し出などもあったのです」


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▲調査やモデル事業の知見を集めガイドラインが作成された。(NPO法人SEIN、NPO法人み・らいず編集)


お話を伺っていると、多くのつながりや支援があって、子ども食堂が設立され運営されていることがわかりました。堺市によるネットワークの構築も支援の輪をつなげて事業を強化する面白い試みですが、では独立して活動している子ども食堂を継続させていくことは難しいということでもあるのではないか......やはり、本来は行政が担うべき貧困対策・福祉政策を民間に肩代わりさせているのでは? という疑念が首をもたげてきます。
しかし、山本さんは子ども食堂には、行政では担うことが出来ない一面があるのだといいます。果たしてそれは何なのか、後篇で子ども食堂独自の役割について追ってみることにしましょう。
(→後篇


社会福祉法人堺市社会福祉協議会
堺市堺区南瓦町2-1 堺市総合福祉会館内
TEL 072-232-5420





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