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雑記帖 No.142

まちと自然をリンクするライフライン(2)

~三宝水再生センター もう一つの顔~

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わたしたちが生活するまちを通過することで汚れる水を、綺麗に再生する三宝水再生センター。堺には、この三宝と石津、泉北と大阪府の広域処理施設によって、下水を処理しています。
三宝水再生センターは昭和38年から処理場として稼働ている歴史ある処理場ですが、平成25年の秋から高度処理を取り入れた施設に生まれ変わりました。そのきっかけは、大規模な高速道路工事でした。
処理場見学ツアーを案内していただいた、職員の小西さんに今回も引き続き施設を案内していただきました。


■新しい処理方式への挑戦
三宝水再生センターは阪神高速大和川線の工事にともなって、移転することになっていました。
「どうせ移転するのならと、それまでの高級処理方式から、高度処理の施設に転換することにしたのです」
高度処理の施設とは、前回見学ツアーで巡った施設のことです。
他方、石津では「標準活性汚泥法」で処理が行われており、泉北では「循環式硝化脱窒素型膜分離活性汚泥法」他の施設があります。なんだか寿限無寿限無的な長い名称ですが、最新の方式です。
「膜で水と汚泥を分離する方式で、三宝でも一時期実験していました」
この方式だと泥を沈める必要がなく、スペースも時間も省略できる方式ですが、どうしても膜が泥でつまってしまうといった問題があります。
「技術的に確立できるかと、ランニングコスト的に見合うのかという問題があります」
公共事業であり、欠く事の出来ないライフライン事業ですから、安全で基準を満たす処理精度が保てるのかというだけでなく、予算内で運用できるのかも大切なことですね。

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▲三宝水再生センターのろ過設備模型。

下水処理では有機物を取り除けても、窒素やリンを取り除くのが難しかったのだそうです。膜や繊維だけでなく、酸素を好む性質の微生物に酸素の少ない環境を与えて分解力を増すようにしたり、三宝では「担体投入型」という方式で分解を促進しているそうです。

やっかいな窒素やリンは、どこから発生するものなのでしょうか?
「基本的には人の生活から出てくるものです」
つまり人が増えると窒素やリンは増加します。日本では、人口が増加して社会が急速に工業化した昭和40年代になって、下水処理をはじめ公害問題は大きな課題となっていました。


■環境と向き合って
1970年に開催された臨時国会は、通称「公害国会」と呼ばれ、公害対策が議論されました。その結果、環境政策の促進のために環境庁(現環境省)が設置され、汚い空気や排水への対策として法律による規制がはじまりました。
「この規制の基準は年々厳しくなる一方で、守るのは難しいところもあります。民間の事業所すべてが守れているわけではないので、各事業所に確認しにいって口頭による指導なども行っています」
水再生センターの仕事は施設内にとどまらず、まちにも、そして自然にも広がっています。

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▲かつてはワーストを争った大和川も鮎が遡上する川になったものの、新たな問題も。手前は阪神高速大和川線のトンネル。

技術と施設の進化や、民間の努力もあって、堺周辺の水環境は大幅に改善されました。しかし、新たな問題も浮上しています。筆者は以前、堺で最年長の漁師・高田利夫さんから、三宝水再生センターより下流の大和川河口で、貝がまったく獲れなくなっているという話を聞きました。水を綺麗にしすぎているのかもしれない、と。
その話を小西さんに伝えると、
「たしかに窒素やリンをとりすぎているかもしれないと問題になっています。九州などで、海苔の色づきが悪くなってきたといったという報告があります。大阪でも南部からは報告があがっていて、調査をしています」
原因はまだ特定されていないようですが、大和川周辺での調査もお願いしたいところです。
「基準が厳しくなりすぎているのなら、緩くすることもできます。その方が施設のランニングコストも減るので、市民への負担も減りますしね」

果たして海苔や貝に起きている異変は、窒素とリンの取りすぎによるものなのか、あるいは新しい洗剤の登場によるものなのか、ライフラインと環境を守る戦いに終わりはないかのようです。


■災害からまちを守る

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▲巨大なポンプが、緊急時の大水に対処します。

もうひとつ三宝水再生センターには大きな役割があります。それは災害への対応です。
移転先の現在の敷地から道路を挟んで大和川よりの旧敷地にその施設はありました。地下にある巨大なポンプ群がそれです。これは大雨などで処理能力の3倍の水が押し寄せると自動的に発動するようになっています。
「一時にそれだけの水ですから、汚水は雨水だと判断し、沈砂池と消毒だけの処置をして放流しています」
このポンプが緊急発動するような大雨は、季節によりますが平均すると月に1~2回程度になるそうです。こんな見えないところで、まちの日常は守られていたんですね。

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▲いざ災害に襲われた時のための「災害対策センター」。

そして災害を防ぐ努力ももちろんですが、いざ災害が発生して被害が出た時の対策も考えられています。
旧敷地内には、ずばり「災害対策センター」と名付けられた施設があります。
海抜の低いエリアなので、盛り土をした上に建てられた建物で、津波避難ビルにもなっています。
「堺市としてはJR阪和線より東側への避難を推奨していますが、それが難しい時は緑色の看板がかかった津波避難ビルへ避難してください」

この災害対策センターは、昨年2016年(平成28年)の10月から稼働しています。普段は三宝水再生センターの業務の会議などにも使われていますが、災害発生時には各地から応援に来てくれる人用の拠点施設として使用されます。
阪神大震災や東日本大震災のことを思い起こしても、被災地外からの支援は重要ですが、送られてきた人や資材をどこに集積するのかは問題となります。大きな震災を経験したことが、ここに生かされているんですね。

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▲移転して平成25年から稼働している新施設。

災害対策センターの屋上にも登らせてもらいました。北には大和川の流れ、南には新しい処理センターの建物群が見下ろせます。
移転した新しい処理場は施設としては完成したのでしょうか。
「施設としてはまだ完成したわけではありません。屋上に太陽光パネルを設置する計画や、市民が利用できるようにする計画もあります。処理施設は必ずしも市民に喜ばれる施設ではないので、親しんでもらうことも考えています」
この日開催されていた「あじさいまつり」も、市民に親しんでもらうことを目的としてはじまったものでした。
私たちは、自分たちの生活を支えているものがあまりにも当たり前にありすぎて、存在を忘れてしまいがちです。電気や上水道は、私たちが受け手なのでまだしも、出しっぱなしで行く先の下水道とその先のことをどれだけ考えたことがあるでしょうか。施設を運営し維持することも、タダではない。処理場の負担を減らすためにも、油やゴミを流さないという家庭で普通にできる努力は意識して行いたいものです。



堺市上下水道局 三宝水再生センター
堺市堺区松屋大和川通4丁147番地1
電話 072-232-4958 
ファックス 072-232-4957




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