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雑記帖 No.093

一万年の森の守り人(2)

受け継いだものを後世に残す

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行基開山の霊場妙見山の山頂にある一万年のブナの天然林は天然記念物に指定され、一般の入林は許されていません。しかし、8月11日に開催された「山の日フェスタ」で許可を得て入林が許されたばかりか、はじめてアコースティックライブ「森の音」が行われました。歌手・古川真穂さんのプロジェクト「古川真穂と光合成」のアコースティック楽器のみのライブを楽しみ、一万年の森の美しさに触れた参加者でしたが、偶然その森の危機にも遭遇します。
→前篇

 
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■ブナの森が見直される 
それは人間と自然が一体のものであると感じられるライブでした。 
歌手・古川真穂さんが言うように「人間は自然のおまけ」なのかもしれません。ライブは古川さんにとっても特別なものとなったようでした。 
「自分でこうしよう、ああしようと思わずに、自然の力を借りればいい。自分はまるで自然電池のようで、ただ自分は自然と繋ぐ光のパイプ、光の柱にでもなったようでした。自分で聞いた事の無い声が出ました」 

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▲歌手・古川真穂さん。大きな蟻が遠慮なく登ってきます。「ほら、あっちへ行きな」と蟻と会話。


古川さんのそんな歌声の余韻が残る中、参加者たちは「能勢妙見山ブナ守の会」の信田副会長の案内で森を散策しました。信田さんは、落ち葉の中から、ブナの葉を拾い上げました。 
「ブナの葉とブナの種がこのあたりに沢山落ちています。ブナの葉は葉脈が凹んでいるのが特徴です。これは沢山水を貯えるための仕組みです」 
ブナは長らく役に立たない木とされてきました。水分を多く含み、薪にも木材にも適さないからです。しかし、この特徴が今になって注目されはじめています。 
「ブナは水を沢山貯えることが出来る木で、いわば天然のダムの働きをするのです。しかも、ブナの森はダムを作るよりも、はるかに経済効率もいい」 
コンクリートのダムは環境負荷も大きく、世界的にはダムを撤去する潮流も生まれています。治水の面からも、コンクリートのダムに変わる存在として、ブナの森への関心は高まっているのです。 
「ただ、ブナの生育には時間がかかります。実を結ぶのは7~8年に一度で、生育するのに10年ほどかかります」 
 
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▲特徴的なブナの落ち葉。ブナの種も特徴的な三角形の形をしています。
 

妙見山のブナの森は、寒い所を好むブナの南限とされています。 
「この森は一万年の歴史があると推測されます。五千年前の温暖化でブナ林は姿を消していき、高い山の山頂に取り残されるようになりました。この妙見山の山頂に残っているということは、温暖化を乗り越えた森だからだと思われるのです」 
しかし、時代と共に人口が増加し、伐採圧力が強まると、人にとって役に立たないブナ林は姿を消してしまいます。自然環境だけを見れば、もっと標高の高い山など周辺にもブナの生育が可能なエリアはあるのに、妙見山にだけブナ林が残ったのは、ずっと信仰の対象であったからではないかと思われるのです。 
「縄文時代から続く信仰があり、それを行基が北極星の信仰と結びつけて、後世に繫いだのかもしれません。行基が聖域としてくれたおかげで、一万年の森が今に残っているのではないでしょうか」 
信田さんや妙見山の副住職である植田観肇(かんじょう)さんら「能勢妙見山ブナ守の会」は、長い歴史を持つブナ林を手入れし、後世に残そうとしています。 
 
しかし、現在、容易ならざる事態が起こり、ブナ林は存亡の危機に直面しています。 
 
 
■後世に森を残す 
アカガシの傘下にあるライブ会場の片隅に芽吹いたばかりのブナの若芽が発見されました。これは、近々日当りのいい若木を育てているエリアに植え替える予定です。 

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▲白い環の中にブナの若い芽が芽吹いています。


「ここから50mほどいったところに、ブナの若木を育てているエリアがあるので、見に行きましょうか」 
と、歩を進めた信田さんが、突然声をあげました。 
「鹿だ。鹿が来ている!」 
こちらの気配に気づき、茶色の影があっという間に繁みの奥に消えていきました。 
 
鹿の食害。 
それが、今一万年の森の未来を消滅させかねない危機の正体です。 
植田さんは言います。 
「ここ数百年の中でも、異常な鹿の繁殖が起きています。鹿の食害で、山が丸裸になっている所もあります」 
鹿除けの囲いで被害を免れた所とのコントラストははっきりとわかるほどになっています。 
「研究者によると、過剰に鹿が増えた影響で食物が不足し、鹿の個体も小さくなってきているそうです。めったに実を結ばないブナがせっかく芽吹いても、ほうっておくと鹿にやられてしまいます」 
若芽を陽の当たるところに移し替えてフェンスで囲むのは、鹿から守るためでもあるのです。 

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▲日当りのいい一角が鹿除けで覆われ、ブナの若い木が育てられています。
 

一万年のブナの森の番人たちは言います。 
「100年、200年単位では自然に任せた方がいいのでしょう。でも、数十年の短期的な単位では鹿から避難してもらう必要があると思います。自然は偉大なので、1000年、2000年で癒されるのかもしれませんが。ただ、先人たちが守ってきたものを、僕たちの代で途絶えさせることは出来ません」 
断言する口調で言葉は結ばれました。 
一万年間の縄文人から、奈良時代に開山した行基がバトンを受け継ぎ、江戸時代に日蓮宗が受け継ぎ、そして今妙見山だけでなく地域の人たちが受け継ごうとしています。さらに未来へと森を伝えるために、ブナ守の活動はこれからますます重要になってくることでしょう。「能勢妙見山ブナ守の会」では、共に森を守る会員を募集中です。一万年紡いだ森の守り人にあなたもなってみませんか? 


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