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雑記帖 No.083

ドバイからの来訪者~山本家の過去帳~(2)

戦火に消えた歴史

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堺出身でアフリカ・ドバイで仕事をする山本恵章さんの問い合わせからはじまった、アサヒビール創業者鳥井駒吉と山本家をつなぐミッシングリンクを探る調査取材の第2回です。


■北尾家のルーツ
「長らくご無沙汰しています。連絡もなしに、突然お邪魔してすいません。山本恵章です」
南海本線『堺駅』のほど近くにある『北尾米穀店』は、『お米のことしかしらない米屋』の看板、キャッチフレーズで有名なお店です。慶応三年創業で、現在の店主は五代目だとか。店の奥で忙しく機械を操作している男性がその方でしょうか。
山本さんの来訪に驚きつつも、店番をしていたお母さんが迎えてくれました。
「ドバイにいってた恵章さん? 久しぶりやねぇ。急に来るからびっくりしたわ」

山本さんの祖父謙次さんは北尾家から山本家に養子に来たのです。20年以上海外生活を送っている山本さんは久しぶりの再会になりますが、津久野で貸し布団屋を営む山本恵三さんの弟さんと北尾家は親しく行き来されているようです。
これまでの経緯を山本さんは語りました。実家にあった過去帳を見ると、アサヒビールの創業者鳥井駒吉の名前があり、山本家と何か関係があったのかを探っていること。しかし、戦前の事ゆえ、戦災で記録も燃え、往時のことを知る人も少なく関係がよくわからないこと。
「お父さんが生きていたら、何かわかったやろうけど......」
北尾家にお嫁に来たお母さんなので、北尾家の昔のこととなると、しっかりとはわかりかねるようでした。

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▲北尾米穀店に久しぶりに足を運んだ山本さん。


すると、それまで忙しく作業をしていた男性が、一段落したのか、すっと話の輪に入ってきました。この人が、五代目の北尾憲正さんです。
「『北尾米穀店』慶応三年創業となっていますが、一番確かな記録が明治元年の米屋の免許で、これはそれまでお米屋をしていないと発行されないものですから、前年の慶応三年に創業していたことは間違いないだろうと、創業の年にしたんです」
もともとは和歌山からやってきた三平さんが、北尾家の祖先。憲正さんで五代目となっていますが、八代前は医者だったのではないか、という話もあり、古い歴史のあるお家のようです。


■消えた歴史
「慶応三年から150年の歴史があるのですが、うちは屋号もない小さな米屋でした。今の市小学校のあった場所には米市場があって、鳥井さんの所は屋号は『和泉屋』という大米問屋。それに対して、うちは付近に何十軒もあった米屋の一つに過ぎません。大問屋の『和泉屋』さんとは、何か関係があったとは聞いていませんね」
小さいとはいえ、戦前には今は埋めてしまった環濠の川岸に蔵があり、精米機もいれていたとのこと。

「堺大空襲の時にも蔵は焼け残ったんです。丁度、私たちの手前で火は止まって。でも、なんの記録も残っていないんです」
四代目の父・雅宥さんは、山本恵三さんの弟さんと一緒になって、北尾家や山本家の過去について整理しはじめたこともあったそうですが、まもなく亡くなられてしまいました。
「『お米のことしか知らない米屋』のキャッチコピーを考えたのは父です。お米のことしか知らないような人間ではなかったのですが、『フクスケ』に勤めたいと考えたこともあったようで、私も米屋になる前は百貨店で営業をしていましたから、親父の血かなと思います」

その雅宥さんならば、過去のことを色々しっていたはずです。ここで追跡は途絶えるのか。するとお母さんが、
「たしか、山本謙次さんの奥さんは、鳥井家でお手伝いをしていたと聞きました。だから、これは私の推測ですけれど、謙次さんが鳥井家の番頭さんだったというのはあるんじゃないでしょうか。山本さんのところが、瀬戸物を扱っていたなんていう話は私は聞いたことがないです」
山本家が瀬戸物を扱っていたというのは、誰かの思い違いだったのかもしれません。謙次さんが奥さんと一緒に鳥井家で働いていたとすれば、『山本さんは鳥井家の番頭だったのでは?』という鳥井洋さんの説も真実味を帯びてきます。

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▲過去帳の中には、「和泉屋三平妻」などの記述がありました。



「あ、和泉屋の名前がある」
北尾家の過去帳を調べていた憲正さんが声をあげました。過去帳には、鳥井家の屋号である『和泉屋』の名を冠して、『和泉屋三平』の名があるではありませんか。
一切関係がないかと思われていた『和泉屋』と北尾家。やはりどこかに関係があるのでしょうか? 
しかし、両家には何の記録もこれ以上残っておらず、私たちの調査はここで打ち切らざるを得ないのでした。新たな手掛かりはどこかにあるのでしょうか?

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▲両家の過去帳を手に、北尾さんと山本さん。

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