| トップページ |
雑記帖 No.047

田園風景を共に耕して

伝統野菜プロジェクト 楽畑

00_rakuhata_face.jpg
▲畑の向こうに見えるのが兒山家(通称 東兒山)の屋根。

薄曇りの広い空に鳥の影が横切りました。
時折湿り気がわずかな雨粒となって、畑に潤いを与えています。
ここは陶器北にある古民家・兒山家。今や堺では希少な田園風景が残っている地域。

兒山家がこの地に移り住んだのは400年も昔の慶長年間ですが、江戸時代後期に分家した「東兒山」と称されるこの家だけが、築後約200年の江戸時代のままの姿を残し国の登録有形文化財となっています。

00_rakuhata_koyama01.jpg
▲畑に向かう坂から兒山家住宅を見下ろす。

この兒山家住宅とともに周囲の田園風景を丸ごと残し代々受け継いでいこうと始まったプロジェクトが『楽畑』です。


■この田園風景を残そう
案内された畑にいたのは完全装備の男女の姿。
「こんにちは」
挨拶をすると作業の手を止めて集まってくださいました。

01_rakuhata_nakamura01.jpg
▲栽培サブリーダーの中村明子さん。

『楽畑』の立ち上げは2008年。兒山家で生まれ育った兒山万珠代さん、松尾亨子さんと、友人の石川育子さんたちや、なにわの伝統野菜に関わるひとたちが協力し合い誕生しました。
立ち上げ当初は、堺市の『生きがいワーカーズ』というシニアの市民活動への支援事業のサポートを受け、栽培サブリーダーの中村明子さんにもその時に声をかけたのだそうです。
「私はシニアじゃなかったんだけれど」
と中村さんは笑います。
メンバーで資金を捻出したり『生きがいワーカーズ』の支援も受け、耕耘機や農具小屋を揃えて活動の準備が整いました。

01_rakuhata_ishikawa01.jpg
▲事務局の石川育子さん。

この日は月に何回かある活動日でしたが、あいにくのお天気。空を睨みながらの作業です。
「私も立ち上げメンバーですが......」 
実はニュータウン育ちの石川さんは、農風景と伝統家屋に心がほっとするのだそうです。

「ホームステイのグループ活動で兒山家の方々と知り合って25年になります。外国の方を兒山家に連れてくるとすごく喜ばれます。伝統家屋の癒しの力を自分も感じます。この大切な家を残していくために私たちにも出来ることがあるんじゃないか」

01_rakuhata_koyama02.jpg
▲兒山家住宅の中の一室。柔らかい光が室内を照らし、ゆったりと落ち着く空間です。

石川さんは、畑仕事は苦手でも事務局の仕事なら出来ると引き受けました。『楽畑』は野菜作りだけでなく、この風景を保存することが目的。ですから、色んな人に様々な関わり方が出来るのです。


■無農薬で伝統野菜の再生に挑む
とはいえ、活動の中心である安心・安全な野菜作りは、口で言うほどたやすいことではありませんでした。兒山家では戦後農業を辞めていましたし、皆素人の集団です。

02_rakuhata_utumi01.jpg
▲『楽畑』メンバーに普段から農業を指導してくれる内海邦康さん。

そんな中、果敢に挑戦したのが『なにわの伝統野菜』である毛馬胡瓜(堺きゅうり)の栽培でした。
「このすぐ近くの『隠』(かくれ)という地域が、毛馬胡瓜の生産地だったんです」
栽培の指導を仰いだのは、当時大阪府立食とみどりの総合技術センターに勤務されていた農学博士の森下正博さん。
森下さんに2年間教わり、種取をして毎年の栽培にこぎつけたのです。

02_rakuhata_hashizume01.jpg
▲橋爪秀博さんは、栽培リーダー。

これをきっかけに地元の伝統野菜として、鳥飼ナス、玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)、勝間南瓜(こつまなんきん)も手掛けます。
栽培リーダーの橋爪秀博さんがメンバーに加わったのも勝間南瓜が縁。実は橋爪さんは玉出の小学校の教員をしています。
「勝間南瓜は玉出の伝統野菜です。保護者の中に、これを広める活動をされている辰巳さんという方がいたんです。『楽畑』でも勝間南瓜をやっていると聞いて訪ねてきたのがきっかけで加わったんですよ」

02_rakuhata_kuwai01.jpg 02_rakuhata_torigainasui01.jpg
▲外国産も多いクワイは「体にいいから我慢して食べるもの」でしたが、子どもが夢中で食べるようになったという吹田クワイ。 ▲鳥飼ナス。この時、すでにオフシーズンで旬は過ぎていました。

今では、小振りでも美味しい吹田クワイや、九条ネギの元になったのではないかとされる難波ネギなど貴重な野菜の数々がこの畑で栽培されています。


■活動の広がり
『楽畑』の伝統野菜は、ちょっと変わった商品化もなされています。
ずばり『なにわの伝統野菜飴』。
これは古墳型の飴で人気の『手づくり工房・堺あるへい堂』の岡田明寛さんの手によるもの。『楽畑』メンバーでもある岡田さんは、プロの技を駆使し伝統野菜の絞り汁を使って素朴な味わいの飴を作り上げました。
飴の種類は現在8種類。
「天王寺かぶら、勝間南瓜、田辺大根、金時人参、大阪シロナ、難波ネギ、一寸そら豆、毛馬胡瓜。......どれも野菜の風味がふわ~と口に広がります。中でも難波ネギは、すごく特徴のある味なんですけれど、他にないと思わぬ好評でした」
伝統野菜の意外な力に気づかされたのです。

03_rakuhata_ame01.jpg 03_rakuhata_kiriboshi01.jpg
▲ほっとする懐かしい味の『なにわ伝統野菜飴』。 ▲水で戻した瞬間、畑の匂いが立ち上る切り干し大根。

目からウロコが落ちるような経験は他にもありました。
「講師の方を招いて摘み菜ウォッチングをしたら、これまで目の仇にしていた雑草の中にも美味しいものが沢山あるとわかって驚きました」
畑の周辺に生えている食用植物を自分たちの手で摘みとって食べる摘み菜ウォッチングは、毎年恒例のイベントに。

03_rakuhata_tumina01.jpg
▲無農薬・有機肥料の『楽畑』の畑は摘み菜ウォッチングに最適と喜ばれます。

そして今年の夏は若者支援グループと共催イベントも。
「夏野菜の収穫作業やお料理をして、その後浴衣に着替えてパーティーをしたんです。作業着から浴衣にチェンジしてギャップに胸がときめくかも! なんて若い世代ならではの発想ですよね」
『楽畑』がきっかけで恋は芽生えたのでしょうか!?

03_rakuhata_tuji01.jpg 03_rakuhata_rakkasei01.jpg
▲取材協力してくれたクリエイターズ工房『あをい屋』の辻大樹さんも農作業のお手伝い。 ▲畑でとれた落花生を塩ゆでに。

お話を伺っていると兒山家からお皿をもった松尾さんがやってきます。
「落花生の塩ゆでが出来ましたよー、一緒に食べませんかー」
もちろんご相伴にあずかります。形も不揃いな落花生ですが、ほかほかの殻を手で割って食べるとえもいわれません。
「今つくっているのは伝統野菜が半分と、プチトマトやモロヘイヤのような獲ってすぐに食べられるお野菜が半分。畑作業をしながらちょっと食べたりして。食べる楽しみがあるとやる気が湧くでしょ」

あっという間に落花生はなくなります。
「お金には換えられないですよね」
笑顔で畑から見下ろす風景には、この地域を潤してきた陶器川沿いに建つ兒山家の姿があります。

03_rakuhata_egao01.jpg
▲塩ゆでにした落花生を持って松尾さん(右端)が登場! 獲れたものをその場で食べる喜びに笑顔もほろこびます。農業者だけじゃなく、色んな人とコラボして楽しみたいと、ご一緒する方を募集中です!

楽畑
堺市中区陶器北1404
兒山家住宅内 
tel/fax:072-234-1474 




検索

2018年4月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

お気に入りに追加

堺「意外史」探訪
| トップページ |