堺・南大阪の地域情報 つーる・ど・堺 ホウユウ株式会社

昭和小椅子 ひだり堂

---温故知新を教えてくれる、椅子づくり---


ただ今リノベーション真っ最中の南島の長屋に、ひっそりと開店する「ひだり堂」。ご存知の方はよくご存知と思いますが、毎月第2週目の土曜・日曜日のみのオープン。訪ねてみても「閉まっていた…」と肩を落とす来訪者多数。しかし根強いファンが多く、あちこちで名を耳にします。
“幻のお店”とも呼ばれるこのお店ですが、今回、お話を伺うことに成功しました。
ひだり堂」店主、三木剛貴さんの椅子づくりに賭けるこだわりや、多くのリピーターに愛される秘密を大公開!



ひだり堂」店主、三木剛貴さん。腰低く、椅子布とアンテナを張り続ける御仁。

昭和小椅子 ひだり堂」は、昭和時代に作られた椅子たちに、再び命を吹き込んでくれるお店です。
古い物が大好きな三木さん。昔の家の佇まい、時間が止まったような雑貨たち。木や鉄で出来た、昔だからこその丁寧な作りのモノたちが、たまらなく愛おしいと仰います。



アンティーク雑貨もあります。右は木の冷蔵庫。これも三木さんが修繕されたそう。「苦労した甲斐あって、今でも働いてくれる」んですって。

そして、中でも特に愛情を注ぐのが「椅子」。
「昔の椅子の方が、よほど作りがしっかりしているんです。」
時を重ね、いい風合いになっている椅子たちを、もっと長く使ってあげて欲しい…
三木さん自身がセレクトした、布張り用の生地を張り直すと、あら不思議。お部屋が和風でも洋風でもしっくりとくる、お洒落な椅子の出来上がり。



写真右:アカリ珈琲にある椅子と同じ生地の椅子。写真左:小さなロッキングチェアの布地はオーストリアのアンティーク。



布選びもお楽しみのひとつ。温かみのある配色ばかり。

三木さんは、その道では有名な椅子職人さんに師事し、伝統的な椅子作りの技術を学びました。その師匠は、ひとつひとつの椅子に愛情を注ぎ、長く、そして心地よく座ってもらうための工夫を、いくつも考案された方でした。三木さんはその教えの通り、なじみも持ちも良い椅子作りを心掛け、今では三木さんの作る椅子の良さを理解してくれるお客様が、何度も訪れてくれるほどになりました。
「有り難いことに、最近は特にたくさんのご注文を頂いています。」



これは『アカリ珈琲』で知りあった方に依頼された特注椅子。まもなくオープンされるレストランで使われるそう。

歯科技工士でもある三木さん。そろそろ本職をこちら、「ひだり堂」にシフトしていきたいと、嬉しいことを仰ってくれました。
「特に『アカリ珈琲』『図工ラボ』がそばに出来て、活躍してる皆を見ていたら、僕も頑張らなくちゃと思いまして。お尻を叩いてもらっている感じですね。」
物腰柔らかく低姿勢。いつでも丁寧に対応して下さる三木さん。そしてこと椅子に関しては語る言葉に限りがありません。それだけ勉強し、それだけ好きなのだと伝わってきます。

三木さんのこだわりのひとつであるスプリングコイルは、今ではほとんど使われていないので、製造すらされていません。弟子仲間と何人かで特注コイルを作ってもらっているそうです。バラバラのスプリングコイルを、均等に、しっかりと留めていくのも、他では真似のできない高等技術。こうすることで、座る人の体に沿う、なじみの良い椅子が出来上がるのです。



“こしらえ”を分かってもらうため、あえて底面を仕上げていない椅子。スプリングコイルの仕上がりがよく分かります。しかしおしりを乗せたい欲望にかられる形態だなあ…



コイルが一体に仕上がっているスプリング。三木さん的には邪道なんだけど、オブジェには良い感じ。

ところで、どうして「ひだり堂」なのでしょう?
「江戸時代の名工、左甚五郎の“ひだり”を貰いました。甚五郎を目指して、というのもあり、僕自身左利きで。」
さらに、
「お酒を呑む人のことを“ひだり”ともいいますし。」
お酒、お好きなんですね。

さて、目下製作中の椅子たちの現場を見せて頂きました。



座席側面の、デリケートな工程。四方に均等に藁を詰めていき、足の当たりを良くします。



底面に使用される力布は二重にし、さらに丈夫に仕上げます。これも師匠の教え通り。

他にも、ヤスリで丁寧に削いだり、ニカワで繕ったり…と、ひとつひとつの工程には意味があり、妥協も許されず、ゴールの無い世界なのだと教えられました。
三木さんは言います。
「これからは、いいもんはいい、と再確認できる活動をしていこうと思っています。当たり前のことなんですよ。そんな普通のことをしていきたいですね。」
使い勝手がよく、長持ちのする製品。
いつだって日本の職人さんは、それを念頭に置いて製品を作り出してきました。人の手に渡るであろう、その人と物の、未来のことを考えて。それは当たり前のこと。自分の作った製品が、喜んでもらえて、長く使ってもらえれば、そんな嬉しいことは無い…。
現代に生きる、職人のお手本のような三木さん。
その信念で、長く、永く、愛される椅子を、作り続けてくださいね。


お家の倉庫で眠っている椅子はありませんか?
「ひだり堂」三木さんが、素敵に生き返らせてくれますよ。



■取材日:2010.11.25
■ 昭和小椅子 ひだり堂
〒590-0904
大阪府堺市堺区南島町2丁59-1
営業:第2土曜日・第2日曜日 営業時間:12時~17時
南海本線「七道駅」西へ徒歩6分
e-mail hidari_do@yahoo.co.jp
イベント、臨時営業などはblogにて発信されています。
お問い合わせはmailにて。