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南島 リノベーション計画

---堺のだんはん 花井さんの挑戦---


長屋再生の道として面白い方向へ向かっているのがここ、南海本線七道駅から歩いて5分の南島町。古きよき住宅が今でもそこかしこに残る界隈です。



昭和30年頃建てられた四軒長屋に、アーティストを招き、兼工房、兼店舗として、ゆるく活動していけばいいじゃん、と提案を始めた人がいます。



その人こそ、花井英典さん。
花井さんは、南島界隈の地主の息子さんで、お父様から受け継ぐであろういくつかの居住空間に、ずいぶん長いこと新しい人が入ってこないという悩みがあったそう。
「ずいぶん古いし、かといって一から手を加えるのも、他の住民の方に迷惑。正直、お金をあまりかけたくなかったというのもあるんです。」
もともと、映像製作や舞台美術に長く携わってこられ、“ものづくり”に関しては並々ならぬこだわりをお持ちの花井さん。勤務先の東京で、“ものをつくる”ための技術・知識を蓄えると共に、たくさんの芸術家との交流を重ねる日々を送っていました。
ところが、お父さんが引退を望んだため、地元、堺に帰ってくることに。
むくむくとリノベーション構想が芽生えてきたのは、お父さんから託された物件を管理するようになって、すぐのこと。
見ず知らずの人に貸すより、東京で出逢った若きアーティスト達に少しでも力になれることは出来ないか。この古い長屋を工房兼住居にして、自由に使ってもらえたら…。
古い建物は確かに古く、昭和の時代そのままのかたちで残っている。
ある意味、未練もない。ただ、この古い佇まいさえも利用してくれたら、いい雰囲気が出てくるのでは?
まずは、知り合いのアーティストを呼び、「住んでみないか」と提案をします。
「どう使ってくれてもいい。内装も好きなように改築してくれればいいから。」
ここに集まるアーティスト達が一味違うのは、業者は一切いれず、自分達ですべて作りかえる、その発想と技術があるということ。
舞台美術づくりで培われた技術を駆使し、当時の仲間も集めて毎日トン、テン、カン。

まずは、花井さん所有の文化住宅をリノベーション。



「とにかく安くつくようにね。苦労しましたわ。」と笑って見せてくれたのは、日差しがしっかり入り、木の温もりが伝わってくるような、とても洒落た空間、「G-BOX(旧:瑞荘)」でした。
「出来るだけ、自分達でしようってことで。全部任せたのは水周りくらいですかね。」
建てられた当時の柱もしっかりと残っています。でも色は明るく、すべすべ。
「この柱、きれいでしょ?全部僕が磨いたんです。もう、手が壊れるかと思った(笑)」
なんと改築した全部屋の柱すべて、花井さん自ら磨き上げたというから天晴れ!



「このドアノッカーも見て下さい。ポルトガルで買ってきたんです。お洒落でしょ?」

続いて“堺で活躍されておられる、さるお方”のご自宅を手がけ(詳細は内緒です。)、最後にしっかり関わったのは「アカリ珈琲」。
越してきてくれるアーティストひとりひとりの個性を活かして欲しいことから、人手の無い状況でないのなら、「頼ってきてくれる時以外は口を出さない」ことを意識したそう。
「技術面での質問に答えたり、工具を貸し出したりはしましたが、ほとんどは彼ら自身で調べ、作り上げたんです。」
だからこそ、個性が出て楽しいと、満足気な花井さん。

次に出来上がったのは、南島町に集まるアーティスト達の拠点となるアトリエ、“HOME GALLARY”。



アート作家、横山真理さんとイラストレーター、“ママチャリ”こと松田真哉さんの工房兼ギャラリー兼住居。



撮影にご協力くださった横山真哉さん。右手にある出来上がったばかりの作品は、図工ラボで販売中。

後に「図工ラボ」として生まれ変わる、「NANNA(ナンナ)」も出来上がり、ジュエリーデザイナー、ヤマモトアツシさんを中心に、イベント「Home Exhibition」など、様々な挑戦が始まります。



ひだり堂図工ラボの店舗が入っている長屋。鉄の窓枠がお洒落。

共に活動し、刺激された人びとがひとり、またひとりと増え、「ひだり堂」「アカリ珈琲」「図工ラボ」と、店舗兼工房、工房兼住居、いや、住居はまたちがう長屋でもう一軒と、“ものづくり”に取り憑かれた人々が集うようになります。

「この町、堺は“ものづくり”発祥の地。今でも代々続くお線香屋さんや、刃物屋さんなどが当たり前にあるでしょう?この土地で、“ものづくり”を本当にしたいと思う若い人たちが集まって、なんかオモロイことをしていって欲しいんです。もちろん近所の方たちにも、『なんやあそこ、面白そうなやな』って集まってもらって、話をして、聞いて。コミュニティとして、完成させていきたいんです。地域全体で仲良くなれれば。」
便利に生きられるこの時代に忘れてしまいがちな、ご近所づきあい。
そこに住む人々と一緒になって、楽しいことを分かち合う。そうしてその町はひとつになっていくのかもしれません。
「こないだ雨の日に隣のおばあちゃんが洗濯物取り込んでくれてて。とっても助かりました。(笑)」
この台詞にすべてが集約されているような気がします。

「衣・食・住揃えば、地域はもっと強くなります。あと来て欲しいのは呑めるお蕎麦屋さんかな。」
…それって、めっちゃ個人的じゃないですか?花井さん。

南島町の変革は、まだまだ続きます。楽しみですね!




※花井さんは、ユノカ・ソープ代表でもあります。(ユノカ・ソープ記事は2月掲載予定)
写真は花井さんと、ソーパー山本豊子さん。アカリ珈琲で開催された「香りのワークショップ」にお邪魔させて頂いたときのもの。また遊びに行きますね。


○ リノベーションとは○
既存の建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりすること。建物の経年にともない、時代に合わなくなった機能や性能を、建て替えずに、時代の変化にあわせて新築時の機能・性能以上に向上させること。具体的には、耐震性や防火安全性確保し、耐久性を向上させる、冷暖房費などのエネルギー節約のため、IT化など変化する建築機能の対応・向上のために行われる。外壁の補修、建具や窓枠の取り換え、間取り変更、給排水設備更新、冷暖房換気設備の更新などを行う。




■取材日:2010.11.25
■ユノカ・ソープ
http://www.junocasoap.com/
info@junocasoap.com