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颯爽人 No.088

大内秀之 世界一を目指すパラクライマー(1)

初代日本チャンピオンとして世界選手権へ挑戦

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大内秀之
profile
兵庫県川西市出身。
パラクライミング日本選手権車椅子部門を部門創設の2017年から3連覇中で、世界選手権制覇を目指す。堺市立健康福祉プラザ職員。一般社団法人フォースタート理事。社会福祉士。


「パラクライミングの日本チャンピオンが堺にいる」
そんな情報を聞いて、まずは「堺に日本チャンピオンがいる」ということに驚き、次に「パラクライム」って何だろう? と疑問を持ちました。
「パラ」は、「パラリンピック」でなじみ深くなった言葉で、障がい者競技なのだと推測できます。「クライミング」もTVで見かけることも多くなった、壁を登る競技です。ということは「パラクライミング」は「障がい者によるクライミング」なのでしょう。 
そして、今回紹介するパラクライミングの日本チャンピオンの大内秀之さんは、パラクライミングの中でも、足に重度の障がいがあるクラスのチャンピオンで、車椅子のクライマーだというではありませんか! 一体、車椅子の人がどうやってクライミングしているのか。大内さんとは一体どんな超人なのか? 
大内さんが普段練習しているという森ノ宮Q'sモールの「Climing Bum」さんを訪ねました。


■パラクライミングの日本チャンピオンに

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▲JR・地下鉄「森ノ宮」駅近の森ノ宮Q'sモールにある「Climing Bum(クライミングバム)」。


ガラス張りの壁の向こうに、色とりどりの突起(ホールド)が打ち込まれた壁と、それに挑むクライマーの姿が見えます。扉を開けて受付に尋ねると、
「大内さんならそちらにいらっしゃいますよ」
と案内されました。
大内さんは、壁際に座って、高い壁を見上げていました。投げ出した両足には、それぞれデザインの違うカラフルな靴下を履いています。
「こんにちは、大内です。よろしくお願いします。昨日も名古屋で登ってきて、今日で3日目なんですよ。今日ちゃんと登れないかもしれないから、あらかじめ言っておきますね(笑)」
そんな会話から大内さんへのインタビューは始まりました。

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▲パラクライミングの日本チャンピオン・大内秀之さん。クライミングシューズを装着中。


大内さんとパラクライミングの出会いは3~4年前のことでした。
「僕は堺市の健康福祉プラザで働いているのですが、障がいのある人も無い人も一緒に楽しいことが出来るという啓発イベントを企画しました。そのときに、全盲の世界チャンピオンの小林幸一郎さんに来ていただいて、アイマスクをしてみんなで登ってみようというワークショップをやったんです。企画した側だったのですが、僕も登りたいといって登ったのが最初ですね」
クライミング初体験後、大内さんはすぐにのめり込んだわけではありませんでした。
「最初は競技としてやる気があったわけではなくて、半年に1回登るぐらいだったのでした。でも小林さんから『今度車椅子部門をやるよ』と言われて、じゃあがんばりまーすと言って、2017年の1月に日本選手権に挑戦して優勝したんです。初部門・初出場・初優勝ですよ(笑) 参加者は3人でしたが」
1年目も出場者は3人でしたが、2年目は怪我された方もいて出場者は大内さんただ一人でした。
「この2年目も優勝したのですが、世界選手権の選考も兼ねていました。僕は一人で優勝して、一番上まで登れたので日本代表の資格ももらったのです」

こうして大内さんは、パラクライミングをはじめて数年で日本選手権を連覇し、日本代表として世界選手権に挑戦すべく、2018年9月にオーストリアへと向かったのでした。


■自分たちだけで戦えなかった世界選手権

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▲大内さんは、世界選手権で「怪物」と出会った。


世界チャンピオンを目指してオーストリアのインスブルックに乗り込んだ大内さんでしたが、思わぬ出来事が待ち受けていました。
「パラクライミングには視覚障がいや神経障がいといったカテゴリーがあって、その中に重度中度軽度と分かれています。僕らはALといって足に障害がある部門の中で重度なんです。世界選手権は各部門に6人いないと成立しないのですが、インスブルックの世界大会で車椅子部門は5人しかいなくて成立しなかったのです」

部門としては成立しなかったのですが、ここで変則的な運営がなされます。
「車椅子部門のクライマーも、両手両足にちょっと障がいのある人たちと一緒に登りましょうとなったんです。両手両足に障がいって言うからだいぶ重度なのかと思ったら、健常者よりスローリーなぐらい。両手両足が使える人たちの中に入った僕たちは、クロールの中に平泳ぎで挑むようなものでした。車椅子の5人は全員予選落ちして、僕は世界11位になったんです」
世界大会に出場するために、オーストリアにまで来たのに、部門が成立せず、他の部門に混ぜられての世界11位は大内さんにとって悔しいものだったでしょう。
「みんなで、カテゴリーさえ成立していたら、僕たちもっと楽しいよね。次やる時は6人以上絶対揃えようね。俺たちの世界だけでワールドチャンピオンを決めようぜ、って言い合ったんです。めちゃ楽しかった」
この時、世界選手権の車椅子部門に挑んだのは、日本の大内さんと、イタリア、アメリカ、現地オーストリアから2人の5人。大内さんは、この時世界で同じレギュレーションで競技に取り組むクライマーと出会ったのでした。そして、目指すべきライバルともこの時出会ったのです。


帰国して年も変わって、2019年2月3日に日本選手権があり、大内さんはまたも優勝して3連覇します。しかし、これで満足するわけにはいきません。
この8月には、再び世界選手権があるのです。それも日本の東京八王子が舞台です。
「カテゴリー成立のために、色んな人に啓発している所です。僕は必ずそこで世界一になりたい。世界選手権で出会ったオーストリア人の男の子がめちゃくちゃ登るんです。目の前で怪物を見たんです。そいつを超せば僕が世界一です!」

しかし、この「オーストリアの怪物」は尋常の相手ではありませんでした。
「彼は車椅子になって1年、パラクライミングをやりだして2ヶ月目だというんです。そいつに負けたんか......と思ってたのですが、よくよく聞いてみたら車椅子になる前にクライミングをやっていたというんですよ(笑) でも勝たなあかん」
しかも、経験者というだけでなく、大内さんと「オーストリアの怪物」との間には、レギュレーションには現われない大きな差があったのです。
「僕らの部門の条件は車椅子に乗っている人なんです。腹筋をどれだけ使えるのかというクラス分けはない。腹筋はめちゃめちゃ重要なのですが、麻痺していて腹筋が全部使えない選手もいれば、全部使える選手もいて、僕は上の方の腹筋だけしか使えない。あの怪物は腹筋がめちゃ使えるんですよ。腹筋で太ももをあげて反動をつけたりができる。それはちょこっと有利なのです」

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▲ここではロープは機械式になっているので、1人で気兼ねなく登ることが出来ます。


と、その時でした。大内さんが、視線を上にあげ「ナイスー」と声をかけます。丁度、壁に挑んでいた女性が一番上まで登り切ったのです。
「彼女は1週間前まで一番上まで行けなかったんです。ここに通い詰めて出来るようになったのです」
登り切った女性はロープに身を託して降りてきます。
「トム・クルーズみたいやな」
大内さんが、そう言って仲間たちと笑います。
次回中篇では、そろそろ大内さんの登りを見せてもらうことにしましょう。

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▲いよいよ大内さんのクライミングを見ることができます。



クライミングバム大阪
住所:大阪市中央区森ノ宮中央 2-1-70 もりのみやキューズモールBASE 1F
電話:06-6910-1597
営業時間:月〜金 12時〜23時30分 / 土日祝 10時〜21時 定休日:毎月第2月曜日
web情報:http://climbingbum.jp/osaka/

なにわモンキー

堺市健康福祉プラザ
住所: 堺市堺区旭ヶ丘中町4丁3-1
web情報:http://www.sakai-kfp.info/index.cgi

一般社団法人フォースター
web情報:https://www.forcestart.info/

 
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