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まちあるき No.056

坂本剛士 × MisPixels × いろはに

境界線を越えて響き合うもの

■#1 live
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音のさざ波が、ひたりひたりと広がります。
キーボードから流れる電子音にドラムの音が重なり、町なかのギャラリーに音の息吹が満ちていきます。

ギャラリー「いろはに」で開かれたパーティは、カナダのモバイルアーティストMisPixels(ミス・ピクセル)さんの個展開催を祝うものでした。その席上でミュージシャン坂本剛士さんのライブパフォーマンスが披露されたのです。

「ピクセルさんの作品を見たインスピレーションで即興演奏をやってみます」
美しい自然の風景に、デジタルの加工を施したピクセルさんのアート。坂本さんも電子とアナログ、両方の楽器を並べました。

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▲「今問題になっている自然破壊のこと、地球のことを考えながら演奏します」と、坂本剛士さん。

キーボードのスイッチを入れたのが、演奏開始の合図。
繰り返す音の波はむしろ静かで、人工物が存在しない自然の世界を思わせます。
イメージするのは何でしょう。
寝静まった夜の森でしょうか。
暗色の空に流れる灰色の雲や下生えのせせらぎのような、控え目な音のグラデーションの広がり。
電子音の合間に響く3種類のドラムの音が、調和の中にアクセントをつけます。

アクセントの音がイメージに起伏をつけます。
喩えるなら、黒い水面が時折り反射する月光、夜行する動物たちの足音、風鳴り。
仄暗さの中に潜む生命の鼓動を、私たちは感じます。

この音楽は鑑賞する私たちの心の中に迫ってくるアートでした。
ただ、それは決して強引に力尽くで押し寄せてくるのではなく、静かに満ちてくる潮のように、いつのまにか足下を濡らし、私たちの身体と心を音で浸したのです。

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坂本さんがバチを置き、鈴の音を鳴らしたのが第二幕の開始でした。
ジャンベ(西アフリカの太鼓)に手をあわせて一礼し、手のひらでたたき出したのです。

足踏みするたびに、足首に付けられた鈴が鳴り、ドラムの音はたたき付けるように激しさを増しました。

坂本さんの表情は沈思する木彫りのトーテムさながら。
静謐さ故に、むしろ内なるパワーがいや増します。

重く響くドラムに込められたのは、何を思い伝えるのか。
濃密なパッション。
怒り、憤怒、誇り、強い感情がないまぜになって空間を満たします。

そして不意に訪れた終演。
誰かの溜息がもれました。
坂本さんが立ち上がります。
沸き上がる拍手。
ギャラリーのオーナー北野庸子さんの挨拶で私たちの意識は堺の町なかに帰ってきたのでした。

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■#2 Mobile art
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▲初来日のMisPixelsさん。カナダの博物館で彼女の作品がモバイルアートとしてははじめて販売されるなど、国際的な評価も高いモバイルアートの先駆者です。

音の余韻が残る中、乳白色の壁に向かいます。
壁にはPixelsさんの作品。
作品に収められている風景のもとになっているのは、冬には-40度、夏には40度にもなるカナダの風景です。Pixelsさんは、カナダの大都市郊外の田舎に居を構え、変化の激しい都会と雄大な自然を行き来する生活をしています。
彼女の作品は、二つの環境からの刺激を受けて創作されているそうです。

これらの作品はモバイルアートと呼ばれ、iPhoneで撮影した画像をiPhoneアプリでデジタル加工したものです。デジタルで描かれた丸や四角の幾何学模様な、内に宿るパワーを描いたものだとか。
「ポケットの中にアトリエが入った」
Pixelsさんは、その場で受けたインスピレーションをその場で作品に出来るのです。

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モバイルアートの本領は、携帯性だけではありません。
ネットでは自分の発言や作品にハッシュタグと呼ばれる分類のタグを付けることがあります。作者/発言者が作品の意図を明確にしたり、言外のものを含ませるなど様々な効果を持ちます。

Pixelsさんはハッシュタグをつけるという行為もアートの中に取り込んでいます。#love #like #live......とタグを付けることによって、「私はこう」というと同時に「あなたはどう?」と問われているように感じます。
これらのアートは送り手と受け手を固定的な関係には止めません。鑑賞者を、ただ鑑賞させるだけの立場に甘んじさせない「問いかけのアート」です。
時に人を不安にさせ、落ち着かせなくするアート。刺激的なアートでした。


■#3 Gallery
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ライブ後。
雑談する方もいれば、ジャンベやドラムを囲んで楽器に触れる方もいます。
今回のコラボレーションは、アートに興味のあった坂本さんが「いろはに」を訪れ、廊主の北野さんと出会ったことがきっかけでした。

出会いと出会いが化学反応を示し、いつの間にか、音楽ファンとアートファンが一堂に会し、国境も趣味も越えて人が集い今日のイベントになったのです。

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Pixelsさんは、日本スタッフの尽力で、アップルストアの講演、幼稚園でワークショップ、京都や高野山を訪問したりと、日本を満喫したそうです。
「日本に来たアーティストが喜んでくれると、今度は日本のアーティストがカナダに行った時、向こうの方がすごい歓迎をしてくれるんですよ」
北野さんは、次の出会いを思い描いているようです。

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▲この後、意気投合しアーティストたちは堺の居酒屋へ向かいました。

※『エクスポ・カルチャー・ケベック&ジャパン』は、北野さんとカナダのアーティスト・アニー・デュポンさんの出会いから始まり、今回の個展は第11回のイベントとして開催されました。

坂本剛士

MisPixels

ギャラリー『いろはに』
堺区甲斐町東1丁2-29
TEL/FAX 072-232-1682


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